誰だって、気持ちよく働きたいもの。できるだけ職場をギスギスした雰囲気にしたくないですよね。しかし、うっかり失言で自らがそんな雰囲気をつくってしまうことも……。どうすれば、地雷発言を避けられるのでしょうか?
そこで、職場で周囲のモチベーションを下げやすい、敵をつくりやすい、部下に尊敬されなくなる、といった言動について、業務改善・オフィスコミュニケーション改善士の沢渡あまねさんに教えていただきました。
職場の雰囲気がどんどん悪くなるNG言動11選
■1:人前で叱る
人前で叱る行為は、一番やってはいけないことだと沢渡さんは言います。
「最近は、職場で本音を言い合えるか、ヒヤリ・ハットを言い出しやすいか、ほうれんそう(報告・連絡・相談)が大事と言われているのに、人前で叱ってしまうと本音を遠ざけてしまいます。
褒めるときは人前で、厳しい指摘は一対一でしたほうがいいですね。意見しやすい職場をつくることは上司の責任であり、会社のリスクマネジメントの問題になってきます。組織風土は上司の振る舞いによって決まってくる部分が大きいです」(沢渡さん)
ちなみに沢渡さんが見ている中では、このような組織風土の会社はコンプライアンス違反につながる可能性が高いそうです。
■2:任せた素振りをするわりに細かく口出しする
会議などで「進行はあなたに任せます」と言っておきながら、途中で「それじゃダメ、埒が明かない」などと口を出してしまう人いますよね? これはふたつの点でよくないそうです。
「ひとつは、人前でダメ出しをしている。もうひとつは、これが習慣化してしまうと、次からも『この人は任せないのだ』と思われてしまい、相手の主体性がなくなっていきます。主導権が奪われることで、指示待ちのマインドセットを生んでしまうのです。介入しないといけないのは、緊急性がある場合、コンプライアンスに関わる場合、そして生命の危険を伴う場合であって、例外的なものです」(沢渡さん)
どうしても口を出したい時は、あらかじめ条件を明確にしておいたほうがいいとのこと。「やり方は任せたが、納期については1か月かかりそうなときは口出しする」などと伝えておくと良いようです。
■3:叱ったり揚げ足をとったりするときだけ登場する
叱ったり、揚げ足をとるときだけ登場すると、「この人は良いところを見てくれないのか」と思われ、信頼感をなくしてしまうそうです。
「ある全国チェーンの事業本部長から聞いたのですが、その人は全国の店長と話すとき、彼らと向き合う時間は年に5分ほどしかないので、なるべくポジティブなことを言うようにしているそうです。そのほうがコミュニケーションはスムーズになるし、相手の印象も変わりますよね。たまにしか会わない相手ほど、ポジティブなことを言うことで、信頼関係が構築されます」(沢渡さん)
普段から、相手の良いところを評価するように心がけておくと、厳しいことを言いやすくなるようです。
■4:口癖のように「大至急」を使う
さらに沢渡さんから、「『至急』という言葉を多用するのは、すなわち『私は無能です』と言っているようなもの」と厳しいお言葉が。
「物事の優先度を判断して計画したり、役割分担することは上の仕事ですから、毎回『至急』と言っている人は、自分がマネジメントできていない、もしくはしようとしていないということを自ら示してしまっているのです」(沢渡さん)
情報を上司で止めていてはダメ。最初から情報を出しておくと、あらかじめ部下が動けるようになり効率的だそうです。
■5:ことあるごとに「聞いていない」と返す
多様してはいけない言葉は他にもあるそうです。沢渡さんは、「『聞いていない』というのが口癖の人は要注意」と警告します。
「この発言は、すなわち自分が現場を見ていないということになります。部下は報告しているのに、自分が理解していない。または聞き漏らしているかもしれない。人間忘れることはあるので、そういうときは『ごめん』と謝れるかどうかです。その上で、『もう一度教えてくれる?』と聞きましょう」(沢渡さん)
部下に謝ると、「なめられるのではないか」と思うかもしれませんが、素直に自分の非を認めるほうが、信頼される上司としてふさわしい行動のようです。
さらに沢渡さんから、具体的にNGな一言についても伺いました。それは、「こんなこともできないの?」、「余計なことを言うな/するな」、「愛社精神を持て」、「君たちは幸せだ」、「私たちの若い頃は……」、「常識だよ」、の6つ。これらは職場内では禁句にした方がいいそうです。
■6:「こんなこともできないの?」と言う
悪気なく、「こんなこともできないの?」と部下に言ってしまっていませんか? この言葉は確実に部下のモチベーションを下げてしまいます。
