あなたは「やめたい!」と思っている習慣はありませんか? 例えば、「夜ご飯を食べすぎてしまう」「猫背を直したい」「スマホを見てつい夜更かししてしまうのを何とかしたい」など……。

改善しようと一念発起したものの、三日坊主になってしまい、長続きしないことって、けっこうありますよね。そのたびに「自分はダメなんだ……」と自己嫌悪に陥り、落ち込んでしまうもの。

また、悪いことだとわかっているのに、ドカ食いする・お酒を飲む・煙草を吸うなどがストレス解消になってしまっているケースも……。本当はやめたいのに、いつまでも「自分にとっては必要なものだ」と正当化していては、やめることはできません。断ち切るために、考えるべきことは以下の3つ。

(1)自分の子どもに身に付けてほしくない習慣
(2)終わった後、達成感ではなく後悔の念を抱く習慣
(3)振り返ったとき、大きな学びを得たと感じることができない習慣

これらのうち、ひとつでも当てはまる場合は、あなたの生活に悪循環をもたらす可能性が非常に高い習慣です。3つの観点から、自分の生活を振り返ってみてはいかがでしょうか?

また、このような悪循環をもたらす習慣を断ち切り、自分にとって望ましい習慣を身につけるためには、一体どうすればいいのか? 作家・編集者・ミニマリストの佐々木典士さんから、負のスパイラルを生む「悪い習慣」を止めるコツを教えていただきました。

意外と簡単な「生活の悪習慣」を断ち切るコツ5選

■1:転機を利用する

何かのタイミングをきっかけにしてみよう
何かのタイミングをきっかけにしてみよう

習慣は、その行動をはじめるきっかけ、「トリガー」がカギとなります。例えば、良い習慣であれば、日記を書くときには、朝食後にコーヒーを飲むことをきっかけにする。悪い習慣ならば、仕事帰り、特に用もないのにコンビニに寄るとお酒を買って飲んでしまう、など。

良い習慣ならば、積極的にトリガーとなる行動をつくる。逆に悪い習慣はトリガーを取り除くで、思い描いた理想の生活へ一歩、前進することができます。

一度、構築してしまった悪習慣を取り除くために、トリガーを一度リセットする方法が「転機を利用する」という方法です。佐々木さんは、病気をきっかけにお酒を断っています。また、失恋をきっかけにモノを手放すようになったそうです。

とはいえ、悪い習慣を断つために、病気になったり、失恋したりすることは難しい……。それでは、ほかにどのような転機があるのでしょうか?

「環境に紐づいた習慣をリセットするために、引っ越しをしてみる。あるいは違う地域や国を旅行してみることなら、楽しく簡単にリセットできます。食習慣を変えるということなら、断食道場に参加してみるのもアリかもしれませんね」(佐々木典士さん)

転機を上手に活用して、生活をリセット。悪習慣をやめるきっかけにしてみてください。

■2:習慣のトリガー&報酬を洗い出す

その習慣によって何を得ているのか?
その習慣によって何を得ているのか?

問題となる習慣のルーティンは決まっています。そこで、まずは先ほど、話題にもあがった習慣のトリガーを見つめ直してみましょう。ポイントは以下の5つ。

(場所)どこにいたか?
(時間)何時だったか?
(心理状態)どんな気分だったか?
(自分以外の人物)他に誰かいたか?
(直前の行動)何をしていたか?

これらのポイントでトリガーを見つめ直したら、次はその習慣によって求めている「報酬」を洗い出しましょう。参考例として、毎日15時に同僚と一緒にチョコチップクッキーを食べる習慣をやめたい、と思った人の話を挙げます。

その人は、仕事の気晴らし、クッキーの糖分、同僚のつながりなど、得ている報酬をひとつずつ見つめ直した結果、仕事の気晴らしに同僚と話をすることが、本当の報酬であることに気がついたそうです。

「ほかのものに置き換えてみるのも、ひとつの手です。タバコの代わりにガムにしたら、タバコを止めることができた、ということもありえます。この場合は『ちょっと口が寂しかった』ので、何かしたかったというのがトリガーになっています。ですので、まずはいろいろと置き換えを試してみることで、本当に求めている報酬が見つかることもあります。やめたい習慣の中に、本当に自分が求めていることは何だろう、と考えてみてください」(佐々木さん)

習慣のトリガーと報酬が明らかになれば、習慣を断つための方法が見つけやすくなりますよね。まずはこのふたつを、徹底的に分析してみてください。

■3:真犯人を探す探偵になる

容疑者をリストアップすることから始めよう
容疑者をリストアップすることから始めよう

「早起きしたい」「お酒をやめたい」――でも、できない! 思い当たる理由はいくつかあるけれど……。それなら、できない本当の理由(真犯人)を、探偵気分で探してみませんか?

