仕事や人間関係で嫌なことがあったとき、あなたはどうしていますか? SNSで愚痴をこぼす、身近な人に聞いてもらう、日記をつけるなど、人によって気持ちを落ち着ける方法はさまざまだと思います。

ただ、そのやり方次第で効果は大違い。どんなに楽になりたいと思っていても、モヤモヤがまったく取れないこともあります。しかし適切な対処法を行えば、自己肯定感が高まるきっかけとなったり、今まで以上に前向きになれたりできるのです!

今回は、精神科医の川野泰周さんの著書『人生がうまくいく人の自己肯定感』から、すぐに気持ちが前向きになる3つの方法をご紹介します。心のわだかまりを作る前に習慣にして、ストレスのない毎日を送りましょう。

嫌な気持ちが一気に吹き飛んで「自己肯定感も高められる」3つの方法

■1:「中道」の精神性を持っている相手に、不平不満を吐き出す

頭ごなしの対応をする人に愚痴を言ってはダメ!
頭ごなしの対応をする人に愚痴を言ってはダメ!

愚痴や不平不満を抱えているとき、人はどこかに吐き出したくなるものです。心にため込むのはストレスのもとですし、愚痴が共感を呼んで、友人と盛り上がれることも。

でも、不平不満をただまきちらすだけでは、生産性がありません。川野さんによれば、愚痴も吐き出し方によっては自己肯定感が高まるのだそうです。大事なのは、どこに(誰に)対しては吐き出すか、というその一点。

では、どんな相手に吐き出すのがいいのでしょうか? それは、的確にフィードバックを与えてくれる人だそう。

「そうなんだ。こういう不満があるから、怒っているのね」などというふうに、どんなところに不満を抱いて(怒って)いるかという気づきを与えてくれて、さらに気持ちをわかってくれた、という安心感と喜びも得られる、そんな相手です。

相手のことも自分のことも同等に大事であるという、仏教の「中道」の精神を持った人を相談相手に選ぶといいそうです。年齢が上とか下とかは関係なく、少しでも「中道」の精神を感じる相手を選びましょう。

そんな相手から、「こうしたらいいんじゃない?」とアドバイスをもらえると、怒りや愚痴から解放され、相手の言葉を受容できます。安心感と気づきによって素直になった心が、相手のアドバイスを受け入れる体勢になっているのです。この受容が、自己肯定感を高めるキーワードになると、川野さんは言います。

逆に選んではいけないのが、「そんなことで愚痴ってるの? つまらないことで怒ってるんじゃないわよ」といったように、頭ごなしの対応をしてくる人。

叱咤激励とも取れますが、自己肯定感が低い場合、こういった対応をされると、安心感も気づきも得られず、ただ非難されているように感じて、心が縮こまってしまうだけ。相談相手は、自分を尊重して受け入れてくれる「中道」の人物を選びましょう。

■2:嫌な感情を詳細に書き出して「ポジティブなワード」に置き換える

ポジティブな言葉3:ネガティブな言葉1でつらい経験を書き出す
ポジティブな言葉3:ネガティブな言葉1でつらい経験を書き出す

何だか心がモヤモヤするとき、気持ちを書き起こしたり、SNSで発信したりする人も多いかもしれません。自分が経験したつらい出来事に捕らわれて、抜け出せないトラウマ状態のときなど、この方法はとても有効だそうです。

筆記表現法というワークで、つらい経験を書き出すというものですが、重要なポイントがあるといいます。それは、つらい思いをした時期を振り返り、そのときの気持ちを思い出して、感情の細かいところまでありのままに書き出すというもの。

つらい思いを書き出すのだから、そこにはネガティブなワードが並ぶのは当然のことですが、もうひとつポイントがあります。それは、ネガティブなワードをポジティブなワードに書き換えるということ。

喜んでいないのに「喜んだ」と嘘を書くのではなく、「悲しい」だったら「うれしい気持ちにはなれなかった」、「失敗した」だったら「成功には至らなかった」など、単語としてポジティブなものを入れていく、というイメージです。

ポジティブな言葉3:ネガティブな言葉1くらいの割合になると、心の改善効果が見られるとのこと。「書くときだけでなく、話すとき、頭で考えるときもポジティブな言葉を使うようにすることは、自己肯定力を高める日常的なトレーニングになる」と川野さん。

言霊といいますが、本当に言葉には力があるのですね。言葉の力を信じて、書くときも話すときも、ポジティブなワードを積極的に取り込んでいきましょう。口にするのは咄嗟のことだと難しいですが、書くことならワンクッションおけるので、まずは書きながらポジティブ変換していくのがいい訓練になりそうです。

■3:「余計な思いや考え」が入り込んでくる余地がない行為に集中する

無心になれるものに没頭すると嫌な過去が小さくなる
無心になれるものに没頭すると嫌な過去が小さくなる

同級生にいじめられた、恋人に浮気された、などあまりにつらい過去がトラウマとなり、いつでまでも捕らわれてしまって心が癒されない、安らかでいられないという人もいると思います。

そんなときは、上記の筆記表現法のほかに、無心になって集中できる何かに没頭する、という行為がおすすめだそう。ひたすらキャベツを千切りにしている間だけは心が無になる、というのであれば、キャベツを千切りにする。大声で歌える歌を熱唱するとか、陶芸をするというのもいいかもしれません。

人それぞれ、好きなこと、夢中になれることがあるはず。キャベツの千切りのような、大したことのない作業でもいいのです。まずは「自分はこれだったら何も考えずに、ずっとできるな」ということを見つけて、集中してやってみましょう。すると、集中するという感覚が身体でわかってきて、日常のさまざまなことも集中してできるようになります。

無心でできることを続けることで、安らかな心、穏やかな心でいられる時間が増えていき、嫌な過去がどんどん小さく、丸くなっていくといいます。キャベツをひたすら切るという行為そのものが、癒しとなっていくのです。

仕事で失敗する、恋人や友人に裏切られる、誰かに悪口を言われるなど、日常生活で嫌な思いをしたり、ストレスが溜まるようなことはいくらでもあります。過去にいちいち捕らわれていたら、前に進めません。

それでも、一歩踏み出す気力が起きないときや心のモヤモヤが晴れないときは、ぜひ今回ご紹介した3つの方法を試してみてください。習慣にすればすぐに前向きな気持ちになって、また一歩ずつ歩いて行こうと思えるはずですよ。

川野泰周さん
精神科・心療内科医、臨済宗建長寺派林香寺住職
(かわの たいしゅう)現在、寺務の傍ら都内及び横浜市内のクリニック等で精神科診療にあたっている。うつ病、不安障害、PTSD、睡眠障害、依存症などに対し、薬物療法や従来の精神療法と並び、禅やマインドフルネスの実践による心理療法を積極的に導入。主な著書に『脳がクリアになるマインドフルネス仕事術』(クロスメディア・パブリッシング)、『悩みの9割は歩けば消える』(青春出版社)、『ずぼら瞑想』(幻冬舎)がある。
『人生がうまくいく人の自己肯定感』川野泰周・著 三笠書房刊
この記事の執筆者
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WRITING :
Mami Azuma
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