【目次】
- 「幽霊の日」とは? 意味・いつなのかを解説
- なぜ7月26日? 「幽霊の日」の由来と『東海道四谷怪談』
- お岩さんとは? 『東海道四谷怪談』のあらすじとモデル
- 日本の幽霊とは? 特徴や妖怪との違いを解説
- 幽霊はなぜ白装束で足がない? 定番イメージの由来
- お盆と幽霊の関係とは? 日本の供養文化とのつながり
- 「幽霊の日」に知っておきたい怪談・幽霊文化の豆知識
【「幽霊の日」とは? 意味・いつなのかを解説】
■いつ?
「幽霊の日」は7月26日です。
■意味
「幽霊の日」を誰が制定したのか、あるいは何のために制定したのかなど、詳細はわかっていません。「幽霊の日」は、新聞社や出版社、自治体、Webメディアなどが「今日は何の日」として紹介するなかで、徐々に広く知られるようになりました。現在では、日本の怪談文化や幽霊にまつわる歴史に親しむきっかけの日として紹介されています。
【なぜ7月26日? 「幽霊の日」の由来と『東海道四谷怪談』】
■なぜ7月26日? 「幽霊の日」の由来
7月26日が「幽霊の日」とされているのは、1825(文政8)年7月26日に、江戸の中村座で歌舞伎の演目『東海道四谷怪談』が初演されたことに由来します。『東海道四谷怪談』は現在でも上演され続けている、日本を代表する怪談劇のひとつ。皆さんも、主人公の名前やあらすじなど、きっとご存知のはず!
■『東海道四谷怪談』についてざっくり
『東海道四谷怪談』の作者は、江戸時代後期の劇作家である四世鶴屋南北(つるやなんぼく)です。それまでの怪談とは一線を画す、写実的で迫力ある演出や、人間の欲望や悲劇を描いた内容が当時の江戸の人々を魅了し、大ヒットを記録しました。この初演日が、のちに「幽霊の日」と呼ばれる由来となったのです。
【お岩さんとは? 『東海道四谷怪談』のあらすじとモデル】
■「お岩さん」とは?
お岩さんは、歌舞伎『東海道四谷怪談』に登場するヒロインで、夫に裏切られ、悲しい最期を遂げたあと、怨霊となって復讐する人物として知られています。夫婦の愛情や裏切り、人間の欲望が生み出す悲劇を象徴する存在として、現在も日本を代表する幽霊のひとつに数えられています。日本人が「うらめしや〜」という言葉からイメージする、幽霊像を代表する存在ともいえますね!
■『東海道四谷怪談』のあらすじ
塩冶家の浪人・民谷伊右衛門は、病気がちになった妻のお岩を疎ましく思い、裕福な家の娘・お梅との再婚に心を動かされます。お梅の祖父・伊藤喜兵衛は、ふたりを結婚させるため、産後の薬と偽って毒薬をお岩に届けます。それを飲んだお岩は、片目が腫れ上がり、髪が抜け落ちるほど姿を変えられてしまいました。
やがて真相を知ったお岩は、激しい怒りと悲しみのなかで命を落とします。伊右衛門はお岩と、殺害した奉公人・小仏小平の遺体を戸板の表裏に打ち付け、川へ流してしまいます。しかし、お岩の亡霊に惑わされた伊右衛門は、祝言の夜に花嫁のお梅とその祖父を斬り、その後も次々と怪異に苦しめられ、破滅へと追い込まれていくのです。
■お岩さんにモデルはいた?
『東海道四谷怪談』のお岩には、江戸・四谷左門町にあった田宮家の女性「お岩」にまつわる伝承が関係しているといわれます。現在も、お岩をまつる於岩稲荷田宮神社には、その名にまつわる由緒が伝えられています。
ただし、歌舞伎に登場するお岩の生涯が、実在した特定の女性の史実をそのまま再現したものではありません。四世鶴屋南北は、お岩稲荷の伝承や当時知られていた怪談、事件などを巧みに組み合わせ、伊右衛門の裏切りによって怨霊となるお岩の物語をつくり上げたと考えられています。
【日本の幽霊とは? 特徴や妖怪との違いを解説】
■日本の幽霊とは?
日本の幽霊とは、亡くなった人の霊がこの世に現れたものと考えられてきました。日本では、死者の霊が何らかの思いを残して成仏できず、この世に姿を現すという考えが受け継がれてきました。特に、強い怨みや執念を抱えて亡くなった人の霊が現れる怪談は多く、幽霊は人間の感情や心残りを象徴する存在として描かれています。
ただし、幽霊は必ずしも人を怖がらせるだけの存在ではありません。亡くなった人が何かを伝えるために現れる話や、残された人とのつながりを描いた伝承もあり、日本の文化や芸能の中でさまざまな形で語り継がれています。
■幽霊と妖怪の違い
幽霊と妖怪は混同されがちですが、一般的には異なる存在として考えられています。幽霊は、一般にもともとは「死者の霊」を意味し、生前の姿や見覚えのある姿で現れるとされています。特定の人物として語られることも多く、誰かに対する思いや未練と結びついて描かれる点が特徴です。
一方、妖怪は、正体のわからない怪異や、人知を超えた現象・存在を形あるものとして語ったものを広く指し、河童、天狗、鬼など、さまざまな姿や性格をもつ存在が含まれます。民俗学では、幽霊は亡くなった人が生きていたときの姿で現れたもの、妖怪は人間の心のなかで描いたイメージが具現化したもの、と整理されることもあります。とはいえ、昔の日本では幽霊と妖怪の境界は現在ほど明確ではありませんでした。幽霊も妖怪の一種として語られることもあり、時代や地域によってその捉え方は変化してきました。
【幽霊はなぜ白装束で足がない? 定番イメージの由来】
■白装束の幽霊は江戸時代に定着した
白い着物をまとい、額に三角形の白い紙をつけた幽霊の姿は、日本独特なイメージとして広く知られていますね。実はこの姿は、江戸時代に定型化していったもの。『日本大百科全書』によると、それ以前の幽霊は必ずしも現在のような姿ではなく、生前の姿で現れると考えられていましたが、江戸時代には納棺された死人の姿で描かれるようになったため、白衣や額に三角形の紙をつけた姿が広まっていきました。
■「足がない幽霊」は円山応挙の影響か?
