連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する「Precious」連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、中国・上海で国内外のアーティスト、漫画家、ZINE(小冊子)作家などの作品を扱う独立出版社「Kali Books」を運営する、キュレーターで編集者のチェン・ユンさんにインタビュー。

独立出版社のオーナーとして、世界各国のアートブックフェアに出展し、自ら売り場に立って書籍やZINEを紹介しているチェンさんに、独立までのきっかけや活動内容について詳しくお話しをうかがいました。

チェン・ユンさん
「Kali Books」運営、キュレーター、編集者
(Chen Yun)上海市出身。復旦大学にて新聞、メディア関連の学部を専攻し、卒業後は中国メディアの香港支局で働く。’07年に上海に戻り、北京、上海の主要アート施設ほか、中国を代表する現代アート美術館にキュレーターとして勤務。インド滞在を経て’18年より独立出版の編集者、キュレーターとして活動開始。

【Shanghai】自費出版の作品を世界のブックフェアへ 、個人の力を信じる独立出版社オーナー

「Kali Books」運営、キュレーター、編集者のチェン・ユンさん
「Kali Books」運営、キュレーター、編集者のチェン・ユンさん

国内外のアーティスト、漫画家、ZINE(小冊子)作家などの作品を扱う独立出版社「Kali Books」。世界各国のアートブックフェアに出展するチェンさんは、今日も自ら売り場に立ち、書籍やZINEを紹介しながら、多様な国籍の人々と楽しそうに会話をしている。

扱っているのは名のあるアーティストや作家のものがメインで、なかでも市井の人々をテーマにした作品をセレクト。商業出版物としても十分に通じるクオリティの高さだが「そのチャネルでは読者や書店員と直接コミュニケーションできない。個人でやることが大事」とそのスタイルを譲ることはない。

「中国の社会が変わり始めた1990年代末頃、復旦大学の新聞学部でニュース報道について学んでいました。それまでの新聞は、広報的な情報がメインだったのが、徐々に社会的な話題を取り上げるようになり、そこから地域社会に興味をもつようになったんです。その後、キュレーターとして上海ビエンナーレにて『51 Personae』を実施。これは出稼ぎ労働者や工事現場の人など51人の一般人を取材するという企画です。通りすがりの人も参加可能な路上で行う腕相撲大会の中国代表チャンピオンにも会いましたよ。今、振り返ってもすごくユニークな試みでしたね」

この『51 Personae』をZINEにした2冊組『51攤』は彼女の代表作に。現代アートを富裕層など限られた人のものにせず、幅広く裾野を広げていく姿勢が人々の共感を呼んでいる。

「今、考えているのは、国際情勢がここまで揺らいでいるからこそ、私たち一人ひとりがその国の代表であるという意識をもって、意見交換すべきなのでは、ということ。いろんな国のさまざまな声を拾いに、今後も積極的に世界のブックフェアを回る予定です」

上海のブックフェアにまでサウジアラビアの本好きが来てくれたり、大阪のイベントではメキシコのフェアで出会った人と再会を果たしたりも。個人の小さな活動が、いつか世界を動かす日が来るかもしれない。

◇チェン・ユンさんに質問

Q 朝起きていちばんにやることは?
ヨーロッパなど時差のある国にいるブックフェアスタッフからのメッセージを確認。

Q 人から言われてうれしいほめ言葉は? 
「私と同じようなことをしている人がいる」

Q 急にお休みがとれたらどう過ごす? 
家のソファで読書。部屋に置いてあるだけで、ずっとのんびり座ったことがないソファがあります(笑)。

Q 仕事以外で新しく始めたいことは? 
太極拳。表面ではなく内面を動かすこと、呼吸のこと、骨と筋肉は一緒でも皮膚は違うことなど、独特の考え方が興味深いのです。

Q 10年後の自分は何をやっている?
若者と高齢者をつなぐこと、また農業にも携わってみたい。

Q 自分を動物に例えると?
環境把握や理解が早く、そこで何をすべきかがわかっている猫。

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PHOTO :
Masato Nagafune
EDIT&WRITING :
本庄真穂、喜多容子 ・木村 晶(Precious)
取材 :
Akiko Hagiwara