レストランや飲食店で、お店側が用意してくれる取り皿。この取り皿、あなたは正しく使えていますか?

和食、中華料理、ビュッフェ……食事の種類が違えば、取り皿のマナーも異なります。和食ではOKなことが、中華ではNGだったり、その逆のケースだったりすることも。それを知らずにマナー違反をやってしまうと、人前で赤っ恥をかいてしまいます。 

そこで、今回はマナー講師の瀬尾姫民さんに、人前でやりがちだけど実はNGな取り皿のマナーを教わります。食事するとき、これらのNGマナーと同じ振る舞いをしてしまわないよう、気をつけていきましょう!

【和食】での取り皿のNGマナー6選

■1:取り皿をテーブルに「置いたまま食べる」

洋食の場合、柄付きのカップスープなどの例外を除いて、食器を持ち上げて食事をすることはほぼありません。しかし、和食では食器をテーブルに置いたまま食べると、マナー違反になることも。

「和食では、お造りや焼き魚を盛り付けた平皿や、メイン料理の高台付きの器以外は、ほとんど手に持っていただきます。刺身のしょうゆ皿や天ぷらの天つゆの器も、手に持っていただくのが美しい作法です」(瀬尾さん)

箸のみを使って食べる和食の場合、取り皿をテーブルに置いたままでは、汁がこぼれやすく、それを避けようとすると、顔をテーブルに近づけることになり、犬食いのようになってしまいます。洋食のマナーに引きずられず、和食では取り皿などの小さな器は必ず持ち上げるようにしましょう。

■2:取り皿を「片手で」持ち上げる

小さな醤油皿も必ず両手で持ち上げましょう
小さな醤油皿も必ず両手で持ち上げましょう

和食では、箸と器を同時に持ち上げるのは粗相のもと。“もろおこし”というマナー違反にあたります。醤油皿のような小さな器であっても、片手で持ち上げず、まずは両手で取り上げて器を安定させてから、箸を持つようにしましょう。

「もろおこしがNGかどうかは、T.P.O.にもよります。たとえば、30分や1時間しかない職場のランチ時に、もろおこしをしないように食事をするのは、至難のわざでしょう。その場合は、粗相をしないように気をつけながら、片手で小皿や取り皿を持ち上げてもよいかと思います。ただ、お店で時間の余裕をもって懐石料理をいただく際は、器を両手で持ち上げてから箸を手に取ることが、マナーにかなっていますし、そのほうが心にゆとりを持って、じっくりと食事を味わうこともできるのではないでしょうか」(瀬尾さん)

ゆっくり時間が取れる場合は、料理に感謝しながら、取り皿を丁寧に両手で持ち上げるようにしましょう。

■3:取り皿に「親指を入れて」持つ

取り皿をうっかり落とさないようにしっかり持つことは大事ですが、器のなかに親指を入れてしまうのは、NG! 料理に指が触れるのは衛生上の問題がありますし、仮に指が触れていなくても見た目上、好ましくありません。親指は縁に軽くかけるだけにして、残り4本の指で底を支えるようにして、取り皿を持つようにしましょう。

■4:取り皿を「引きずる」

取り皿が自分の手元になく、少し離れたところにある場合にやってしまいがちなNGマナーが、これ。取り皿を引きずると、テーブルも器も傷つけてしまうおそれがあります。繰り返しになりますが、取り皿は小さなものでも、両手で取り上げるようにしましょう。

■5:取り皿を持ったまま話す

話すときは箸も取り皿も一旦置きましょう
話すときは箸も取り皿も一旦置きましょう

おいしい食事を囲めば会話も弾みますが、ただ、“食べる”と“話す”の区切りはしっかりつけましょう。取り皿を持ったまま話すのは、マナー違反です。食事中に会話をするときは、取り皿も箸もなるべく一旦、置くようにしましょう。

■6:使用済みの取り皿を「重ねる」

食事が終わったあと、テーブル上の取り皿を重ねてしまうのはNG。お店の人が片付けやすいように……という気遣いからこれをやると、繊細な食器を傷つけて、かえって迷惑になるおそれがあります。

「和食では、職人がお料理に合わせて器を選んでくれているため、その調和を楽しむのもひとつの醍醐味です。食べ終わったからといって、食器をさっさと重ねるのは、そうした和食ならではの趣を損なう行為とも言えます。テーブルの上を片付けるのはお店の方にお任せして、食後は器を眺めつつ、お料理の余韻を楽しんでみてはいかがでしょうか」(瀬尾さん)

親切のつもりが逆効果にならぬよう、食後の取り皿は重ねずそっとしておきましょう。


【中華料理】での取り皿のNGマナー3選

■7:円卓で大皿の料理を「立ち上がって」取り分ける

中華の場合は取り皿を持って立たない
中華の場合は取り皿を持って立たない

中華料理の円卓は、立ち上がらずに料理を取り分けできるように設計されたもの。自分から遠くにある大皿料理を、わざわざ立ち上がって取りに行くのはマナー違反に当たります。手近にない大皿料理は円卓をゆっくり回して、座ったまま取り分けるようにしましょう。回す方向は時計回りが原則ですが、テーブルが一巡した後で反対に回すほうが近い場合には、一声かけてから反時計回りにしてもOKです。

■8:取り皿を「持ち上げて」食べる

中華ではテーブルに置いたままが正解!
中華ではテーブルに置いたままが正解!