まずは、容疑者をリストアップしましょう。早起きができないという容疑者であれば、睡眠時間が十分ではない、寝る前のお酒が眠りを浅くしている、寝具が身体に合っていない、など。いくつかリストアップできるはずです。

容疑者はリストアップできたものの、犯人を特定する決定打が見つからない。そんなときはどうすればよいのでしょうか。

「日記をつけてみるといいと思います。日記をつけていると、同じような共通点が見つかることがあるんです。『今日は特別だから……』と、そのとき思いついた言い訳を書いておくと、毎回毎回、同じこと言ってるな、など(笑)。この自分データが犯人特定のヒントになるはずです」(佐々木さん)

そうはいっても、毎日日記を書くことは難しいですよね。佐々木さん曰く、「良い文章を書こうとしなくてもいい。日付を書くだけでもいいので、続けてみてください」とのこと。慣れてきたら、日付だけでなく、今日食べたもの、やったこと、思ったことなどを書くといいかもしれません。

■4:アイデンティティを言い訳にしない

自分で自分自身を決めつけないこと
自分で自分自身を決めつけないこと

「私は夜型人間だ」「お酒がないと生きていけない人間なんだ」

このように自分のアイデンティティを決めつけてしまっていませんか? 冷静に振り返ってみれば、「自分は〇〇な人間だ」という決めつけに、客観的な根拠はないもの。そう、思い込みから生まれたアイデンティティは、変えることができるんです。

「早起きができない、お酒がやめられない場合のデメリットを考えてみてください。このデメリットはふわっと、何となく『健康にいいから』というものではなく、できる限り具体的に。デメリットをきちんと把握することで『やらなくちゃ!』という気持ちが生まれます」(佐々木さん)

当たり前だと思っていたことを疑って、デメリットをとことん考えてみる。これも、悪い習慣を断つコツなんです。

■5:やめたい習慣はハードルを上げる

簡単にできることから始めることが重要
簡単にできることから始めることが重要

ネット通販でついつい買いすぎてしまうこと、ありませんか? なぜ、わかっているのにやめられないのでしょう。

大きな原因に、ネットショッピングのハードルの低さがあります。店に行くことなく、クレジットカードの情報を登録しておけば、ワンクリックで買い物完了。このハードルの低さが“つい”を生み出してしまうのです。

「テレビがあればテレビを見てしまう。SNSもアプリで見ると、簡単に見ることができ、無意識に習慣になってしまうので、スマホからアプリを削除して、ウェブからわざわざ毎回ログインして見ています。そもそもテレビをなくしてみる、SNSはアプリでなうブラウザで閲覧するなど、意志の力でやめたい習慣を抑えるのではなく、仕組みづくりが大切なんです」(佐々木さん)

通販であれば、毎回ログアウトし、ワンクリックで買えないようにする。そうやってハードルを上げることで、習慣を断つきっかけづくりができるはずです。逆に、自分が続けたい習慣はハードルを下げてみてください。習慣を断つ、習慣を身に付けるために“ハードル”は大事なキーワードになりそうですね。

「悪い習慣から脱却できないのは、自分がダメで、意志が弱いからだ……」と嘆く必要はありません。意志は環境と心理状態でいくらでも変化してしまうもの。だからこそ、大事なのは意志ではなく、仕組みづくりなのです。これまで諦めていた理想の生活、習慣を断つ仕組みづくりで、手に入れてみてください!

佐々木典士さん
作家・編集者・ミニマリスト
(ささき ふみお)出版社勤務を経た後、現在は作家・編集者・ミニマリストとして活躍。著書にミニマリズムを紹介した『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』(ワニブックス)がある。他にWebマガジン『WANIBOOKOUT』にて「ぼくは死ぬ前に、やりたいことをする!」、月刊誌『むすび』にて「半径5mからの環境学」を連載中。
『ぼくたちは習慣で、できている』佐々木典士・著 ワニブックス刊
この記事の執筆者
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WRITING :
冴島友貴
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