暑い時期に食べたくなるかき氷。ここ数年で進化を続け、厳選素材を使ったかき氷やふわふわ食感のかき氷、ケーキのような見た目のものまでバリエーション豊かに展開しています。しかしスプーンを入れた途端、雪崩が起きて上手に食べられなかった…という経験もあるのでは? 

そこで今回は、今年に入り7月の時点で食べた数はすでに900杯(!)にもなるという、「かき氷の女王」こと原田麻子さんにかき氷をおいしくスマートに食べるためのポイントを伺いました。最新のかき氷事情や、さらなるおいしいかき氷に出会うためのポイントもご紹介。かき氷の知られざる攻略方法が満載です!

2018年のトレンドは? 最新事情をチェック

年間1,800食のかき氷を食べ歩き、ご自身も東京・中野新橋でかき氷専門店「氷舎mamatoko(ヒョウシャママコト)」を営む原田さん。まずは最近のかき氷のトレンドを伺います。

デコラティブからシンプルへ。「原点回帰」しつつある

昨年まではパフェやケーキのようなデコラティブなかき氷が流行りましたが、今年は原点回帰の傾向にあるといいます。

「見た目のインパクトや、今まで使われなかった素材を使うような独自性で勝負するものより、上質な氷と素材にこだわったシロップでつくるシンプルなかき氷が今年は注目されています」(原田麻子さん、以下同)

上質な氷、と聞いて思い浮かぶのは天然氷。しかし近年では、かき氷専門店の多くが製氷工場でつくられた純氷(じゅんぴょう)を使うようになっているそうです。一般的に、48時間以上かけてつくられる純氷はゆっくり溶けて舌触りもなめらか。天然氷にも劣りません。

「以前は天然氷を使っていた店も純氷へシフトするようになっています。数年前に天然氷が流行って以来たくさんの店が使うようになり、供給が追いつかなくなったためです。また、全国で数軒しかない蔵元が手間をかけてつくる天然氷はコストがかかります。『うちのかき氷は天然氷でなければ実現しない!』というこだわりを持った店でない限り、あえて使うものではないんです」

かき氷のトレンドは東京からスタートし、少し遅れて全国に広まるそう。そのため関西ではデコラティブなかき氷も流行中なのだとか
かき氷のトレンドは東京からスタートし、少し遅れて全国に広まるそう。そのため関西ではデコラティブなかき氷も流行中なのだとか

かき氷は「ふわふわ」が絶対とは限らない

ここ数年は「ふわふわ」をうたうスイーツを多く見かけますよね。かき氷もふわふわ食感のものが人気を集めていますが、シャリっとしたかき氷ならではの価値があるといいます。

「店はシロップによって『ふわふわ』と『シャリシャリ』の削り方を変えているんです。例えばクリーム系のかき氷ならふわっと削った氷の方がおいしいですが、フルーツ系のさらさらとしたシロップならシャリっと削った方が相性はいいんですよ」

ちなみに、ふわふわになるように細かく削った氷ほど溶けやすいのだとか。「では、ふわふわのかき氷は急いで食べなくてはいけないのでは…」と思った方はご安心を。原田さん曰く、その心配はいらないそうです。

「かけるシロップやソースによっても溶けやすさは変わります。一般的にお醤油や塩、アルコールを使ったものなどは溶けやすいですね。店側は溶けるペースも考慮して氷を削っているため、慌てて食べなくても大丈夫!」

溶けるペースを調整するため、削り方にも配慮がされているんです
溶けるペースを調整するため、削り方にも配慮がされているんです

さらにおいしくスマートに!かき氷を食べるポイント6つ

ここからはかき氷をこぼさずにスマートに食べる方法や、さらなるおいしいかき氷に出合うためのポイントを伺いました。原田さんによると「通は冬にかき氷を食べる!」のだそうです。その理由はなんなのでしょうか。

