【目次】
【「世界骨粗鬆症デー日」とは?由来】
■「いつ」「誰が」決めた?
「世界骨粗鬆症デー」は10月20日です。英語表記は[World Osteoporosis Day]で、[WOD]と略されます。1998年に、国際骨粗鬆症財団(IOF)と世界保健機構(WHO)が共同で制定した記念日です。
■「目的」は?
「世界骨粗鬆症デー」の目的は、骨粗鬆症と骨代謝障害の啓発です。骨粗鬆症に関する国際的な認識を高め、診断や専門研究のさらなる促進を目指し、「世界中から骨粗鬆症による骨折をなくす」ことを目標に世界規模でキャンペーンを展開しています。
【ビジネス雑談に役立つ「骨」にまつわる雑学】
■そもそも「骨粗鬆症」ってどんな病気?
骨粗鬆症とは、骨量(骨密度)が減ったり骨の質が低下することで、骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。いま現在、骨折や、腰・背中の痛みがなくても、骨が弱っていれば、骨粗鬆症と診断されます。骨粗鬆症による骨折を起こすと、寝たきりや認知症につながることがありますが、様々なケースで予防や治療もできる病気とされています。
■「骨粗鬆症」はなぜ発症する?
骨は成長期にカルシウムを蓄積しますが、女性は15~18歳頃、男性は20歳前後に、人生最大の骨量に達します。成長期以降は「骨リモデリング」と呼ばれる骨の新陳代謝を繰り返しながら、40歳半ば頃までは最大骨量が保たれます。約20年間に渡り、最大骨量が保たれるなんて、意外に思われるかもしれませんね。確かに、骨は硬い組織ではありますが、実は骨リモデリングによって、常に古い骨を壊す作業と新しい骨を作る作業の両方が繰り返されているのです。ところが、加齢や女性ホルモンの減少、カルシウム不足などでこの代謝がアンバランスになり、失われた骨量を十分に回復することができなくなると骨量減少が始まります。
■骨折しても「気づけない」ってホント?
本当です。骨粗鬆症進んで骨強度が低下すると、荷物を持ち上げる、手をつくなど、日常の何気ない動作で骨折が起きやすくなります。また、自分の体重に背骨が耐え切れなくなり、気づかないうちに背骨がつぶれて骨折していることだってあるんですよ! このような場合、特別な痛みは感じないため、軽いうちは自分でも骨折していることに気がつかないことがほとんどです。
骨粗鬆症による骨折が起こりやすい部位は、椎体(背骨)、大腿骨近位部(足のつけ根)、橈骨遠位端(手首)、上腕骨近位部(腕のつけ根)。身の周りの高齢者の方にも、こういった骨折を経験している人は多いのではないでしょうか? 大腿骨近位部骨折後の、5年死亡率は実に51%というデータもあります。これは見過ごせないですね!
■骨粗鬆症に「なりやすい人」っているの?
骨量が減少する最も大きな原因は加齢です。これに加え、骨粗鬆症は遺伝や生活習慣、閉経(女性のみ)の影響を受ける複合的疾患であることがわかっています。主な要因は3つ。
・カルシウムの摂取不足
・女性ホルモンの欠乏
・カルシウム調整機能の衰え
また、卵巣摘出・糖尿病・ステロイド薬・慢性肝障害など他の病気や薬が原因で起きる骨粗鬆症の場合は、年齢や性別に関係なく発症します。以下に、発症リスクが高い要因を並べます。
・喫煙 ・ステロイド服薬歴
・多量の飲酒 ・遺伝
・低体重 ・過去の骨折
・加齢 ・カルシウム不足
・閉経 ・運動不足
■現在、骨粗鬆症患者はどれくらいいる?
現在の患者数は、女性が1,180万人、男性が410万人、合計推計1,590万人です。女性の数は男性の約3倍! やはり圧倒的に女性に多い病気なんですね。60歳台の女性では、5人に1人が、70歳台では3人に1人が、そして80歳代では2人に一人の女性が骨粗鬆症だと言われています。
注目すべきは、これだけ危険な病気であるにも関わらず、骨粗鬆症の検診を受けている人が少ないという事実です。骨粗鬆症の検診受診率は全国でわずか5%に留まります。
■世界的な水準で、日本人は「骨折しやすい?」それとも「骨折しにくい?」
日本人の平均カルシウム摂取量は、543mg。これは、フィンランドやスウエーデンの1100~1300mg、イギリスやアメリカの1000mg前後などと比較すると、半分以下の数値です。実は日本はカルシウム摂取の面では、先進国中最下位なのです。この数値だけを見れば、日本人には骨折が多いのでは?と推測するのが普通ですよね?
ところが、大腿骨頸部骨折の年間発生率を比較してみると、アメリカの約30万件に対して日本は約8万件。人口比にすると、アメリカ人の大腿骨頸部骨折発生率は、は日本人の約2倍近い数値なのです。また、北欧は他国と比べて骨折が多い傾向にありますが、これにはいくつかの原因が考えられています。
1) 身長差:一般に、身長が高い程、重心が高くなるため、骨折リスクが高くなります。
2.)日照時間:日照時間の少ない地域では、カルシウムの体内への吸収量が減少します。
3) 運動の種類や量:運動が少ないと、骨折しやすくなります。
4.)食生活:特に野菜と果物の摂取量や肉食の過剰摂取が関係しています。
■日本人はカルシウム接種率が低いのに、どうして骨折率が低いのか?
