【目次】
- 「ニセ社長詐欺」とは? 経営者になりすます「手口」
- メールからSNSへ誘導する「ニセ社長詐欺」の流れ
- なぜだまされる? ニセ社長詐欺に使われる「心理的な仕掛け」
- ニセ社長詐欺を見抜くための「チェックポイント」
- 企業が講じておきたい「被害防止策」
- 送金してしまったときの「対応」と「相談先」
【「ニセ社長詐欺」とは? 経営者になりすます「手口」】
■「ニセ社長詐欺」とは?
「ニセ社長詐欺」とは、会社の社長や役員になりすました人物が、社員に業務上の指示を出すふりをして、会社のお金をだまし取る詐欺です。警察庁では「ビジネスメール詐欺」の一種として注意を呼びかけています。
■その「手口」は?
犯人は、インターネット上で公開されている会社のメールアドレスなどに、実在する社長の名前や会社名を使って連絡してきます。「新しいプロジェクトのため」「取引先への支払い」など、もっともらしい業務上の理由を示し、指定した口座への送金を求めるのが典型的な手口です。単に「社長を名乗る人から連絡がくる」だけではなく、実際の仕事の指示を装って社員を動かし、会社の口座からお金を送金させるところに、この詐欺の特徴があります。
【メールからSNSへ誘導する「ニセ社長詐欺」の流れ】
■メールで至急の送金を指示する
ニセ社長詐欺では、社長や役員になりすました犯人が、社員にメールを送り、業務上の指示を装って送金を求めます。「取引先への支払いが必要になった」「新しい案件のために資金を用意してほしい」など、実際の業務でもありそうな理由を示し、「至急」「今日中」などと急いで対応するよう求めるのが特徴です。
メールには実在する社長や役員の名前が使われることもあり、一見すると本物の指示に見えてしまいます。さらに、実在する社長名や会社名が使われるため、一見しただけでは偽の連絡だと気づきにくいのが特徴です。送信者名の表示だけで判断せず、実際の送信元メールアドレスまで確認する必要があります。「社長からの指示だから」と思って急いで対応すると、通常なら経理担当者や上司などが行う確認を飛ばしてしまう可能性があります。金銭に関する指示を受けたときほど、普段の社内ルールに沿って確認することが重要です。
■SNSグループの作成を指示する
メールで接触したのち、「こちらで詳しく説明する」「この件はLINEでやり取りしよう」などとして、LINEなどのSNSグループへ誘導するという手口も報告されています。犯人は、社長になりすましてやり取りを続けたり、社員を別のグループに参加させたりして、信じ込ませようとするのです。
SNSに移ると、メールよりも短いやり取りを重ねやすく、犯人から次々と指示が届くことで、社員が考える時間を奪われることがあります。また、「このグループは今回の案件だけ」「関係者以外には知らせない」などと説明し、周囲に相談しにくい状況をつくる場合もあります。そのうえで、会社の口座情報や残高を尋ねたり、指定した口座への送金を指示したりします。普段とは異なる連絡手段に移るよう求められた場合には、「本当に本人からの連絡なのか」を別の方法で確認することが大切です。
■秘密の案件を装って口外を禁じる
「重要な案件なので、ほかの人には話さないでほしい」「極秘の取引なので、社内でも口外しないように」などと伝え、周囲に相談させないようにする手口もあります。
会社の中では、経営者から「これはまだ公表できない案件だ」と言われれば、社員が秘密を守ろうとするのは自然なことです。犯人はこうした心理を利用し、「ほかの社員には聞かない」「上司にも相談しない」といった状況を意図的につくります。さらに、「社内で話すと情報が漏れる可能性がある」などともっともらしい理由をつければ、社員は不審に感じても、確認することをためらってしまいます。しかし、送金など金銭に関わる指示まで秘密にするよう求められた場合は、特に注意が必要です。
「秘密にしてほしい」という指示そのものを理由に、会社の通常の確認手続きを外してしまわないことが、被害を防ぐポイントになります。
【なぜだまされる? ニセ社長詐欺に使われる「心理的な仕掛け」】
■油断を生む…「社長からの指示だから」
ニセ社長詐欺でまず利用されるのが、「社長」という立場への信頼です。会社の中で、社長や役員から業務上の指示を受ければ、社員が「本当に本人なのか」と毎回確認することは通常ありません。犯人はその心理を利用し、実在する社長の名前や会社名を使って、もっともらしい指示を出します。しかも、「会社の重要な案件」「新しいプロジェクト」など、実際の業務としてありそうな内容を持ち出されると、社員は「社長からの通常の業務指示」と受け止めやすくなります。
