「既(○○)に」と「既(○○○)に」、一音違いで大違い!
明日、10月15日は、名言「神は死んだ」などで哲学史にその名を遺した、ドイツの哲学者・ニーチェの生誕日です。ニーチェは18世紀を生きた人ですが、この時代のヨーロッパ文化のなか「神は死んだ」は、大変衝撃的な言葉でした。科学の進歩や社会の変化により、「よい人間=神の教えを守る人」という既存の価値観だけでは通用しなくなった、ということをセンセーショナルな表現に乗せたもので、「何が正しいのか?」という根本的な問いに誰も答えることができなくなった、という、絶対的価値観の終焉を表しています。
ということで、本日は「既存」の「既」という字の入った日本語クイズをお送りします。
【問題1】「既(○○)に」ってなんと読む?
「既に」の読み方として正しくなるよう、「既」の、かな2文字の正しい読み方をお答えください。
ヒント:「ある動作が過去に行われていた」「その時点では、もうその状態になっている」「動かしがたい事実である」などの状況を表現する副詞です。
<使用例>
「洞察力の鋭い方は、既(○○)にお気づきかもしれません」

…さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出てまいります。

正解は… 既に(すで-に) です。

「既(すで)に」という訓読みになぞらえてみると「既成概念」は「既に成立している概念」という成り立ち・意味であると読み解けますね。
これをふまえて、二問目にまいります。
【問題2】「既(○○○)に」ってなんと読む?
「既に」の読み方として正しくなるよう、「既」の、かな3文字の正しい読み方をお答えください。
ヒント:「もう少しで、ある好ましくない時代になりそうなさま。危く」という意味の副詞です。
<使用例>
「あの時、引き留めてもらったおかげで、既(○○○)に大事故に巻き込まれずに助かったよ」

さて、正解は?
※画像をスクロールすると、正解が出てまいります。

正解は… 既に(すんで-に) です。

「既」という字は「もはや。物事が済んでしまったこと」「尽くす。尽きる」など「物事が済んだあとの状態」を意味していますが、「すで(に)」と読むと、字の意味がそのままの意味なのに対し、「すんで(に)」と読むと「物事が済んでしまう一歩手前」を表します。
「既(すんで)」は、「既(すで)」に發音(はつおん…はねる音)を添加した語で、「既(すで)」に、勢いと切羽詰まった感が付加されることで「もう少しで危なかった」というような、「ギリギリで『既(すで)』にならなかった状態」を表現します。
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本日は、10月15日、ドイツの哲人・ニーチェの生誕日にちなんで、「既」という字の入った日本語から、
・既に(すで-に)
・既に(すんで-に)
の読み方、言葉の背景についておさらいいたしました。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- BY :
- 参考資料:『日本大百科全書(ニッポニカ)』『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』(小学館)/『367日誕生日大事典』(日外アソシエーツ)/『漢字ペディア』(日本漢字能力検定協会)
- ILLUSTRATION :
- 小出 真朱