今月のMs.Precious……横浜市在住53歳。ファッション誌編集者。都内私立大学の仏文科を卒業。新卒で大手出版社に就職し、広告部を経て念願の女性ファッション誌の編集部に。産休・育休を経て、プロモーション部、営業部を経て、しばらくぶりに編集の現場に復帰する。高校生の頃から、パリの香りのするものが好きで、大学生の頃には何度かフランスに短期留学もした。今は夫の所有する国産車を時々運転するくらいだが、そろそろ自分専用のクルマがほしいと検討中。
今月のクルマ……【プジョー 5008 GT HYBRID アルカンターラパッケージ】
プジョーは世界最古の自動車メーカーのひとつで、創業は19世紀末から。それ以前のプロダクトで有名なのは、高い鉄鋼加工技術を背景にしたペッパーミルでしょう。ビストロのテーブルでよく見かけるクラシカルなミルには、大体PEUGEOTという刻印が入っています。プジョーのクルマは洗練されたデザインに目が行きがちですが、ファンが心底惚れているのは乗り味の方です。スポーツモデルでなくても、ハンドリングの精度と路面を丁寧に掴む足回りの質感は、他のブランドとは一線を画します。ラリーをはじめモータースポーツでも輝かしい実績を持つプジョーにとって、走る楽しさはブランドの矜持でもあります。日本での認知は小型車の205あたりから始まり、その後206、306シリーズで一気に広まりました。そのプジョーがSUVモデルを本格的に拡充し始めたのは2016年頃のこと。今回紹介する5008は、ヒット作3008の3列シート版として登場し、第二世代目の今作では内外装デザインのアバンギャルドさにいっそう磨きがかかりました。そして、SUVであってもプジョーらしい走りの良さは変わりません。買ったあとに一番心奪われるのは、実はそこかも。
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「フランス車の好きなところは発想が尖っているところ。既成概念にとらわれていない」――松任谷
Ms.Precious やっぱりどこか違いますね。
松任谷 そうなんですよ。SUVはどれも似ているようで、やっぱりプジョーが作るとどこか違うんですよね。
Ms.Precious 松任谷さんはフランス車がお好きって伺いました。
松任谷 うーん……そう言われることも多いんですが、実はどこのクルマも好きですよ。それぞれの国にはやっぱり個性がありますからね。
Ms.Precious フランス車のどこがお好きですか?
松任谷 難しい質問ですね。誤解を恐れずに言えば、尖っているところかな。
Ms.Precious 尖っていますか……?
松任谷 デザインが尖っているということではなく、発想が尖っていますよね。既成概念にとらわれないというか。
Ms.Precious 自由ということですか?
松任谷 そう、自由ですね。ここはこうあるべき、という考え方ではなく、ここはこうした方がいいのではないか、という考え方でしょうか。
Ms.Precious ポジティブシンキング、ですね。
松任谷 僕自身がネガティブな人間なので、ポジティブな発想をする人やものには憧れますね。
Ms.Precious えっ、そうは見えないけど、ネガティブなんですか?
松任谷 間違いなくネガティブです。だから、僕の物作りはネガつぶしです。超日本的。
Ms.Precious 面白いですね。それでプジョーはポジティブなんだ……。
「気軽で気負わなくていいのがプジョーの魅力」――Ms.Precious
松任谷 僕にはそう映ります。初めてプジョーを購入したのは80年代の中頃だったんですが、プジョーに乗るたびにどんな季節でも春に感じました。どこかウキウキするような。
Ms.Precious 初めての刷り込みは大事ですものね。
松任谷 いや、それが単なる思い込みではなく、時代が変わっても、ウキウキ感のベクトルは違っていっても、やっぱり気持ちのいいクルマを作るんですよね。プジョーって。
Ms.Precious 私も306カブリオレを所有していたことがあったんですが、あの頃はよくドライブに行っていたような気がしますね。
松任谷 複数台所有していても、なんだかプジョーのキーをとっちゃうんですよね。
Ms.Precious 気軽、ということもありませんか?
松任谷 あ、大いにあると思います。値段的にもクルマに対するプレッシャーが少ないですもんね。
Ms.Precious サイズ感もいいから、どこへでも入っていけちゃうし……でも、これはちょっと大きいですね。
松任谷 そう思うでしょ? 確かに幅だって1メートル90近くあるし、何しろ7人乗れますからね。とにかく運転席に座ってください。
Ms.Precious うわっ、なんだか未来的ですね。ハンドルが小さいっていうのは聞いていたけれど、こんなに小さいのね。大丈夫かしら。
松任谷 これは慣れますね。ゴーカートみたいにキュッと反応したら疲れちゃいますけど、これは穏やかなんです。慣れるとほかのクルマのハンドルが大きすぎて面倒に感じますよ。
Ms.Precious いろいろなところがまっすぐではなくて斜めになっているんですね。
松任谷 ドアの肘掛け部分もこの斜めが人間工学的には合っているような気がしませんか?