幽霊には足がなく、下半身がぼんやり消えている――。この姿も、日本人が昔からもっていたイメージではありません。江戸時代以前には、足のある幽霊も描かれていました。しかし、江戸時代中期の画家・円山応挙(まるやまおうきょ)が描いた幽霊画が評判となり、足のない幽霊像が広く知られるようになったとされています。
ただし、応挙が初めて足のない幽霊を描いたと断定できる史料はなく、その起源には諸説あります。『番町皿屋敷』や『東海道四谷怪談』などの怪談や歌舞伎作品も、現在の幽霊像を形づくる大きな役割を果たしたといえるでしょう。こういった江戸時代の幽霊画や浮世絵、怪談、歌舞伎の舞台演出などが相互に影響し合うなかで、足元が闇や煙に溶けるような幽霊像が次第に定着していった、と捉えるのが適切でしょう。
【お盆と幽霊の関係とは? 日本の供養文化とのつながり】
■そもそも「お盆」とは?
お盆は、亡くなった先祖の霊を迎え、供養する日本の伝統行事です。仏教の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」を起源とし、日本古来の祖先信仰と結びつきながら現在のようなかたちになりました。一般的には、7月または8月の13日から16日ごろに行われ(※)、迎え火を焚いて祖先の霊を迎え、送り火によって霊を再び死者の世界へ送り出す風習があります。日本では古くから、亡くなった人の魂がこの世と関わりを持つという考えがありました。お盆に先祖の霊が帰ってくるという信仰も、こうした死者観の中から生まれたものです。
ただし、お盆に迎える先祖の霊と、怪談に登場する幽霊は同じものではありません。両者は異なる存在ですが、どちらも日本人が古くから抱いてきた死者への考え方と深く関わっています。
■幽霊と「供養」の関係
日本の怪談に登場する幽霊の多くは、未練や怨みを残した死者の姿として描かれています。そしてその背景には、「死者の思いを受け止め、供養することで安らかに成仏できる」という考え方があります。そのため、思いを残して亡くなった人の霊は、その願いや思いが解消されることで浮かばれると考えられてきたのです。実際に、日本の怪談では、幽霊を単に退治するのではなく、供養や弔いによって救うという展開も多く見られます。
【「幽霊の日」に知っておきたい怪談・幽霊文化の豆知識】
■江戸時代に流行した「百物語」
江戸時代、人々の間では怪談を楽しむ「百物語」という遊びが流行しました。百本のろうそくや提灯、行灯などを用意し、参加者が順番に怪談を語り終えるたびに一本ずつ火を消していき、最後の一本が消えるころに怪異が起こるといわれた怪談会です。実際に幽霊が現れると信じられていた面もありましたが、芝居や読み物、絵画などにも広がり、夏の夜に涼を楽しむ娯楽としても親しまれ、怪談文化の発展に大きな影響を与えました。
■日本三大怪談とは?
日本を代表する怪談として、「四谷怪談」「番町皿屋敷」「牡丹灯籠(ぼたんどうろう)」が挙げられることがあります。『東海道四谷怪談』のお岩さん、「番町皿屋敷」のお菊、「牡丹灯籠」のお露は、いずれも江戸時代の怪談文化を代表する女性の幽霊として知られていますね。これらの物語は、単に人を怖がらせるだけではなく、男女の愛憎、身分差、裏切り、人間の欲望など、当時の社会や人の心を映し出した作品であることが共通点です。
***
幽霊や怪談は、時代によってかたちを変えながら受け継がれてきました。江戸時代には歌舞伎や読み物として楽しまれ、近代以降は小説、映画、テレビ、漫画などさまざまな分野で表現されています。また、お盆に見られる供養の文化には、亡くなった人への思いや、人の心に残る記憶を大切にする日本独自の感性が息づいています。「幽霊の日」をきっかけに怪談や幽霊の歴史をたどり、怖さの奥にある物語や意味を知ることで、幽霊が今までとは違った存在として感じられるかもしれません。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『デジタル大辞泉プラス』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社) /独立行政法人日本芸術文化振興会「文化デジタルライブラリー」/ レファレンス協同データベース「妖怪と幽霊の違いとは?」 :

















