連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する「Precious」連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、今年で475周年という長い歴史を誇る、イタリア・ローマに位置する「ローマ・教皇庁立グレゴリアン大学」で美学、哲学、キリスト教・教会美術史を教える、教授のイヴォンヌ・ドーナ=シュロビッテンさんにインタビュー。

大学在学中に司法試験に合格しながらも、大学教授としての道を歩むことになったきっかけや、現在の活動についてお話しをうかがいました。

イヴォンヌ・ドーナ=シュロビッテンさん
「ローマ・教皇庁立グレゴリアン大学」教授
(Yvonne Dohna Schlobitten)教皇庁立グレゴリアン大学の美学、哲学、キリスト教・教会美術史学部教授。専門分野は芸術、人間としての形成、人工知能。自著共著含め多数の書籍を執筆し、’22年にはベネディクト16世やカスパー枢機卿も受賞した「バジリカータ文学賞」内の「霊性文学・宗教詩部門」を受賞。バチカンの女性誌『Donne Chiesa Mondo』編集委員会メンバー。

【Roma】ローマ教皇庁の神学研究大学にて芸術、信仰、科学の共存を考え続ける

ローマ・教皇庁立グレゴリアン大学教授のイヴォンヌ・ドーナ=シュロビッテンさん
「ローマ・教皇庁立グレゴリアン大学」教授のイヴォンヌ・ドーナ=シュロビッテンさん

創立は1551年、今年で475周年という長い歴史を誇る、教皇庁立グレゴリアン大学。司祭や修道士ほか、世界中から神学を学ぶ人々が集まる場であり、カトリック神学研究の最高峰といわれている。その伝統ある大学にて美学、哲学、キリスト教・教会美術史を教えているのが、イヴォンヌさんだ。大学在学中に司法試験に合格し、夢見た弁護士の道を歩むはずが、ある講義を受けたことで、人生が大きく変わることになる。

「それが私の母国であるドイツの美術史家、ハンス・ベルティング教授による、芸術と哲学の講義でした。感銘を受けた私は、法学と並行して美術史と哲学を専攻し、宗教哲学の修士課程にも在籍。その後ローマに行き、テレシアーヌム教皇神学大学で霊性神学のディプロマを取得。私を魅了したのは『芸術と学術』『信仰と科学』など、一見相容れないようで、一方が他方なしには説明できないテーマの奥深さ。この関係をひもときたくて、欧米やアジアなど世界中の大学やシンクタンクを回り、研究を重ねることになったのです」

なかでも人生観が変わったと語るのは日本と中国への旅。特に日本での瞑想体験は、それらが科学的思考に不可欠であることを体感したのだとか。ヨーロッパと、日本・中国。これらのエリアで経験したことが「自分の思想を支える両軸となっている」と語る。

「世界で学んだことを伝えながら、学生が自力で思考を深められるように導くのが私の役目です。大学教授という本業のほかに、バチカンの女性たちが創刊した雑誌『ドンネ・キエーザ・モンド』の編集委員としても活動中。女性の人生に焦点を当てることで、地位のボトムアップを図るのが狙いです。また世界中の他宗教の女性に目を向けてもらうというジャーナリスト視点での寄稿も行っています。思考の発展は個人の成長と密接に結びつくというのが私の持論。人々が自由に考える環境づくりができれば、それが本望なのです」

◇イヴォンヌ・ドーナ=シュロビッテンさんに質問

Q 朝起きていちばんにやることは?
まず瞑想します。

Q 人から言われてうれしいほめ言葉は? 
「一緒にいると心が解放される」「空間が広がって親密さと信頼が生まれる」

Q 急にお休みがとれたらどう過ごす? 
家族とアートを観に行く。両親と長電話する。自分の内なる声に耳を傾ける。

Q 仕事以外で新しく始めたいことは? 
物理学を学びたい。ドイツの理論物理学者・ハイゼンベルクは、「芸術家がやっていることは、私たち物理学者がやっていることと同じだ。ただそのやり方が違うだけ」と述べています。

Q 10年後の自分は何をやっている?
小さくて国際的な「思考」の幼稚園を共同で運営している。

Q 自分を動物に例えると? 
強くて野性的なライオン。ときに甘えん坊な猫でもあるのですが…(笑)。

PHOTO :
Horst Stange
EDIT&WRITING :
本庄真穂、喜多容子 ・木村 晶(Precious)
取材 :
Noriko Spitznagel