「新入社員や異動してきた人に仕事を任せる場合、事務的な作業からお願いすることが多いですが、それがうまくできないときに『こんなこともできないの?』という一言を言ってしまったら、そこにはふたつの問題があります。
ひとつは、その人は事務作業が得意ではないだけなのに、その人をできない人と決めつけてしまうことになります。例えば、エンジニアの現場に行けば、技術があってプログラミングやコーディングが得意かもしれません。その人が“できない人”なのではなく、合う合わない、得意不得意にすぎないということです。周りの人に対しても“できない人”だというラベリングになってしまい、その人の自己肯定感が下がります。
さらに、“こんなこと”ということで、その仕事を生業にしている人のことも尊重していないということになります。これでは、ますます信頼がなくなっていくでしょう」(沢渡さん)
言った相手だけでなく、その仕事をしている人に対しても失礼な発言。上に立つ者としては、思わず言ってしまわないように気をつけたいものです。
■7:「余計なことを言うな(するな)」と言う
社員に意見や主体的に行動を求めることはよくあると思いますが、「好意にケチをつけられたり、否定をされたりした社員は、意見を言えなくなってしまう」と沢渡さん。
「良かれと思っての進言、あるいは仕事を進めやすい工夫かもしれないのに、『余計なことを言うな(するな)』と頭ごなしに言ってしまうと、その人は二度と意見の提案をしなくなってしまいます。
まずは『ありがとう』とその行為を認めましょう。その上で、どうしてその意見に至ったか、背景を聞いてみることが大事です。そして、『こういう場合はこうしたほうがいい』などとフィードバックしていくといいですね」(沢渡さん)
実際にその意見は採用されず、結果的には残念だったとしても、その行動は褒められたと思えば、部下は悪い気はしないそうです。上司としては、部下の気持ちを想像することも大事ですね。
■8:「愛社精神を持て」と言う
沢渡さんは「愛社精神と言えば言うほど、退社精神が育まれます」とよく言っているそうです。
「愛社精神というのは内なる気持ちから生まれるもの。評価や報酬、権限を与えたり、任せたりすると、その部下は仕事ができるという実感が湧き、楽しくなってくる。結果、一段上の目線で見ることができるようになります」(沢渡さん)
同じ理由で、「経営者目線を持て」もNG。褒めて伸ばすことが、愛社精神に繋がっていくようです。押し付けるものではないのですね。
■9:「君たちは幸せだ」と言う
たまに、「『会社からお金もらって勉強させてもらっていて幸せだね』」と言う人がいますよね。心の中で思っていたとしても、人前で口にするのはNGです。
「幸せかどうかは相手が決めるものです。言われた人は、必ず『YES』と言わなければいけないのかと思ってしまい、主体性をなくしてしまいます」(沢渡さん)
上司は、部下が自ら主体性を持ってくれるような方法を考えないといけないということですね。
■10:「私たちの若い頃は……」と言う
また、昔と今を比較するような発言もNG。
「『私たちの若い頃は……』と言われても、今は時代が違います。組織も個人も未来に向かって生きています」(沢渡さん)
変えられない事実を言われても困るもの。思い出話は、同年代の前だけにしましょう。
■11:「常識だよ」と言う
常識というのは生き物で、時代の流れや技術、世の中の変化で変わるもの。そのため、自分の常識を人に押し付けるような発言はやめた方がいいそうです。
「『常識だよ』というと、部下は意見や本音を言わなくなります。『自分の会社は古い組織なのか』と諦めるしかなくなってしまうのです。常識をアップデートしない組織に未来はありません。
『常識だよ』ではなく、『私だったら、こういうやり方のほうが受け入れやすい』とか『この目的を達成するためには非効率だと思うんだけど、どうだろう?』といった言い方で話し合いましょう。上司自身が気づきを得られるかもしれません」(沢渡さん)
否定は誰でもできるもの。単なる批評家にならないように、「こっちはどうだろう」と代案を出しましょう。
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以上の11点、思い当たるところもあるのではないでしょうか? つい口から出てしまう言葉、思わずしてしまうこと……。この機会に改めて自分の言動を見直し、信頼される上司でありたいものですね。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- あわいこゆき