■1:「キーン」としたくないならば、人気店へ

かき氷といえば、一気に食べて頭が「キーン」と痛んだことがあるのでは? この痛みは口の中の温度が急激に下がることで神経を刺激したり、頭の血管に負担がかかったりするため起こるとされています。できれば痛みに邪魔されることなく、スマートに頂きたいものですよね。原田さんによると、行列ができるようなおいしいお店を選べば、頭が痛くなる心配は少ないそうです。

「おいしいといわれる店は氷を削る技術が高く、氷の温度を調整しています。冷凍庫から出してすぐの氷の温度はマイナス20度から30度、おいしい氷を削れる温度はマイナス5度から8度くらい。削りにこだわる店は氷を適温にしてから削るため、体は冷えにくく、頭が痛くなりにくいんです」

また、削る技術が高いお店ほど薄い氷がつくれるので、同じひと口でも体に入る氷の量が少なく頭痛が起こりにくいのだとか。かき氷で頭が痛くなるというのは過去の話。きちんと氷を削っているお店なら、少しずつ食べるなどのコントロールはしなくて大丈夫です。

■2:人気店は朝に行く&事前に整理券をチェック

人気店ともなれば、長蛇の列を覚悟しなくてはなりません。夏の混雑する時期に確実に食べたいのであれば、気合を入れて早起きして並んでみましょう。

「朝なら気温もまだ高くないですし、何より行列店はシロップや材料がなくなり次第営業終了、ということもよくありますから早目の行動が吉。そのレベルの店では、整理券を配布している場合もあります。町歩きも楽しみたい方やお子さん連れの方も、時間の予想ができるので整理券があるのかチェックしてみるといいですよ」

最近では、サイトやSNSで混雑状況や整理券の情報をリアルタイムで発信しているお店もあります。せっかく来たのに食べ損ねた…なんて事態を避けるべく、情報は事前に調べておきましょう。

またこの時期に並ぶ場合は、暑さ対策も忘れずに。

「お手洗いが近くなるのが心配だったり、順番が近づくと『もう少しだから』と我慢したりと、水分を摂らない方もいるようです。でも、水分や塩分補給は必ずしてくださいね。列を少しだけ抜けたい場合には前後の方にひと言かけてみると、快く協力してくれるものですよ」

お店に行く前に整理券の情報や営業時間をチェック
お店に行く前に整理券の情報や営業時間をチェック

■3:かき氷は鮮度が命。迷わず、来た人から食べるべし

家族や友人とかき氷店に行ったとき、全員分の注文がそろうまで…と待っていると、早く来た人のかき氷からどんどん溶けていってしまいますよね。自身でもお店を営む原田さんは「ぜひサーブされた方からすぐに食べて!」と話します。

「どんな料理にもいえることですが、かき氷はできたてが一番おいしいです。日本では食事は全員分のオーダーがそろうまで待つ文化がありますが、かき氷は来た順から食べるべきだと思います。ラーメン屋では、麺が伸びてしまうとおいしくないので来た人から食べますよね。かき氷も同じです!」

可愛らしいかき氷を頼むとSNSにアップしたくなりますが、撮影に夢中になりすぎるのも少しもったいないかもしれません。

「撮影に時間をかけすぎると、食べるときには本来のおいしさではなくなっています。溶けきらないうちに食べ終わるのが、最後までかき氷をおいしく楽しむコツ。急ぐ必要はありませんが、お店側も心を込めて氷を削っているのでおいしいうちに味わってください」

並べて撮りたい気持ちをぐっと抑え、出来立てのおいしさを味わってみては?
並べて撮りたい気持ちをぐっと抑え、出来立てのおいしさを味わってみては?

