富山県高岡市で鋳造を手がける能作。上質で美しく、使い勝手にも優れた能作の錫製品は、普段使いだけでなくギフトにもぴったりです。
そこで今回は、能作の広報・能作千春さんにセレクトして頂いた錫製品と、おすすめの使い方をご紹介します。また、錫の魅力やお手入れ方法も併せて伺いました。錫のグラスは、飲み物のおいしさを引き出したり、冷たく保ってくれたりする効果があるのだとか。まだまだ冷たい飲み物が手放せないこれからの季節に重宝すること間違いなしです。
能作――400年の鋳造技術が生んだ「曲がる」錫
400年前より鋳造の街として発展を遂げてきた富山県高岡市。能作は1916年の創業以来、高岡の鋳造技術を継承した真鍮製の鋳物(いもの)製造を手掛けてきました。2001年には真鍮製の風鈴を発売。生活になじむデザインと真鍮ならではの澄んだ音色が話題を呼び、能作の名を全国に響かせることになります。
その後、非常にやわらかいため鋳造には向かないとされている、純度100%の錫を使用した製品開発に着手。能作はこの錫の難点を逆手に取り、自由に形を変えられる100%錫の器「KAGO(カゴ)」を生み出しました。KAGOをはじめとする能作の錫製品をきっかけに、高岡の鋳物づくりは世界から注目を集めるに至ります。
飲み物をまろやかに! 錫製品の活躍シーンはさまざま
能作の錫製品が支持されている理由は、デザインの美しさだけではありません。錫には柔軟性のほか、「飲み物の味を変化させる」「熱伝導率のよさ」「抗菌作用が高い」という性質があるそうです。
飲み物の味をおいしく変化させる?
「普段と同じビールなのに、錫のグラスに注いだらおいしく感じた」という経験がある方もいるのでは? これは錫が飲み物をまろやかにする性質を持っているためだそうです。ワインや日本酒のほか、さらにジュースもエグみと酸味が落ちてマイルドに。牛乳や水でも味の変化は感じられるのだとか。なぜこの作用が起きるのか、詳しい理由は現在研究中だそう。そんな不思議さも錫器の魅力かもしれませんね。
熱伝導率がよく、すぐ冷えて、すぐ温まる
錫は熱伝導率が非常に優れています。例えば、錫の器を冷蔵庫で1〜2分冷やしてから飲み物や料理を入れると、一瞬でよく冷えて温度を長時間キープしてくれます。冷たい料理が増える夏場のテーブルウエアとして大活躍してくれるはず。一方で、熱いものを入れた場合には器ごと熱くなるので火傷には十分ご注意ください。
抗菌作用が高い
「錫を入れた水は腐らない」と伝えられるほど抗菌作用が強く、錆びにくいことも特徴。例えば、錫製の花器に切り花を生けると、切り口に雑菌がつかないため美しさを長く楽しめるといいます。
これらの優れた特徴を持つ錫製品が活躍するシーンはさまざま。長く生活を共にできる逸品です。
能作の錫の器。普段使いにもギフトにも。
ここからは能作の広報・能作千春さんにセレクトして頂いた能作の錫器をご紹介します。錫は金・銀に次いで高価な金属でもあるそう。上品な高級感もあるので、特別な人へのギフトにもおすすめです。
自在に「曲がる」錫。使い方はあなた次第!
