日本における美術鑑賞の指南役。50年続く名物番組NHK「日曜美術館」が展覧会に

スタートから50年を迎えるNHK「日曜美術館」。なんと、放送2500回を超える長寿番組です。さまざまな司会者、ゲストによって、古今東西の作品、アーティストが紹介されてきた、その軌跡が、展覧会になりました。

東京藝術大学大学美術館の熊澤 弘さんが、見どころをナビゲートします。

熊澤 弘さん
東京藝術大学大学美術館教授
東京藝術大学美術学部芸術学科卒、同大学院美術研究科(西洋美術史)修了。オランダを中心とする西洋美術史、博物館学が専門。日本国内外の美術展覧会に関わる。’24年4月より現職。

【今月のオススメ】NHK日曜美術館50年展

展覧会_1
石田徹也 《飛べなくなった人》 1996年 静岡県立美術館蔵

現代人の心の奥にある苦悩や悲しみを独自の表現で作品にした石田徹也。2005年に31歳で踏切事故により亡くなったが、その後注目を集め、現在では世界的に評価されている。

展覧会_2
アルベルト·ジャコメッティ《ヤナイハラⅠ》 1960-61年 国立国際美術館蔵 撮影/福永一夫 

モデルは哲学者・矢内原伊作。フランス留学中にジャコメッティと出合い、何度もモデルを務めるなど交流を重ねた。本作は貴重な完成作品のひとつ。


NHK「日曜美術館」という番組の大きな特徴のひとつに、紹介される作品、アーティストについて語る、その語り手自身がおもしろい、ということがあります。アーティストに心底惚れているとか、感銘を受けてこういう作品をつくったとか、語り手側の話も心に残るんですよね。そもそも、1976年に番組が始まったときは、「私と○○」というタイトルで、作家・大江健三郎がフランシス・ベーコンについて語ったり、彫刻家・舟越保武が洋画家・松本竣介について伝えるなど(ふたりは中学の同級生)、そのゲストの目がとてもユニークだったんですね。哲学者の矢内原伊作が、自身がモデルになったアルベルト・ジャコメッティについて話す回では、実際の作品《ヤナイハラⅠ》がスタジオに来ていて、画面の中で矢内原本人と並んで映っている、という、大変贅沢なこともありました。

忘れ去られた画家や知られざるアーティストに光を当てるというのも、「日曜美術館」の大きな力です。31歳で夭折した石田徹也は、その死の翌年に、有志により開かれた展覧会と遺作集から注目を集めました。

今回は、こうした「日曜美術館」ならではの美術の見方を楽しんでいただきます。縄文土器からセザンヌ、人間国宝による工芸作品、写真作品、現代アートまで、番組で紹介された古今東西の名品が並ぶ、あまりないタイプの展覧会です(笑)。岡本太郎がピカソについて語る番組映像と共に、《ゲルニカ》の原寸大高精細映像をお見せしたりもします。きっと、貴重な鑑賞体験になると思います。(談)

<information>NHK日曜美術館50年展

「語り継ぐ美〜時を超えて美を語る言葉・語らせる作品」「日本美の再発見 古代から明治まで」「工芸 伝統と革新」「災いと美」「作家の生き様と美〜アトリエ&創作の現場」の5章で、120点を超える名品と共に番組の歴史を紹介。静岡県立美術館(7〜9月予定)、大阪中之島美術館(10月10日〜12月20日)へ巡回。

会期/2026年3月28日(土)〜6月21日(日)
会場/東京藝術大学大学美術館(東京都台東区上野公園12-8)

問い合わせ先

東京藝術大学大学美術館

TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)

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EDIT :
剣持亜弥、喜多容子(Precious)