おせち料理の中でも、人気の高い「黒豆」。甘くてふっくらとした食感は本当においしいですよね。でも、自分で黒豆煮をつくるのはちょっと苦手、つくることはできても味にはちょっと自信がない、という方は、ぜひこの機会に「おいしい黒豆の条件」を知り、つくってみましょう。

最近では、おせち料理を購入する方が増えている中で、自信をもって手づくりできると一目置かれますし、家族やパートナー、大切な友人などにぜひふるまいたいものです。今回は、和食研究家の神田麻帆さんに、究極においしい黒豆の条件を教えていただきます。

おせち料理の「おいしい黒豆」5つの条件

黒豆は、おせち料理の中でも、「一の重」に入る黒豆・数の子・田作り(たたきごぼう)の「祝い肴」三種のひとつとなっていることから、重要な料理といえます。“黒くなるまで「まめ」によく働く”という意味があり、健康的に働けることを願っていただくなどのいわれがあります。

そんな黒豆、砂糖や醤油、塩で煮てつくる一見簡単そうに見える料理ですが、シンプルゆえに奥が深く、おいしい黒豆づくりには、いくつか条件があります。神田さんに、そのおいしい黒豆をつくるための条件を挙げていただきました。

■1:黒豆の産地

「なんといっても『丹波の黒豆』は、味が良く、大粒です。普通の黒豆に比べてお値段は数倍しますが、栽培期間が長く、ほとんどが手作業で丁寧に育てられていること、収穫量の少なさなどを考えると納得します」

■2:豆の質

「大粒で艶があること。粒がそろっていて、傷や割れがないものを選びましょう」

おいしさは、はじめの見極めで決まります。
おいしさは、はじめの見極めで決まります。

■3:味付け

「最近では、ワインやリキュールを隠し味に加えたものもありますが、シンプルで優しくナチュラルな甘味に仕上げられたものがおすすめです」

■4:煮込み方

「鉄鍋などを使い、弱火でじっくりと煮込むと、煮崩れしない艶やかで美しい漆黒の色に仕上がります」

弱火でじっくり煮込む。
弱火でじっくり煮込む。

■5:食感

「噛んだときに、ふっくらとやわらかく、中まで蜜が染み込むように炊かれているものが、最高と言えます」

「黒豆づくり」のよくある失敗パターン

原因をチェックして、失敗をなくしましょう。
原因をチェックして、失敗をなくしましょう。

黒豆づくりを失敗してしまう場合、神田さんは次のようなパターンがあると話します。それぞれの原因についてもチェックしておき、後で紹介する「最高においしい黒豆をつくる5つのテクニック」を参考にしてください。

黒豆の皮表面にシワができてしまう

「シワができるのは、豆を浸す液、砂糖を一気に入れている、火加減が強すぎるなどの原因が考えられます」

綺麗な色や艶が出ない

「これは豆選びや煮るときのひと工夫が不足していることが関係しています」

やわらかい豆と固い豆があり、味の入りも違う

「豆の浸し方や、砂糖の入れ方に問題があります」

豆が割れたり、煮崩れたりする

「これは豆選びや豆の浸し方、火加減が強すぎることに関係しています」

最高においしい黒豆をつくる5つのテクニック

最高においしい黒豆をつくるテクニック
最高においしい黒豆をつくるテクニック

黒豆の基本的なつくり方は、まず豆を水で洗った後、数時間、液に漬けて戻します。そして火にかけて煮つめてつくります。この工程はさまざまなレシピがありますが、最高においしい黒豆をつくるにはどうすればいいのでしょうか。神田さんにそのポイントとなるテクニックを教えていただきました。

■1:大粒・艶あり・粒ぞろい・傷や割れなしの豆・新豆orひね豆を選ぶ

「まずは良い豆を手に入れます。先にもご紹介したとおり、大粒で艶(つや)があり、粒がそろっていて、傷や割れがないものを選びます。また新豆とひね豆(昨年の収穫した豆)、どちらを使うか決めましょう。新豆はやわらかくアクが少ないのが特徴で、ひね豆は割れにくいもののアクが強いのが特徴です」

■2:豆を浸す液は「米の研ぎ汁」「重曹」「塩」

「豆を浸す液は、米の研ぎ汁に重曹、塩を加えたものを使用します。研ぎ汁に含まれるでんぷんが豆のうまみの流出を抑え、重曹は固い皮をやわらかくし、塩は豆の皮が割けることを最小限にします」

■3:鉄製品と一緒に煮る

「豆が戻ったら、いよいよ煮ていきます。このとき、鉄鍋で煮るか、錆びた釘、鉄玉子などの鉄製品を取り入れて煮るのがポイント。鉄の作用で黒豆に含まれる黒い色素『アントシアン』が安定し、綺麗な漆黒に仕上がります」

■4:砂糖は数回に分けて入れる

「砂糖は数回に分けて入れます。砂糖を一気に加えると、浸透圧の関係で豆が脱水し、皮にシワが寄るうえに、豆は固くなり、砂糖が豆に浸透しづらくなります」

■5:火加減は豆が踊らない程度の弱火で

「煮ているときの火加減は弱火。豆が踊るほど強い火加減は、豆の割れ、煮崩れにつながります」


漆黒の美しい色合いで光り輝き、口に含めばふっくらとした絶妙なやわらかさを感じ、噛めば蜜を感じられる黒豆。自宅のキッチンでも、こうしたレベルの高い黒豆をつくることができます。ぜひ、おせち料理のひとつとして、挑戦してみてはいかがでしょうか。

神田麻帆さん
和食研究家
(かんだ まほ)料理界の東大、大阪あべの辻調理師専門学校出身。大手食品企業の商品開発業務をレギュラーで務める。東京都食育(栄養)講座、パナソニック「Bistro」料理教室、専門学校にての技術指導など講師経験多数。完全オーダーメイドレッスン/マンツーマン指導専門の料理教室「キッチンスタジオK」を主宰。
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
石原亜香利