つまり、犯人が狙っているのは、社員の「だまされやすさ」だけではありません。普段の仕事で培われた「上司の指示を信頼して動く」という、ごく自然な行動そのものを悪用しているのです。
■本人かどうかを確認しにくい…社長に対する遠慮
普段、社長と直接顔を合わせたり、電話で話したりする機会が少ない社員にとっては、メールやSNSに表示された名前だけで、相手が本当に社長本人なのかを判断するのは容易ではありません。犯人が実在する社長の名前や会社名を使っていれば、なおさらです。「社長からの指示だから」と受け止める一方で、そもそも本人かどうかを確かめる機会が少ないことも、ニセ社長詐欺につけ込まれる要因のひとつといえるでしょう。
■焦りを生む…「至急」という言葉
「今日中に振り込んでほしい」「至急対応してほしい」など、時間的なプレッシャーをかけるのも重要な仕掛けです。本来なら、金銭のやり取りには、上司への確認や経理部門での手続きなど、いくつかのチェックが入ります。しかし、「今すぐ対応しなければ取引先に迷惑がかかる」「社長から直接頼まれたのだから、早く処理しなければ」と思うと、確認よりも目の前の指示を優先してしまうことがあります。
「急いでいるからこそ、いつもの手順を省いてしまう」。犯人は、こうした状況を意図的につくり出し、社員が事実を確認する機会を奪おうとします。
■逃げ道を塞ぐ…「秘密だから」という言葉
「極秘の案件なので、ほかの人には話さないでほしい」といった指示も、社員をだますために利用されます。会社では、経営上の重要な情報をむやみに他人へ話さないことが求められる場合があります。そのため、「秘密にしてほしい」と言われても、それだけで不自然とは感じにくいものです。
ところが、この「秘密」という条件が加わることで、社員は同僚や上司に相談しづらくなります。さらに、SNS上だけでやり取りを続けるよう求められれば、社内の第三者がその指示を確認する機会も減ってしまいます。「誰にも相談しないで」という指示は、単なる秘密保持ではなく、第三者によるチェックを避けるための仕掛けになっている可能性があるのです。
■警戒心を薄める…「頼まれたのは自分だけじゃない」という状況
ニセ社長詐欺では、一人だけに指示するのではなく、複数の社員をSNSグループに参加させるよう求めるケースもあります。警察庁が紹介する手口でも、振込権限を持つ担当者をSNSグループに含めるよう指示される場合があるとされています。複数人が参加していると、社員は「自分だけに届いた怪しい連絡ではない」と感じやすくなります。しかし、グループに複数の社員が参加していても、それだけで連絡の正当性が保証されるわけではありません。
このように、ニセ社長詐欺は「社長への信頼」「緊急性」「秘密」「周囲も関わっているように見せること」などを組み合わせ、社員が冷静に確認する機会を奪っていくのです。
【ニセ社長詐欺を見抜くための「チェックポイント」】
■「至急」「今日中」など、急がせる指示ではないか?
社長や役員からの指示であっても、「至急」「今日中」など、対応を急がせる内容には注意が必要です。特に、通常とは異なる口座への振り込みや、高額な送金を突然求められた場合は、いったん立ち止まりましょう。「急いでいるから確認できない」のではなく、「急いでいるときほど確認する」と意識することが大切です。
■いつもと違う連絡手段を求められていないか?
普段はメールや社内システムで連絡しているのに、突然LINEなどのSNSグループでのやり取りを求められた場合も要注意です。「この件はLINEで」「別のアカウントに連絡して」などと誘導されたら、そのまま信じるのではなく、普段使っている連絡先から本人に確認しましょう。
■送金先や手続きが、いつもの段取りと違っていないか?
「社長からの指示だから」といって、会社で決められている送金手続きまで変えてよいわけではありません。振込先が突然変更されたり、通常必要な承認や確認を省くよう求められたりした場合は、特に注意が必要です。金額が大きい、振込先が新しい、通常とは異なる手順を求められる――。こうした「いつもと違う」が重なったときは、詐欺を疑って確認することが重要です。
■「誰にも相談しないで」と言われていないか?