形を変えられる能作の「曲がる」シリーズは、能作の錫製品の中でもプレゼントとして選ばれることが大変多いのだとか。好みの形に変えられるので、贈られた側もうれしいですよね。
・KAGOースクエアー
KAGOは引っ張ったり曲げたりすることでカゴ状になる、「曲がる」シリーズの人気商品。スクエアはシンプルな四角形ですが、中身を包むようにくるりと曲げたり、高さを出して華やかさを出したりと自由なアレンジを楽しめます。
フルーツやお菓子入れるバスケットとして使えるほか、花瓶を入れて花器のようにすることも。サイズによりデザインは異なり、売れ筋はLサイズだそうです。
・ロータス
連なった円の模様が美しいロータス。縁を立ち上げれば小物入れに、コップと組み合わせて花瓶にしたり歯ブラシやペンを立てるスタンドにしたり。上品な銀色はどんなインテリアにも似合うので、そのまま置いたり壁掛けにしても素敵です。
夏にぴったりなテーブルウエア
まだまだ続く暑い日にしつらえたい、涼を運ぶテーブルウエアをご紹介します。
・ビアカップ
重厚感のあるビアカップは、お酒の時間をますます味わい深く引き立てるアイテムです。晩酌の直前、このビアカップを冷蔵庫に入れればたちまちキンキンに。氷を入れなくてもカップの周りに水滴がにじむほどしっかり冷たくなります。砂で型を造型する技法により生まれる、カップ内側の砂の鋳肌(いはだ)感がビールの泡をキメ細かくする効果もあるそうです。もちろんアイスコーヒーやジュース用にしてもOK。
・平皿
シンプルながらも全面に繊細な模様が施された能作の平皿は、和食にも洋食にも映える優れもの。お皿をあらかじめ冷蔵庫で冷やしてから料理を盛りつけると、冷たい料理がぬるくなることなくおいしく頂けます。サラダやお刺身、フルーツの盛り合わせのほか、アイスクリームを添えてデザート皿として使用してはいかがでしょうか。
お手入れの方法とNG事項
落としても割れない、錆びにくい錫製品は大切に使えば一生もの。錫製品のお手入れ方法と、NG事項を教えていただきました。
特別なお手入れは不要。「重曹」で磨けばツヤが復活
実は錫器のお手入れはとても簡単。使い終わったら、やわらかいスポンジと中性洗剤で洗うだけでOKだそうです。自然乾燥でも問題ありませんが、水滴が跡になることがあるので気になる場合は水気を完全に拭き取ってからしまってください。
光沢が鈍くなったら、重曹と中性洗剤を使って以下の手順で磨いてみましょう。ツヤのある光沢が取り戻せます。
【お手入れ手順】
■1:粉末状の重曹に中性洗剤を少量加え、練ってペースト状にします
■2:ペースト状にした重曹を錫器につけ、やわらかいスポンジで円を描くようにして磨きます
■3:全体をムラなく磨いたら中性洗剤で洗い、しっかり乾かしてから保管してください
ぐい呑や小鉢など、能作には内側が金箔貼りになっている製品もあります。金箔部分は重曹を使ったお手入れは避けて、スポンジと中性洗剤で洗うようにしてください。
冷凍庫には入れないで!錫製品の取り扱い7つのNG事項
扱いやすい錫製品ですが、傷や割れ、溶解、変質を招く可能性のある以下の取り扱いはNGです。
【錫製品の取り扱い7つのNG事項】
■1:たわしなど固いもので洗うこと
■2:食器洗い機・乾燥機にかけること
■3:オーブン・電子レンジにかけること
■4:火気の近くに置くこと
■5:冷凍庫に入れること。また、冷蔵庫に長時間入れること
■6:金箔貼りの製品を長時間水に浸すこと
■7:「曲がる」シリーズにおいて、一点に過剰な力を加えること。頻繁に形を変えて金属に負担をかけること
ビアカップや食器を冷やす時は、冷蔵庫に数分入れるだけで十分。よく冷やそうと冷凍庫に入れると「ティンペスト」と呼ばれる、錫が崩れてしまう現象が起こる場合があります。万が一、傷や亀裂が入ったり、変質してしまったりすると元に戻すことは難しいそうです。この7つのポイントをしっかり守って、末長く愛用したいものですね。
今回ご紹介したほかにも、能作には魅力的な錫のアイテムがたくさんあります。あなたや贈った方の生活に馴染み、日々活躍してくれる一品がきっと見つかるはずです。
問い合わせ先
- 能作
- オンラインショップ
- 本社FACTORY SHOP
- 営業時間/10:00〜18:00
TEL:0766-63-0002 - FAX:0766-63-5510
- 住所/富山県高岡市オフィスパーク8-1
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- EDIT&WRITING :
- 大村実樹(東京通信社)