中島 歩さん
俳優
(なかじま・あゆむ)1988年生まれ、宮城県出身。日本大学藝術学部文芸学科在学中にモデル活動を始め、その後俳優へ転身。映画『サタデー・フィクション』で初の海外作品出演。近年は連続テレビ小説『あんぱん』、ドラマ『不適切にもほどがある!』『愛の、がっこう。』などで存在感を示す。映画賞受賞も多数。1月9日からスタートするテレ東系ドラマ25『俺たちバッドバーバーズ』で草川拓弥と共にW主演を務める。大河ドラマ『豊臣兄弟!』にも出演予定。

「確かなことをやっている自負はあったものの、焦りは常にありました」

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コート¥693,000・ジャケット¥462,000・ニット¥198,000・パンツ¥198,000・靴¥198,000(フェラガモ・ジャパン〈フェラガモ〉)、その他/私物

撮影の合間、ふと漏れる独り言のようなひと言が空気を和ませ、周囲に笑みを連鎖させる。ゆったりとした“間”の妙に引き込まれ、次の瞬間に何が生まれるのか――そんな期待が、場を穏やかに温めていく。

中島 歩さんのその独特の吸引力は、初めて連続ドラマの主演を務める『俺たちバッドバーバーズ』(テレ東系/1月9日放送スタート)の現場でも変わらない。

「その場で思いつきに飛び込むというか、脚本にないことも口にしてみたり。自分がいちばんのびのびしていれば、皆さんもアイディアを出しやすいんじゃないかと」

物語は理容室を舞台にした、新感覚のアクションコメディ。貯金なし・居場所なしの、無力だけれど情に厚い元美容師・日暮 歩を演じる。

「テンションの高い役なので、初めは興奮しすぎて眠れなかったくらいです。ただ、日暮の衣装と髪型のまま軽自動車で帰った日があって、めちゃくちゃ気持ちよかったんですよ。無敵になったみたいで。カメラ前では今日みたいに立派な装いで立たせてもらうことが多いのですが、『かっこつけてるな、ふだんの自分』って(笑)。老若男女を問わず、観る方にも、彼を通して解放的な気分になっていただけたら」

そう語る背後には、中島さんのなかに静かに積もってきた感性の層が窺える。

「今の世の中は全方面に気を遣う状況で、誰も本音を言ってないんじゃないかと感じてしまう部分も。でも、フィクションだからこそ表現できることがある。わかりやすい悪者と大きな声で戦う姿を見て、すっきりしてもらえたらと思っています」

不安があるから動ける混沌へ飛び込んでいきたい

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ふだんの自分は「かっこつけてる」(笑)。役を通して、観る方に解放感を味わっていただけたら

中島さん自身は、もともと“言葉で思考して、芝居も理屈で組み立てるタイプ”だという。さかのぼれば高校時代は批評や論文を書く授業が好きで、国語教師を目指していた。だが、大学に入って触れたのは、俳優やアーティストとして活動する同世代の存在。遠いと思っていた表現の世界が、急に現実味を帯びた。

「モデルから始め、20代はまず、平々凡々と生きてきた自分には何もないことを知りました。芸事ですから時間はかかるもの。小劇場で訓練を積んで、素敵な先輩俳優や演出家との出会いにも恵まれていた。確かなことをやっている自負はあったものの焦りは常にあって、30歳が近づくと、同世代が売れていく傍らで『いよいよ就職しなきゃいけないかな』と思ったほど。でもそこで、『取り組み方を変えよう』と腹が決まりました。不安は、僕の動機なんです」

そこからは、出演候補に挙がっていると聞けば、役への思いを綴って制作側に届け、演技を根本から見直した。

「その積み重ねの先に、“取るべくして取った役”があって。『愛なのに』という会話劇の映画で、優柔不断な男の役でしたが、これは“名刺”になると思いましたね」

不完全さやクセを抱えた人物も、中島さんの手にかかるとどこか滑稽で憎めない。

「最近は、芝居にとって言葉は一部なんだとわかってきました。人間って、姿勢とか呼吸とか声の響きとか、説明できない部分に本質が表れますよね。自分が言葉にとらわれがちだからこそ、整然としていない混沌に身を投じることを大事にしたいです」

2026年は大河ドラマ出演も控える。

「まだまだ技術は足りないし鍛錬も必要ですが、行ける場所が広がってきた。やっと、走りだせた気がしています」

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WRITING :
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EDIT :
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