【市川染五郎×駒木根葵汰インタビューVol.1】『鬼平犯科帳』シリーズ最新作の特別先行版『本所の銕(てつ)/密告』で初共演!を読む
「僕が時代劇に惹かれるのは、そこに生きる人間が発する熱や必死さに、今を生きるヒントが見えるから」(駒木根さん)
──駒木根さんが『密告』で演じられた盗賊・伏屋の紋蔵について、松本幸四郎さんは『彼の血の滲む生き様に引き込まれた』と、コメントされていました。
駒木根:「今作の役や作品に対して自分なりに一生懸命取り組んだことを、見てくださっていたのだなとうれしく思いました。励みになります。
実は、幸四郎さんとお会いするまでは“遠い世界の方なのかな”と勝手に距離を感じていたのですが、現場では思いがけず親しみやすい一面もかいま見せてくださいました。
幸四郎さんと染五郎さんが、同じ人物を演じる様子を目の当たりにする、貴重な体験ができたのですが、やはり父子だからなのか、圧というか、オーラのようなものがビシビシと伝わってきて。“銕三郎と平蔵は、同じ人物なのだ”と問答無用の説得力を感じました。両方の作品でおふたりそれぞれと対峙するシーンがあったのですが、そこも対象的だったことを覚えています」
──どのようなシーンか、少し教えていただけますか。
駒木根:「『本所の銕』では、悪御家人の横山小平次が銕三郎に髷を切られる場面があり、『密告』では、紋蔵が平蔵から刀を寸止めされるという、いずれも刀がらみの緊迫したシーンでした。
幸四郎さんは、カメラが回るまでは場の空気を和ませてくださっていたのが、いざ本番となるとスイッチがガチッと入る。そのコントラストは、同じ人には感じられないほどでした。一方で、染五郎さんはオンもオフも、終始役と静かに向き合っているストイックな印象がありました」
──動と静のような対比が目に浮かびます。『密告』では、駒木根さんの役を通して“母の愛”が感じられました。おふたり自身が家族愛を感じたエピソードはありますか。
駒木根:「地元が茨城なのですが、母は僕のイベントがあるごとに来てくれるんです。息子として少し恥ずかしさもあるのですが、これがいざ来てくれなくなったら、ちょっと寂しいのかなと(笑)。時間をかけて足を運んでくれる“母の愛”を大切にしようと思います」
染五郎:「家族愛と言えるかはわかりませんが、自分が今役者をやれていること自体に、感謝の気持ちがありますね。役者の家に生まれた役者の息子だから芝居をしているのではなく、自分が芝居を好きだからやっている。これは祖父や父のおかげなんです。今では一生をかけて突き詰めていこうと思える芝居に対して、好きという気持ちを抱かせてくれたことには、感謝の気持ちしかありません」
──おふたりとも素敵なエピソードをありがとうございます。改めて、時代劇の魅力はどんなところにあるのか、それを踏まえて今作の魅力を教えてください。
染五郎:「父も言っていることなのですが、今やリアルタイムで知る人は誰もいない江戸という時代は、作り手が一から作ってふくらませることのできるファンタジーな世界であると思います。ある種ファンタジーな世界で人間ドラマを描けるのが、時代劇の醍醐味であると感じています。
ドラマ性のある物語だったり、迫力ある殺陣のシーンなど、古臭さを感じさせずに体現しているのが、この“鬼平”シリーズだと思っています。そこに加われたことはとてもうれしいですし、ひとりでも多くの方に見ていただきたいと思っています」
駒木根:「僕が個人的に時代劇に惹かれる理由は、登場人物が発する熱だとか、必死さみたいな部分なんです。明日をつかむことが大変な時代において、人を斬らなければ明日を生きられない、そんな瀬戸際で果たしてどのような選択をするのか。そこに生きる人たちは常に究極の選択を迫られているわけです。
そんな時代の物語と出合うことが、今を生きる人の痛みを和らげたり、昇華させたりするのではないかと思っています。フランクな気持ちで見ていただけたらうれしいですね」
「完全な正義でも完全な悪でもない、人間同士のぶつかりあいが今作の魅力となっています」(染五郎さん)
──最後におふたりが今回演じた役を、漢字一文字で表してみてください。
染五郎:「漢字の“漢”というひと文字で、おとこ」
駒木根:「カッコいいですね」
染五郎:「銕三郎は“悪に染まりきれない人”なんです。いっそ悪になってしまえば楽かもしれない。けれど、自分の中に正義や優しさがあるから悪になりきれない。その葛藤が彼の魅力でもあるので、男らしい強さと包容力のある優しさを兼ね備えた“漢(おとこ)”ですかね」
駒木根:「明快でいいですね。今の染五郎さんのお話しを聞いて、『本所の銕』で演じた小平次に関しては、銕三郎と根本は似ているような気がしてきました。銕三郎は人を大事にしますが、小平次は人の上に立つことを大事に思っている。おそらく人に慕われたい人なのです。だけど慕ってもらうやり方が間違っている。その一点において、ふたりの人生は分かれてしまった。欲なのか、お金なのか、権力なのか。いろいろなものに溺れて大切なものを見失ったのが小平次。漢字にするなら“溺”れるでしょうか。
『密告』で演じた紋蔵に関しては“愛”とか“つながり”のような言葉が浮かびます。父親がいないために母親が生活に苦しむ家で育った、常に何かに飢えていた人物。生きるために仲間と悪事に走らざるを得ない、切なさを感じながら演じていました」
──言葉にしていただくと役の背景が広がりますね。お互いの“ひと文字”を聞いていかがでしたか。
駒木根:「撮影期間を通して見てきた銕三郎は、荒々しい男というか、若さゆえにまだ完璧ではないけれど、自分の信念にのっとってがむしゃらに生きていく彼の姿勢にかっこ良さを感じていました。今お聞きした“漢”はまさに、という感じです」
染五郎:「小平次は悪人ではありますが、どこか寂しさを感じる人物でした。それまでどのような人生を送ってきて、なぜ悪人になってしまったのか。孤独や寂しさを感じるような出来事が何かしらあったのではないかという背景を感じながら、一緒に撮影させていただきました。
駒木根さんは“単純な悪ではない”人物を、絶妙なさじ加減で演じていました。銕三郎もやはり、完全な正義でも完全な悪でもない人物です。そんなふたりが対峙することで、単純な勧善懲悪ではないリアルな物語に仕上がっていることを改めて感じました」
質問にひとつ答えていただくごとに、作品の世界や魅力がどんどん深まっていくような染五郎さんと駒木根さんのクロストークでした。Vol.3では、おふたりの素顔に迫るQ&Aを一問一答形式でお届けします。
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
『本所の銕/密告』7月10日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー
原作:池波正太郎『鬼平犯科帳』(文春文庫刊)
監督:山下智彦 脚本:大森寿美男 音楽:吉俣良
キャスト:松本幸四郎 市川染五郎
仙道敦子 中村ゆり 和田聰宏 尾美としのり
本宮泰風 浅利陽介 山田純大 久保田悠来 山口馬木也
中島瑠菜 阿佐辰美 北澤響 黒沢あすか 松尾貴史 駒木根葵汰 山田真歩
問い合わせ先
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- PHOTO :
- トヨダリョウ
- STYLIST :
- 中西ナオ(染五郎さん)、杉山凌(駒木根さん)
- HAIR MAKE :
- 川又由紀(染五郎さん)、吉村健(駒木根さん)
- 取材・文 :
- 谷畑まゆみ

