「極秘だから」「ほかの人には話さないで」など、第三者への相談を禁じる指示も警戒すべきサインです。会社のお金を動かす場合、社内の確認手続きを経るのが基本です。「秘密にするよう言われたから」と、通常のルールまで外してしまわないようにしましょう。
少しでも不自然だと感じたら、別の連絡手段を使って本人に確認すること。これが、ニセ社長詐欺を見抜くための大きなポイントです。
【企業が講じておきたい「被害防止策」】
■送金や振り込みは複数人で確認
ニセ社長詐欺では、社員一人が社長からの指示だと信じて送金してしまうと、大きな被害につながる可能性があります。そのため、送金や振り込みについて、担当者一人だけで判断・処理しない仕組みを整えておくことが重要です。特に、高額な送金や、初めて取引する口座への振り込み、通常とは異なる手続きについては、複数の担当者や上司が確認するルールを決めておきましょう。「社長から直接指示された場合でも、確認手続きを省略しない」と社内で共有しておくことも大切です。
■別の連絡手段を使って本人に確認
メールやSNSで送金を指示されたときは、そのメッセージの中で返信して確認するのではなく、名刺や社内名簿、自分のアドレス帳に登録されている連絡先を使用してください。例えば、「社長からメールで振り込みの指示があったが、本当に社長からの指示なのか」と、本人に直接確認します。犯人がメールやSNS上で社長になりすましている場合でも、別の連絡手段なら、なりすましを見破れる可能性があります。
「本人に確認するのは失礼では」と遠慮せず、金銭に関する指示は確認するのが会社のルール、という意識を持っておくと安心です。
■社内の連絡先や役職者情報を管理
犯人は、会社のホームページなどで公開されている情報や、インターネット上の情報を手がかりに、社長や役員になりすますことがあります。そのため、社内の連絡先や役職者の情報について、必要以上に外部へ公開しないことも予防策のひとつです。ただし、企業情報をすべて非公開にするのは現実的ではありません。公開する情報と、社内だけで共有する情報を整理し、不要な情報をインターネット上に掲載しないよう管理することが大切です。
あわせて、社員に対してニセ社長詐欺の手口を周知し、「社長を名乗る相手から不審な送金指示があった場合は、必ず別の方法で確認する」といった社内ルールをあらかじめ決めておきましょう。
【送金してしまったときの「対応」と「相談先」】
■送金してしまったら…まず連絡すべきは金融機関と警察
指定された口座に送金してしまった場合は、直ちに自社が送金に利用した銀行へ連絡し、送金のキャンセルや組戻しが可能か確認してください。海外口座へ送金した場合、警察庁は資金の回収が非常に困難になると注意を呼びかけています。
同時に、最寄りの警察署へ通報・相談しましょう。犯人から届いたメール、メールヘッダー、SNSのメッセージ、相手のプロフィール画面、振込先口座、送金日時や金額などは削除せず保存します。
■「怪しい」と思ったら相談を
まだ送金していなくても、「社長を名乗る人物から突然、振り込みを指示された」「SNSでのやり取りを求められた」など、不審な点があれば、指示に従わず、社内の担当者や上司に相談しましょう。自分だけで判断するのが難しい場合や、すでに個人情報や会社の情報を伝えてしまった場合には、警察へ相談することもできます。
警察への相談は、緊急の場合は110番、緊急ではない相談は警察相談専用電話「#9110」が窓口です。会社として被害を把握した場合は、関係する金融機関にも速やかに連絡し、被害の拡大を防ぐことが大切です。
詐欺被害については、信じてしまったことを恥ずかしく思い、相談をためらうというケースも発生しがちです。しかし、対応が早いほど被害の拡大を防げる可能性が高くなります。「おかしい」と感じたら、ひとりで抱え込まず、できるだけ早く周囲や専門機関に相談しましょう。
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ニセ社長詐欺とは、社長や役員になりすまし、業務上の指示を装って社員に送金させる詐欺です。こうした詐欺の被害に遭った人からは、「まさか自分がだまされるとは思わなかった」という言葉を聞くことがあります。会社を守るために必要なのは、「だまされない自信」よりも「確認する習慣」。社長からの指示でも、急な送金を求められたら、いったん立ち止まる。別の連絡手段で本人に確認する。ひと呼吸置いた冷静なひと手間が、大きな被害を防ぐ最後の砦になります。
ニュースで見慣れない言葉に出合ったとき、その意味や背景を調べてみることも、大人の教養を広げるきっかけのひとつです。「ニセ社長詐欺」という言葉とともに、その手口や対策も覚えておきたいですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:警視庁・SOS47 特殊詐欺対策ページ「法人を対象とした詐欺(ニセ社長詐欺)に注意!」 /埼玉県警察「ニセ社長詐欺に注意!」 /TOBILA「会社員の4人に1人が「ニセ社長詐欺」のメールを受信 急増するビジネスメール詐欺の手口&アンケート調査レポートを公開」/あいち銀行「「社長」や「役員」になりすましたLINEグループ作成を要求する詐欺メールにご注意ください!」/警察庁「ビジネスメール詐欺に注意」 /独立行政法人 情報処理推進機構「ビジネスメール詐欺(BEC)対策特設ページ」 :

