骨折しにくい骨をつくるために必要なものは何か。日本人はどうして骨折率が低いのか。こうした観点に着目した研究者達が着目した食材は、「大豆」でした。欧米人は大豆をほとんど摂っていないのです。ここからイソフラボン研究ブームが世界中で沸き起こり、骨の健康への効果が報告されるようになりました。閉経期の女性はエストロゲン分泌が急速に減少することにより、骨量の急速な低下や更年期障害が生じることは、よく知られています。エストロゲンが不足した状態で、大豆イソフラボンが補助的に働くことにより、骨粗しょう症や更年期障害を予防・改善することが期待されることは、多くの臨床研究で実証済み。また、イソフラボンによる美白やがんに対する効果も次々と報告されています。
日本で大豆や大豆食品が広く食べられるようになったのは、江戸時代中期以降です。江戸時代にまとめられた1782(天明2)年に出版された料理書『豆腐百珍』には、豆腐の多種多様な食べ方が記載されています。大豆は「畑の肉」と呼ばれるように、良質のたんぱく質を多く含む食品ですが、考えてみると日本人が好きな豆腐の味噌汁は、味噌に豆腐、油揚げと、大豆のオンパレード。江戸時代には納豆も日本各地で食べられていたようですから、こちらも大豆。「日本人、どれだけ大豆が好きなの?」という感じです。江戸時代の飛脚は各宿場でリレーしながら、江戸から京都までの約492kmを、わずか3~4日で走ったと言われています。これは普通に歩くと2週間程かかる距離。江戸時代の日本人は小柄でしたが、精強な肉体を持っていたと言われます。そしてその主な要因は、1)米を中心とした高炭水化物の食事でエネルギーを確保 2)魚介類や大豆製品でタンパク質を補給 3)日常の肉体労働や武道の訓練による筋力の鍛錬 と言われています。
■顔のたるみやシワと骨密度は関係してる?
顔のたるみやシワの原因は、紫外線や乾燥、栄養不足、ストレスなどさまざまなものがありますが、実は「骨密度の低下」も原因のひとつと言われていることを、ご存知ですか? このメカニズムを説明しましょう。
骨密度が低下すると、顔の骨は委縮して、「骨やせ」が起こります。顔も身体と同じように骨によって支えられているため、骨やせが起こると見た目にもさまざまな変化が表れてくるのです。骨やせにより顔の筋肉を支えるじん帯が緩み、表面の皮膚がたるんで全体的にシワが増え、ハリがなくなり、たるみが目立つようになる…眼窩と呼ばれる眼球の入っているくぼみの骨の縁が大きく広がり、目がくぼむ…さらに頬の骨がやせると、目頭の下から頬の中央あたりの斜め下に入るゴルゴライン(ゴルゴ線)やほうれい線はいっそう深くくっきり。 そして、あごの骨がやせると、二重アゴになりやすくなり、首にもシワ…と、顔の老化の原因のほとんどが、実は骨密度が低下したためであると言っても過言ではありません。しかも骨密度の低下は、手、足、腰など全身の骨で起こりますが、特に早く始まるのが顔の骨だと言われています。 目の周りなどの上顎の骨密度は、40歳過ぎるとガクッと低下し、目の下のたるみの原因となるのです。
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「世界骨粗鬆症デー」は10月20日です。骨粗鬆症は、加齢やホルモンバランスの変化、栄養不足などによって骨密度が低下し、骨折のリスクが高まる病気。しかも、痛みもなく進行し、骨折してから気づくこともある「サイレントディジーズ(静かな病気)」です。近年では、骨密度の低下が顔のたるみやシワの原因になるという研究結果も注目され、美容の観点からも無視できない存在に。体はもちろん、顔の骨も加齢とともに痩せていくため、老化のサインが顕著になるのです。
日々の生活でできる対策としては、以下の3つがカギ。
1)カルシウムを意識的に摂ること(例:牛乳、小魚、大豆製品)
2)ビタミンDの摂取や日光浴(15〜30分程度)で吸収を促進
3)ウォーキングなどの骨に負荷をかける運動を習慣化
特に大豆に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンに似たはたらきを持ち、閉経後の骨密度低下を穏やかにするといわれています。和食中心の日本人の食生活が、骨の健康を支えているのは納得ですね。「骨の健康=若々しさと自立した生活の土台」。人生100年時代、元気な足腰と凛とした表情を保つためにも、今日から骨のケアを始めましょう。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社) /公益財団法人 骨粗鬆症財団(https://www.jpof.or.jp) /フジッコ公式ホームページ(https://www.fujicco.co.jp/corp/) /一般社団法人 J-milk(https://www.j-milk.jp/index.html) /雪印メグミルク株式会社(https://honemirai.meg-snow.com) /国土交通省 関東地方整備局 横浜国道事務所(https://www.ktr.mlit.go.jp/yokohama/tokaido/index.htm) :