Ms.Precious 確かに、すっと腕を乗せられますね。その割に助手席との間の肘掛けはまっすぐ。
松任谷 わからないけど、プジョーがやると、きっと意味があるんだろう、なんて思っちゃいます。
Ms.Precious このグレーのファブリックも素敵。
松任谷 似たようなファブリックは他の国のメーカーのクルマでも見られるんですけど、プジョーがやるとおしゃれですよね。
Ms.Precious やっぱりエルメスの国ですね。
松任谷 ダッシュボードのこの部分が夜になるとイルミネーションになるんですけど、まるで深海を泳いでいるような気になりました。
Ms.Precious グランブルーですね。
松任谷 あはは。
Ms.Precious このボタンでスタートですね?そして、その隣のこれが前進、後退の……。
松任谷 そう、シフトです。プジョーはハンドルに続いてシフトもこの形に決めたようです。
Ms.Precious サイドブレーキは……。
松任谷 あ、このボタンを押してもいいし、そのままアクセルを踏み込めば自動的にキャンセルされます。
Ms.Precious ではしっかりつかまっていてくださいね。
松任谷 なぜですか?
Ms.Precious 初めてのクルマだし、私、運転下手だから……。
松任谷 大丈夫、自信を持っていきましょう。
「昔乗っていた306とは全く違うクルマだけど、ドライバーに優しいところは同じ」――Ms.Precious
Ms.Precious あ、いい感じ。
松任谷 306を思い出しましたか?
Ms.Precious いえ、全く違うクルマだけど、ドライバーに優しいところは似ているかしら。
松任谷 動き出しはモーターがアシストするからスムーズで力強いでしょ?
Ms.Precious あ、そうなんですね? ハイブリッドということですか?
松任谷 そうです。エンジンはちっぽけな3気筒エンジン。プジョーは小さいクルマから大きなクルマまでこのエンジンを使ってます。あまりエンジンの個性にはこだわらないメーカーなのかもしれませんね。
Ms.Precious でも私、この音好きです。炎を感じます。
松任谷 確かに薄っぺらい音はしませんよね。それよりも乗り心地はどうですか?
Ms.Precious 意外にかっちりしていますよね。現代のクルマっていう感じかしら。
松任谷 そのうちわかると思いますが、それが金属の感じではなく、皮膚のハリ感、といったらいいのかな、そんなしなやかさを感じるはずです。
Ms.Precious 人工的ではない、ってことですか?
松任谷 そうですね。名前をつけちゃいたくなるようなクルマですね。
Ms.Precious クルマに名前をつけちゃう派ですか?
松任谷 いえいえ、僕はしませんけど。
Ms.Precious 私もしません。
松任谷 名前のついたクルマだと、靴脱がないといけないような気になりませんか?
Ms.Precious それは思ったことないけど、男の人でもそんな人がいるのかな、と一瞬思いました。
「僕、このクルマが本気でほしくなりました」――松任谷
松任谷 失礼ですけど、そのスニーカー、バレエランナーですよね。運転しやすいでしょ。
Ms.Precious そうですね。運転するときは薄底のスニーカーが気分ですね。
松任谷 全く同感で、少しでも底が厚いとちょっと鈍感な運転になるんですよね。ドライビングポジションも変わっちゃうし。
Ms.Precious レーシングシューズも薄底ですものね。
松任谷 よくご存じで……。
Ms.Precious 厚底を履いていても、脱いだときの落差が大きいのはね……。
松任谷 まあ、人前ではよく見せたいのが人間ですから。
Ms.Precious お化粧を落としたら別人っていやじゃありませんか?
松任谷 うーん、なんとも答えにくい質問ですね。
Ms.Precious なぜですか?
松任谷 うちにそういう人が1人いるから。
Ms.Precious あら、彼女は別格だからいいんじゃないですか?
松任谷 別格かあ、同じなんですけどねえ。
Ms.Precious いいえ、別格です。それでは彼女がお化粧しているときと、お化粧してないときとどちらがお好きですか?
松任谷 確かに微妙にメンタルも違うかもしれませんね。僕はどちらかというと素の方かな。
Ms.Precious わかります。だからフランス車がお好きなんですよ。
松任谷 あれ? それってまとめですか?あの、まとめは僕がやるものだとばかり……。
Ms.Precious 大丈夫です。編集長は知り合いだから。
松任谷 あ、そういえばそうでしたね。では勝手なこと言っちゃいますけど、僕、このクルマが本気でほしくなりました。
Ms.Precious 残念ながらクルマ関係者はあまり知らないのでお力にはなれませんが。
松任谷 いや、単なる独り言ですから気にしないでください。
今月のクルマ
【プジョー 5008 GT HYBRID アルカンターラパッケージ】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,810×1,895×1,735mm
車輛重量:1,740kg
車両本体価格:¥6,140,000~
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
問い合わせ先

- TEXT :
- 松任谷正隆さん 作編曲家、音楽プロデューサー
- PHOTO :
- 小倉雄一郎(小学館)
- WRITING :
- 松任谷正隆
- EDIT :
- 三井三奈子

















