1990年代に学生時代を過ごした私にとって、ヴィンテージジーンズは熱烈な憧れの対象だった。しかしあたりまえのように10万円を超えるその価格にはとても手が出ず、手頃なレギュラータイプの古着や復刻モデルでお茶を濁している間に、ブームは沈静化。しだいに私の関心も、ジーンズからは離れていった。
復刻ではない正真正銘のヴィンテージデニム
現在は入手困難! 1937年モデルの『XX』
それから20年近くの年月が流れ、私もいっぱしにビスポークで洋服をつくるような年齢になった。あるときミラノのサルトリア「ラッザリン」で仕立てたネイビーブレザーにジーンズを合わせたくなり、自前のワードローブを探してみたのだが、驚いたことに納得できるモノが1本もない!
近年流行りのストレッチジーンズや’80年代以降につくられた安価な古着などでは、職人が手縫いで仕立てたビスポークジャケットの存在感と確固たる美意識には、到底太刀打ちできるはずもなかったのだ。慌てて10数年ぶりにヴィンテージショップに駆け込み、リーバイスが’71年まで生産していた『ビッグE』と呼ばれるモデルを購入。かなりダメージの多い個体だったが、10代の頃夢にまで見た美しいブルーの縦落ちは、ミラノで選んだ年代ものの生地と見事にマッチした。
しかし何事にも、上には上がある。ジーンズなら、’66年までつくられていた通称『XX』、なかでも’37年から’41年につくられていた、’37年モデルが最高だ。背面のバックルバックはベルトレスパンツの要領でドレスシャツとよく似合うし、味わい深く朽ちた革パッチは、足元にビスポークの茶靴を合わせたときのマリアージュが絶品。そして『XX』特有のドラマチックなコントラストを描くブルーの縦落ちは、サヴィル・ロウのビスポークジャケットにも負けない深みと迫力がある。確かに100万円を超える現在の相場には怯んでしまうが、「究極」に似合うのは結局のところ「究極」だけ。つまりよいものを知り尽くした大人の男にこそ、ヴィンテージジーンズはふさわしいのだ。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2015年冬号 時を超えた名品たちより
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- クレジット :
- 撮影/戸田嘉昭(パイルドライバー)構成/山下英介(本誌)