ミラノにおいてもシチリア料理の存在感はつねに際立ち、シチリア産の新鮮な魚介類がミラノを通して流通されるのは東京と同じ道理で、ミラノにおいては比較的容易にシチリア料理に触れることができるのである。

「シケライア」はモダン・シチリア料理の流れを汲む店で、シェフのフェデリコ・ラ・パッリア Federico La PagliaはIdentita Goloseの2018年度最優秀サプライズ・シェフに選ばれた旬の料理人である。

ちなみに「シケライア」とはギリシャ語でシチリアのことだが、同じくシチリアの方言でSIKE=サボテンの実 Fico d'India、ELAIA=オリーブの木、というどちらもシチリアのシンボル2つを組み合わせた言葉でもある。

イカとカボチャ、というユニークな組み合わせ。パリパリのカボチャチップスと香ばしくグリルしたイカの相性がよく、アマーロを煮詰めたソースで甘みをプラス
新鮮な地中海産のヒメジをロースト、付け合わせにはシチリアを代表するナスを使った甘酸っぱい野菜料理「カポナータ」を添えた前菜

過日訪れた「シケライア」での料理はこんな感じだ。

まず、ストゥッツィッキーニと一口サイズでして登場したのがひよこ豆のペーストをキューブ上に揚げたパレルモを代表するストリートフード、パネッレ。

続く前菜は「ヒメジとカポナータ」、カポナータはナスやトマトなどを一緒に煮込むのではなく、ナスのグリルを薄く層にして松の実やレーズンをトッピング、トマトの種の周囲にある酸味ある水分Acua di Pomodoroで酸味を加えたものだった。「ヤリイカのロースト、カボチャとアマーロ・アヴェルナのリドゥツィオーネ」は切れ目を入れたヤリイカに火を入れ、北イタリアの旬の食材であるカボチャをテクスチャーを変えて2種類添え、シチリアを代表するアマーロであるアヴェルナを煮詰めたが添えてあった。

ほうれん草のパスタ?いえいえこれは南イタリアでよく食べるチーマ・ディ・ラーパをピューレにしたほろ苦いヘルシー・パスタ
「真鯛のベッカフィーコ、フィノッキオのグリル」は柔らかく火入れした真鯛といワシのソース、シチリアでよく食べる根菜フェンネルのピューレがよくあう
シチリアを代表する郷土菓子「カッサータ」も「シケライア」バージョンではこんな感じにデフォルメ

続くパスタは「チーマ・ディ・ラーパとマッコ・ディ・ファーヴェ、ヒメジ、ネレッロ・マスカレーゼのリドゥツィオーネのスパゲッティ」。

日本の菜の花に似た苦味のあるチーマ・ディ・ラーパと、乾燥そら豆を戻してピューレ状にした、豆の甘みが際立つマッコ・ディ・ファーヴェ、そして限りなく生に近いヒメジにエトナ山の土着品種であるネレッロ・マスカレーゼを煮詰めたソース。

セコンドは「真鯛のベッカフィーコ、フィノッキオのグリル」は真鯛を例のベッカフィーコ状にしたのではなく、真鯛のローストにイワシのベッカフィーコのソース、そしてフィノッキオのピューレで食べる料理だった。

ドルチェは「ピスタイオのジェラート」とシチリア伝統菓子の「カッサータ・シケライア」。リコッタ・クリームとオレンジやチェードロなどのフルーツの砂糖漬け、そして膜状に薄く伸ばしたマジパンが多い、一口サイズのチョコレートがトッピングされた見た目は全く違うが口に入れると確かにカッサータになる、変化形カッサータだった。

店名の「シケライア」とは古代ギリシャ語で「シチリア」の意味

ミラノに伝統的シチリア料理、例えば「イワシのブカティーニ」とか「パスタ・アッラ・ノルマ」を出す店はいくつかあるが、そうした老舗とは一線を画したモダン・シチリア料理を好む人にはいいかもしれない。

とかく伝統料理を再解釈した「モダン」料理は批判されがちなイタリアだが、特にシチリア料理に関しては熱狂的ファンが多いので、そのハードルはさらに一段階高い。しかし、こうしたモダン・シチリア料理の中に散りばめられたシチリア的要素やキーワードを探しながら食べるのはなかなか楽しい作業でもある。普段とは違うシチリア料理を楽しみたい方向け。

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この記事の執筆者
1998年よりフィレンツェ在住、イタリア国立ジャーナリスト協会会員。旅、料理、ワインの取材、撮影を多く手がけ「シチリア美食の王国へ」「ローマ美食散歩」「フィレンツェ美食散歩」など著書多数。イタリアで行われた「ジロトンノ」「クスクスフェスタ」などの国際イタリア料理コンテストで日本人として初めて審査員を務める。2017年5月、日本におけるイタリア食文化発展に貢献した「レポーター・デル・グスト賞」受賞。イタリアを味わうWEBマガジン「サポリタ」主宰。2017年11月には最新刊「世界一のレストラン、オステリア・フランチェスカーナ」刊行予定。