和食と違って、中華料理では取り皿はテーブルの上に置いたままにするのがマナー。取り皿を持ち上げて食べるのは、マナー違反にあたります。

「取り皿を持ち上げるかどうかは、食文化の違いによります。箸のみを使う和食では、汁物などは器を持ち上げるほうがきれいに食べることができるのに対し、中華料理では箸以外にレンゲも使うので、取り皿を持ち上げる必要がないのです。郷に入らば郷に従えといいますし、他国の食文化を尊重するという意味で、中華料理では取り皿を持ち上げないほうがいいでしょう」(瀬尾さん)

どちらがいいか悪いか、正しいかまちがっているかという点にとらわれるのではなく、互いに敬意を払うということが、マナーにおいてもっとも大切かもしれませんね。

■9:取り皿を交換せずに「1枚を使い続ける」

1回の食事で多彩なメニューを楽しめる中華料理では、一品ごとに取り皿を取り替えるようにしましょう。

「そんなに汚れていないから」「洗い物を増やさないように」などと余計な気を回して1枚を使い続けると、味が混じって本来のおいしさが損なわれてしまいます。そうなると、「最高の料理でおもてなしをしたい」というお店の人に対しても失礼に当たりかねません。

遠慮せずに、取り皿はどんどん交換するようにしましょう。


【ビュッフェ】での取り皿のNGマナー3選

■10:「ひとつの取り皿に何種類も」料理を盛り付ける

盛り過ぎないように注意しましょう
盛り過ぎないように注意しましょう

ビュッフェでは、いろんな料理を試したくなりますが、ひとつの皿にあまりたくさんの種類を盛り付けるのはNG。特に、温かい料理と冷たい料理を一緒に盛り付けると、双方の風味を台無しにしてしまいます。料理の味が混ざらないようにするためにも、ひとつの皿に盛り付けるのは2~3種類までにとどめましょう。また、山盛りにするのも上品ではないので、7分目くらいに抑えるのがスマートです。

■11:他人の分を取り分ける

ビュッフェスタイルでは、自分の食べたい分を自分で取るのがルール。気を利かしたつもりで、他人の分まで取り分けるのはマナー違反に当たります。

「もちろん、一緒に食事をしている方が、親切心から取り分けをしてくださった場合には、雰囲気を壊さないように“ありがとうございます”とお礼を言っておくほうがよいかと思います。ただ、自分自身が他人の分を取り分けるのは、控えるほうがよいでしょう」(瀬尾さん)

自分と他人では味の好みも食べられる量も異なります。取り分けはせず、「この料理おいしいわ」と情報の共有だけするのがよいかもしれませんね。

■12:立食パーティーで「使用済みの取り皿を料理台に置く」

ランチビュッフェなど、決まった席で食事をするのではなく、立食パーティーのビュッフェでは、使用済みの取り皿の扱いに要注意。うっかり汚れた皿を料理台に戻すのはマナー違反に当たります。使用済みの取り皿は、料理台には戻さず、サイドテーブルに置くか、サービス係の人に渡すようにしましょう。

さまざまな料理で提供される取り皿ですが、実は「知らずにやっていた!」というマナー違反があったのではないでしょうか? 今回ご紹介したポイントをしっかり押さえて、取り皿も優雅に使いこなせるようにしていきましょう。

瀬尾姫民さん
マナー講師
(せお ひさみ)Seo Total Academy代表。一般社団法人日本プロトコール&マナーズ協会認定サロン。1993年イメージコンサルタント資格を取得。2005年Seo Total Academyを設立。カラー、ファッション、ブライダル、プロトコール&マナーの分野において個人及び企業向けコンサルティング、セミナー、研修、育成を行う。ホテルナゴヤキャッスル主催キャッスルアカデミー「トータルビューティーレッスン」や主催するエレガントマナー講座、和の作法&テーブルマナーレッスンも毎回キャンセル待ちと好評。ブライダルやデパートイベントのプロデュース、TV出演、人気女性誌での掲載など多分野で活躍する美のスペシャリスト。『なごやの冠婚葬祭』監修。著書に『お食事から身につける美しい日常』がある。Seo Total Academy
この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
2018.8.22 更新
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
中田綾美
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