浴衣は日本ならではの夏の風物詩。お祭りや花火大会に浴衣で参加すれば、気分も上がりそうですよね。ただ、着方がだらしなかったり、所作がふさわしくなかったりすれば、せっかくの浴衣の魅力が半減してしまいます。

そこで、今回はイメージコンサルタント、マナー講師の瀬尾姫民さんから、浴衣を着るときのNGマナーを教えていただきました。浴衣の着こなしでのNGを5つ、浴衣着用時の所作でのNG5つ、合計10のポイントをご紹介します。

浴衣の着こなしでのNGマナー5選

「左前はNG」は知っていても、浴衣の着方自体に自信がなければ、お店で着付けをしてもらうといいでしょう。ただその場合でも、お店の人に完全にお任せするのではなく、自分でも最低限の知識を身につけておいたほうが、より安心ですよね。下記5つのNGは押さえておきましょう。

■1:派手なアクセサリーをつける

和のアクセサリー
和のアクセサリー

和装が日常的だった頃には、ピアスやネックレスといった横文字のアクセサリーは存在しませんでした。また、浴衣はそれ自体が華やかな装いなので、さらに派手なアクセサリーをつけると過剰な演出になってしまいます。

「浴衣は衿合わせがポイントですので、ネックレスの着用はNGです。大ぶりのピアス、揺れるピアスも避けましょう。浴衣の着用時は、洋装用のアクセサリーはつけないほうがおしゃれです。アクセントが欲しいときは、和装用の髪飾り、かんざし、帯止めにこだわってみてはいかがでしょう? 腕時計も、できればしないほうがいいでしょう。浴衣には、懐中時計をおすすめします」(瀬尾さん)

浴衣の着用時には、和装ならではのおしゃれを楽しみましょう。

■2:ワイヤー入りのブラをつける

アクセサリーだけでなく下着も、洋装のときと同じというわけにはいきません。特にワイヤー入りブラは、バストに立体感が出て、浴衣が着崩れるおそれがあります。

「浴衣には和装用の下着がベストでしょう。和装用の下着をお持ちでない場合は、スポーツタイプの下着がおすすめです。スポーツタイプの下着ならラインがすっきりするので、浴衣を美しく着こなすことができます」(瀬尾さん)

なかなか浴衣を着る機会なんてないし、わざわざ和装用の下着を買いそろえるのは……という人は、スポーツタイプの下着で代用しましょう。

■3:衣紋を抜きすぎたり、詰めすぎたりする

正しい衣紋の抜き方は?
正しい衣紋の抜き方は?

衣紋(えもん)とは、後ろ襟のこと。うなじは浴衣美人の象徴ですよね! 実はここをフワッとさせることを抜くと言うのですが、やりすぎはNG。

「衣紋を抜く目安は、にぎりこぶし1個分です。抜きすぎると野暮ったく見えますが、逆に詰めすぎても窮屈な感じがします」(瀬尾さん)

衣紋は胸元の衿を引っ張ることで調整できます。鏡を見ながら、にぎりこぶし1個分にしましょう。

■4:衿が開きすぎている

ただし、衿の調整も注意が必要です。

「衿合わせは、のどのくぼみを目安にしましょう。開きすぎると着崩れしやすく、さらに衿が開いていくおそれがあります」(瀬尾さん)

後ろ(衣紋)はにぎりこぶし1個分、前はのどのくぼみに合わせる。この基準をしっかり押さえておきましょう。

■5:着丈が長すぎたり短すぎたりする

浴衣の場合、裾は着丈と呼ばれます。この着丈にも適切な長さがあるのです。

「着丈が長すぎると歩きにくいですが、逆に、短すぎるのも粋ではありません。くるぶしあたりを目安にしましょう」(瀬尾さん)

待行く浴衣美人の着こなしをチェックしても、1~5のNGに該当してしまっているケースが意外と多いもの。人のふり見てわがふり直せ……ではありませんが、まずは上記5つのマナー違反をしないように注意しましょう!


