箱根の自然と美術の共生を体感|作品から「わきあがる鼓動」が届く
美術鑑賞では「何を観るか」だけでなく「どこで観るか」も重要なポイント。現在、箱根のポーラ美術館で開催中の「SPRING わきあがる鼓動」展は、改めてそのことを教えてくれます。温泉で体を癒やし、アートで心を癒やす。きっと、明日への力がわきあがります。
今回は美術ライターの浦島茂世さんに、展覧会の見どころをご案内いただきました。
【今月のオススメ】SPRING わきあがる鼓動
複数のファンによって空気の流れが制御され、空中に広がる布がゆるやかに動き、目に見えないエネルギーの存在を可視化。空間全体がひとつの「生きた身体」のように感じられる。
デジタル画像の最小単位「Pixel(画素)」と、生物の最小構成単位「Cel(細胞)」を掛け合わせた独自の概念「PixCell」シリーズ。クリスタルボールにより異なる像が立ち上がる。
富士箱根伊豆国立公園内という、まさに自然の中にあるポーラ美術館。箱根湯本の賑やかな温泉街から、強羅を抜けたさらにその先の森の中に、「建つ」というよりは「姿を隠す」ように、その建物はあります。山の形に沿って建てられた空間は、ガラス張りで明るく開放的で、訪れるたびに特別な場所だなと思いますが、今回の展覧会ではいつにも増してそのことを強く感じました。美術館としては開館以来初めての「地域に根ざした展覧会」だそうで、館がここにある意味をすごく考えた内容になっています。
箱根をテーマにした絵画や写真、浮世絵史料で箱根の魅力や歴史を知るとともに、冒頭で「プロローグ」として展示されているのは、大巻伸嗣によるインスタレーション。1枚の軽やかな布が空気によってゆるやかに動き続ける作品で、背景には館外の自然が。朝、日中、そして夕刻と、天候や時間によって表情が変わります。特に日が落ちて暗くなった展示室で、布が艶やかに輝きながら揺れている様は妖艶ですらあり、うっとりと魅了されてしまいます。
「エピローグ」は名和晃平の代表的なシリーズ《PixCell-Deer》。“プチプチ” のような無数のクリスタルボールで覆われた立派な鹿の剥製2体が、広い展示室内で向き合うという、非常に印象的な展示になっています。解説を読まなくても(もちろん読めばもっと)伝わる作品、心に残る展示で、アートの入り口として最適だし、知識がある人にとってはより深く楽しめる展覧会に。タイトルのとおり「わきあがる鼓動」を、しっかりと感じられます。(談)
<information>SPRING わきあがる鼓動
「SPRING」とは春であり温泉であり、バネのように飛躍する力を意味する。人間や世界の奥底から春の芽吹きのようにわきあがる鼓動を宿し、観る者の感性を揺さぶる絵画、彫刻、工芸、インスタレーション作品を紹介。青木美歌、名和晃平、大巻伸嗣、杉本博司、クロード・モネ、アンリ・ルソー、アンゼルム・キーファーほかの作品が並ぶ。
会期/開催中〜2026年5月31日(日)まで
会場/ポーラ美術館
問い合わせ先
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- 構成 :
- 剣持亜弥

