■4:山盛りのかき氷。こぼさず食べきるコツは、「外側から内側へすくう」こと

山盛りのかき氷、食べ進めていくうちに崩れてしまいキレイに食べられないことも。そこで原田さんに、こぼさずスマートに食べる方法を教わりました。

「中から外にすくうと崩れてしまう原因に。基本的にはかき氷は頂上から食べていくといいですね。まず真ん中から食べて、くぼみが出来たら側面の氷をスプーンで外から中へ落とすように食べ進めていくと、こぼさずきれいに食べられますよ」

原田さんが食べ方をレクチャーしてくださいました。今にも縁からこぼれそうな山盛りのかき氷!
原田さんが食べ方をレクチャーしてくださいました。今にも縁からこぼれそうな山盛りのかき氷!
はじめにスプーンを入れるのは、かき氷の頂上部分
はじめにスプーンを入れるのは、かき氷の頂上部分
上から食べ進めてると、中央にくぼみができあがります
上から食べ進めてると、中央にくぼみができあがります
中央にできたくぼみに側面の氷を落とすように、外側から内側へスプーンを動かしましょう。これでこぼさずに完食できます
中央にできたくぼみに側面の氷を落とすように、外側から内側へスプーンを動かしましょう。これでこぼさずに完食できます

■5:お代わりもOK! ひとりで2、3杯は当たり前

かき氷を食べきった後、1杯では満足できなかった経験はありませんか。たくさん頼むのはちょっと気がひけるかもしれませんが、原田さんによるとかき氷店で2杯以上注文している人は珍しくないのだそう。

「うちのお店にいらっしゃるお客さまが注文するかき氷の平均は2.6杯です。追加注文はできないお店もありますが、たいてい注意書きがあるかオーダーの時点でその旨を教えてくれますよ」

どれを食べようか目移りしたら、周りの目を気にせずに2杯以上頼んでも大丈夫。いろいろなかき氷を堪能してくださいね。

■6:通は冬に食べる! 寒い時期こそ、かき氷屋に行くべき

「かき氷本来のおいしさを堪能したいのであれば、夏より冬が狙い目」と原田さん。繁忙期の夏よりもお店側に余裕があるため、削りにこだわったいっそうおいしいかき氷を味わえるのだとか。

「気温が低い冬は氷を薄く削って出せるため、夏とは口当たりが変わってきます。溶けきる前に食べることもできますよね。冬ならぽってりしたクリームをのせても氷が耐えるので、リッチなデザート感覚のメニューが多く登場するんですよ」

また冬のメニューにこそ、お店のオリジナリティーが出るそうです。

「秋冬に来るようなお客さんは、ずば抜けたかき氷好き。いろいろなかき氷を食べてみたいという意欲がある方が多いので、店としても尖ったメニューに挑戦しやすいんです。またオフシーズンの方がひとつの商品に開発の時間がかけられて、店の個性が出しやすい。専門店渾身のかき氷は、冬にこそ食べられると思います」


暑い時期はもちろんのこと、冬はさらに趣向を凝らした格別のかき氷と出合えるようです。ただ、フルーツ系のメニューはその果物が旬の時期に食べるのが一番だと原田さんは言います。都内には通年営業のかき氷専門店が沢山あります。ぜひ、自分の好みにあったかき氷を探しに出かけてみてはいかがでしょうか?

問い合わせ先

  • 氷舎mamatoko(ヒョウシャママトコ)
  • 営業時間/月・火・木 14:00~19:00(L.O.18:30)、土・日 13:00~18:00(L.O.17:30)
    ※早仕舞い・不定休あり
  • 住所/東京都中野区弥生町3-7-9 メゾンモンターニュ
原田麻子(はらだ あさこ)さん
1983年生まれ。高校時代から読者モデルとして多数のストリート雑誌で活躍。大学卒業後は、新聞記者に。2016年、かき氷好きが高じて、「氷舍mamatoko(ヒョウシャママトコ)」をオープンさせる。テレビ番組『マツコの知らない世界』では、かき氷のスペシャリストとして2回の出演を果たす。自身のインスタグラム@achakokoでは、毎日のかき氷日記を更新中。
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
石水典子
EDIT&WRITING :
大村実樹(東京通信社)