「オイルが漏れていますよ」

ある晴れた日のロンドンで、私は白髪の紳士に声を掛けた。彼はにっこりと笑って、こうこたえた。

「それは、ちゃんとオイルが入っている証拠だよ」

Nobody is perfect.(完璧な人なんていない)とイギリス人はよく口にする。確かに、万物形あるものは決して完璧ではなく、いずれ崩れ行く運命にある。そんなに細かいことにくよくよすんなよ、気に入ったヒトやモノと一緒に過ごせる時間の方がよっぽど大切じゃないか、という思想だ。

古い英国車に乗るということは、まずこういう価値観を共有できなければならない。今乗っているクルマは単なる預かりモノで、次の世代のためにメンテナンスをする。

イギリス的濃密な時間が過ぎるQEDジャパン

平塚にひっそり佇むイギリスの名門カー・サプライヤー

イギリス中部レスターのクォーンに本社を置く、エンジン部品サプライヤー、QEDモータースポーツの日本支社。元ローバー・ジャパンのエンジニアだった鈴木健二さんが運営する。イギリス本社同様、ロータス車を愛する男たちにとっては、あこがれの存在。神奈川県平塚市に人知れずあるそのガレージには、往年の葉巻型のロータスのフォーミュラカーから、ロータスヨーロッパ、ロータスエランなど、垂涎の名車がずらり。住所、連絡先は今回は非公開だが、興味ある人はネット等で調べて!

自分はそのクルマに与えられた時間を楽しむだけだ。そんなイギリス的な時間を過ごすことができる秘密基地を紹介しよう。神奈川県の平塚にあるQEDジャパンのガレージだ。店にはホームページもなければ看板すらない。まるで営業している気配のないガレージに、一風変わったクルマたちがひっそりと息を潜めている。

その不思議な空間で、一般人には理解不可能な趣味の話をダラダラすること。これはちょっとしたジェントルマンズクラブの気分だ(だれにも邪魔されずに同好の士が集える場所がクラブの起源なのだ)。ここで流れる時間は、ゆっくりと濃密でありながら、コンコルドで飛ぶがごとく、過ぎ去って行く。

QEDは、Quorn Engine Developments(クォーン・エンジン開発)の略である。だが、イギリス本社のケン・スネルハム社長は、有名な数学用語と意味を掛けた。Q.E.D.は、ラテン語で「証明終了」を意味し、計算された数式の最後に使う。イギリスでは「これ以上、最高のものはない」という意味で使うことが多い。

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※2011年夏号取材時の情報です。

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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2011年夏号より
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