連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People
明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、韓国・ソウルに位置する「国立中央博物館」の研究員、シン・ジウンさんにインタビュー!
本来は学芸員が担う展示解説などの文章も担当し、さらにアートエッセイや博物館を題材にした著書も人気のシンさんに、今後の展望も含めて詳しくお話しをうかがいました。
【Seoul】温もり溢れるアートエッセイを執筆。博物館研究員でありながら“伝える人”に
芸術が人々の心を震わせるとき、そこにはどんなことが起こっているのだろう。博物館の収蔵品を単なる鑑賞物として捉えるのではなく、「来館者一人ひとりが、自分の人生と重ね合わせながら、作品を愛でているのではないか」。そんなふうに想像し、写真に温かな言葉を添えて紹介しているのがジウンさん。彼女によるアートエッセイ『朝の幸せがノックする』は、’18〜’24年までメールマガジンの形で続き、学術的な視点だけではない、人の心をつかむ文章が人気を博してきた。
「専門知識で語るのではなく、人の心に寄り添う言葉と共に届けたい。そう思うようになったのは、あるお絵描き大会がきっかけでした。『国立中央博物館』には、東洋仏教の記念碑的作品といわれ、『思惟の部屋』が設けられている『半跏思惟像(はんかしゆいぞう)』があります。ある子供が、この像がひとりでいるのがさみしそうだと感じて、その隣に座る自分の絵を描いたことがありました。この表現は、私にとって『主体は、芸術を観る側にある』ということを裏付けてくれるものになったのです」
心の機微を大切にする彼女だからこそ、執筆活動でモットーにしているのは、「冷たい文章は、決して人の心に届かない」というもの。言葉の温度感を意識しながら、本来は学芸員が担う展示解説など文章の領域も担当し、新たな “伝達者” としての地位を確立している。
「今後は、『中心は周辺によりつくられる』という信念をもとに、レジストラー(コレクションを管理するプロフェッショナル)、保存修復家、収蔵品カメラマンなどにスポットを当てていきたい。彼ら彼女らの物語を記録するべく、インタビューを重ねているところです」
館内のおすすめの場所は、常設展示館2階奥にあるベンチだそう。巨大な「敬天寺十層石塔(けいてんじじっそうせきとう)」を仙人になった気分で眺められるのだとか。さて、自分が主体となり作品を鑑賞したとき、心のなかにどんな物語が生まれるのか。そんな模索の時間を設けてみたい。
◇シン・ジウンさんに質問
Q 朝起きていちばんにやることは?
昨晩見た夢を忘れないように思い出し、無意識下の感情や期待を確認する。夢は私にとって正直な心の表れです。
Q 人から言われてうれしいほめ言葉は?
「あなたの文章を読んで、実際に展示を観に行きました」
Q 急にお休みがとれたらどう過ごす?
学生時代のように、一日中、心ゆくまで美術館や博物館の展示を観る。意識的にインプットの時間をとるようにしています。
Q 10年後の自分は何をやっている?
所蔵品から着想を得た、歴史を背景とする物語や小説、映画の脚本を書きたい。いつか必ず実現したい夢です。
Q 自分を動物に例えると?
「実がなければすぐ別の木に登る」という生き方に感銘を受け、リスのように前向きに生きようと努力しています。
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- Xian Zhi
- EDIT :
- 本庄真穂、喜多容子・木村 晶(Precious)
- 取材 :
- Rumiko Ose

