浴衣を着ているときの所作のNGマナー5選

洋装でも和装でも丁寧な所作を心がけたいですが、とりわけ浴衣など和装では、たおやかさがポイント。普段の洋装と同じつもりでいると、がさつに見えてしまうこともあるので注意しましょう。

■6:姿勢が悪い

浴衣での美しい立ち方、歩き方とは?
浴衣での美しい立ち方、歩き方とは?

せっかく美しい浴衣を身につけていても、姿勢が悪いと台無しになってしまいます。

「浴衣を着たときには、背筋を伸ばしてデコルテをひろげるようにイメージすると、立ち姿が美しく見えます。アゴはやや引いたほうが、楚々とした印象に。両手はお端折りのあたりの、自然な高さでそろえましょう。

指をそろえるのは大事ですが、ピンとまっすぐ伸ばすよりも、やや丸みを帯びたほうが、やわらかい印象になります。足元は内股ぎみにします。右、左どちらでも結構ですので、片足を半歩ほど引いた状態にしましょう」(瀬尾さん)

とくに足元は洋装のときと異なるので要注意。歩くときは内股をキープし、すり足で一歩を小さく小さくするのがポイントとのことです。

■7:椅子に深く腰掛ける

お店や乗り物で深く腰掛けると、せっかくの帯がつぶれてしまいます。やや浅めに腰掛けるようにしましょう。また、足は前に投げ出さず、心持ち引きぎみにして、立っているときと同様、片足を半歩ほど引いた状態にすると、美しく見えます。

■8:腕を上げるときに袂(たもと)を押さえない

腕を露出させないよう要注意
腕を露出させないよう要注意

浴衣を着ているときには、なるべく肌を露出させず、しとやかな雰囲気に見せるポイント。この点、電車でつり革を握ったり、携帯電話を操作したり、飲み物を飲んだりする際に、腕が丸見えになるのはあまり好ましくありません。腕を上げる動作では、反対側の手で袂を軽く押さえて、腕を露出させないようにしましょう。

■9:食事中に腕まくりする

飲食店でのふるまいにも要注意
飲食店でのふるまいにも要注意

浴衣で食事をするときに洋服のときと同じ感覚でいると、何かの拍子に袂が引っかかってグラスを倒したり、あるいは、袂をソース等で汚してしまったりするおそれがあります。

ただ、前述の通り、浴衣では肌の露出をできるだけ避けたいので、袂がじゃまだからといって、腕まくりをするのも望ましくありません。そそうをしないように、テーブル上で腕を伸ばす際は、袂を軽く押さえるようにしましょう。

■10:うちわや扇子をバタバタあおぐ

うちわのあおぎ方もおしとやかに
うちわのあおぎ方もおしとやかに

今年はことさら暑さが厳しいので、うちわや扇子でついバタバタとせわしなく、あおぎたくなってしまうかもしれません。でも、隣の人に風がいくほど、激しいあおぎ方はNGです。

うちわや扇子は自分の顔のすぐ下で、軽くゆっくりあおぐにとどめましょう。また、袂に扇子をもってきて、腕の下側から袂のなかを小刻みにあおぐようにすると、浴衣の内側に風を呼び込むことができます。

浴衣を正しく着用するだけでも美人度はアップしますが、所作や行動においても、普段との違いを意識すれば、よりエレガントに見えます。品格ある大人の女性たるもの、浴衣を粋に着こなして夏のイベントを堪能しましょう。

瀬尾姫民さん
マナー講師
(せお ひさみ)Seo Total Academy代表。一般社団法人日本プロトコール&マナーズ協会認定サロン。1993年イメージコンサルタント資格を取得。2005年Seo Total Academyを設立。カラー、ファッション、ブライダル、プロトコール&マナーの分野において個人及び企業向けコンサルティング、セミナー、研修、育成を行う。ホテルナゴヤキャッスル主催キャッスルアカデミー「トータルビューティーレッスン」や主催するエレガントマナー講座、和の作法&テーブルマナーレッスンも毎回キャンセル待ちと好評。ブライダルやデパートイベントのプロデュース、TV出演、人気女性誌での掲載など多分野で活躍する美のスペシャリスト。『なごやの冠婚葬祭』監修。著書に『お食事から身につける美しい日常』がある。Seo Total Academy
この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
2018.10.23 更新
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
中田綾美