温かな雰囲気に骨太さを秘めたアメリカのミュージシャン、グラム・パースンズは、ザ・ローリング・ストーンズの、とくにキース・リチャーズと仲がよかった。ストーンズの名曲「ワイルド・ホーシズ」はパースンズもカバーしていて、こちらもゆるやかなグルーブがたまらなく気持ちいい。

カントリーという枠にとどまることなく、様々な音楽を咀嚼して独自の世界を表現したパースンズが、生前掲げていたという「コスミックアメリカンミュージック」と、この秋から日本でも発売されるレクサス・ESには、どこか共鳴するものがある、とはライフスタイルジャーナリストの小川フミオ氏。音楽の都、ナッシュビルでの試乗リポートをご覧いただこう。

2018年秋発売「レクサス・ES」試乗レポート

4ドアクーペ的なれど後席は広い

2.5リッターハイブリッドのレクサスES300hが日本でも売られる予定。
長いリアウィンドウと短くみえるトランクリッドでクーペ的フォルム。

 なんだかんだいっても、男の乗り物はセダンだ。クルマは自分を飾るものでなく、自分を磨いてくれるもの。もしそう考えられるなら、刺激性は高くなくても、操縦する喜びのあるセダンこそ、つきあう価値がある。

 レクサスがローンチしたばかりの新型ESは、その意味で、おとなの男のための1台だ。2018年秋に日本で発売されるのを前に、米国ナッシュビルで試乗してそう確信した。

 ESというモデルは日本ではなじみがないけれど、じつは米国ではレクサスというブランドと同じぐらい長い歴史を持つ。LSの下に位置づけられ、LSが後席重視のモデルだとすると、ESはドライバーズカーである。

 7代目になった新型ESは、そんなドライバーズカーとしてのキャラクターをより明確化している、とぼくは思った。ひとつはスタイリングだ。

 ゆるい角度でリアに向かって傾斜したリアウィンドウを採用したことで、側面からみるとクーペ的なシルエットを獲得している、最近のトレンドともいえる4ドアクーペを意識したスタイリングだ。

 実際は、後席はかなり広いのだけれど、この外観からくる印象のおかげで、LSとはより明確な性格わけが出来たと思う。オーナーがみずからステアリングホイールを握るクルマ。

 そのイメージは操縦性の高さがしっかりバックアップしてくれる。なかでもサスペンションの設定がみごとだ。高速ではしっとりと、カーブではロールを抑えて気持ちよい操舵感覚が味わえる。

 米国では「ウルトララグジュアリー」(日本ではLパッケージに相当)というグレードに標準装備される新開発のダンパー(サスペンションのパーツ)は筒内の油の流れをうまくコントロール。

 一般論として基礎的な部分をしっかり作りこんであるのが、「いいもの」の条件だとしたら、これこそ絶品といいたくなる脚まわりなのだ。

 エンジンは日本には2.5リッター4気筒ガソリンエンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッドの「ES300h」(のみ)が導入されるそうだ。

 出足がよく、フリーウェイでは静粛性の高さと、さきに触れたサスペンションの設定とあいまって、たいへん快適だ。

 加えて、スポーティな雰囲気の「Fスポーツ」も設定される。こちらはダンパーが別ものとなり、やや硬めで、ステアリングホイールの操舵感覚も異なる。

ウッドパーツはダーク調やライト調などさまざまなオプションが用意される。
外観から想像するより後席スペースはかなり広い。

「ES」に漂うカントリーロックの香り

ナッシュビルの街を走るES。アメリカで生まれ育ったクルマの個性を堪能できた。
ナッシュビルで訪問したマヌエル・デルガドは3代続く「ルシアー」(ギター職人を指す英語)で、超絶名人ホセ・フェリシアーノにもギターを作るなど多くのミュージシャンとの付き合いが深い。

 試乗したナッシュビルは、読者のかたはご存知かもしれないが、音楽の都と言われる。ミシシッピがブルースなら、こちらはカントリーミュージック。ここで制作されたなかには、ザ・バーズとグラム・パースンズによる大傑作「スイートハート・オブ・ザ・ロデオ」(1968)がある。

 ローリング・ストーンズが「ワイルド・ホーシズ」を捧げたという逸話を持つパースンズは、ルーツミュージックを取り込んだみずからの音楽のことをコスミックアメリカンミュージックと呼んでいたそうだ。

 ゆるやなかグルーブのなかに聴いていると精神が高揚してくる魅力を持つナッシュビル生まれの音楽。ぼくはそれがどこか新型ESと共通しているようにも感じた。

 6代目までは米国を主市場とし日本では売られなかった、いってみれば米国そだちのES。開発者の明確なビジョンを核に、さまざまな市場の要求がうまくブレンドされたのだろう。

 日本車以上ともいえるキャラクターをして「コスミック」という言葉があてはまるような気も。なにはともあれ、いちど乗る価値がある出来である。

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この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。