イギリス風景画の巨匠ターナーのすごさとは?傑作が多数来日する貴重な機会を見逃さないで!

ロンドン・テート美術館から、「光の画家」ターナーの作品が一挙にやってきます。移ろう光や大気、荒れ狂う海や空だけでなく、産業革命期に発明された蒸気機関車や蒸気船なども描いたターナー。

イギリス絵画史上最も偉大とされる画家が生んだ、革命的な風景画の魅力を、美術ジャーナリストの藤原えりみさんに紹介していただきました。

藤原えりみさん
美術ジャーナリスト
著書に『西洋絵画のひみつ』(朝日出版社)ほかがある。雑誌やWeb媒体などでの執筆のほか、展覧会図録制作にも携わる。現在は一般向けの美術史講座も開催。広い世代に向けた美術教育を担う。

【今月のオススメ】J.M.W. ターナー《グリゾン州の雪崩》

20代後半からイギリスの外へ旅をするようになったターナー。フランス、スイス、イタリアへと足を延ばし、生涯で6回もアルプスを訪れている。本作は、自然が見せる圧倒的な力を描き留めた、比較的早い時期の重要作。

ターナーは、産業革命時に人間の活動が世界を変質させ始めた光景をいち早く描き出した。自然への畏敬の気持ちが、本作にも宿っている。

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J.M.W. ターナー《グリゾン州の雪崩》1810年展示 油彩/カンヴァス テート美術館 Photo:Tate

ターナーは、18世紀末から19世紀半ばにイギリスで活躍した風景画家です。「光の画家」と称された彼の作品を見ると、「光を色に置き換える」ことを印象派よりも先にやっていることに気付くと思います。実際、ターナー晩年の作品は、ボワボワ〜としていて何が描かれているのかわからない、もう、ほとんど印象派、です。

ターナーの「光」への想いが伝わるエピソードがあります。ターナーは、当時イギリスで人気が高かった17世紀の画家クロード・ロランが作品の背景として描いた風景の光に憧れて、何度か彼が活躍したイタリアへ旅をしているんですね。

あるとき、フィレンツェへ行ったら、季節もあったのでしょうが、あまりにも日差しが強すぎてがっかり(笑)。ところがその後、ヴェネツィアを訪れて、「これぞ自分が望んだイタリアの光だ!」と。きっとターナーは、ヴェネツィアの湿気を帯びた光に、ロンドンに通じるものを感じたのだと思います。すっかりヴェネツィアを気に入って、3回も訪れています。

日本では見る機会の少ないターナー作品ですが、今回は、テート美術館から80点以上が来日する大回顧展とのこと。印象派が好きな人、19世紀の美術の展開に興味がある人は、絶対に見ておいたほうがいい、貴重な機会です。展示方法もユニークで、マーク・ロスコやヴォルフガング・ティルマンスら現代作家の作品を併置するそうです。産業革命の時代に自然や社会を見つめ、描いたターナー作品と、現代美術とが並んだとき、いったい何が立ち上ってくるのか。楽しみです。(談)

<Information>テート美術館  ターナー展── 崇高の絵画、現代美術との対話

世界最大のターナー・コレクションを誇るロンドンのテート美術館から、油彩画や水彩画など80点以上を紹介する。「山々の内部へ」「歴史的崇高」「崇高の都市、ヴェネツィア」「荒れた海」といったテーマごとに展示。

会場/国立西洋美術館(東京都台東区上野公園7番7号)
会期/2026年10月24日(土)〜2027年2月21日(日)まで開催

問い合わせ先

国立西洋美術館

TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)

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