肩こりは、もはや国民病とも言われている症状。放置すると肩の痛みや不快感だけでなく、眼精疲労や集中力の低下、めまいや頭痛などを引き起こすこともあり、悩ましいですよね。

マッサージやストレッチなどをして一時的には良くなっても、しばらくするとまた痛みがぶり返す……。そんな負のスパイラルから抜け出すにはどうしたらいいのでしょうか?

これまで4万人以上の悩みを解決してきた人気整体家の宮腰 圭さんにこの悩みをぶつけたところ、普段の癖や姿勢に原因があるケースが多いと指摘。以下から宮腰さんに教えていただいた、無意識にやりがちだけど実は肩こりになりやすくなる悪習慣をお伝えします。

肩こりしやすい人が無意識にやっている危険な習慣6選

■1:無意識のうちにしょっちゅう歯を食いしばっている

アゴに負担をかけないことが肩こり予防に
アゴに負担をかけないことが肩こり予防に

「歯を食いしばることでも肩はこる」と宮腰さん言います。

「歯を食いしばるとアゴの筋肉(咬筋)のほかに、側頭部の筋肉が収縮します。そうすると、それに連鎖して頭頂部から後頭部へ、後頭部から首へ、首から肩、そして背中へ、身体の後ろ側全体の筋肉へと筋緊張が波及していきます。

アゴは人体のなかで、最もよく使われている関節です。噛む・しゃべる・動作の始め・荷物を持つとき・物を移動させるとき・食べものを飲み込むとき・あくび・睡眠中・いびきなど、運動時全般において、人はアゴを開閉させ動かしています。

動かす回数は、1日に2,000回以上。また、日常生活で一番強い力がかかっているのもアゴです。一度の食いしばり行為で、約50kgもの負荷がアゴにはかかるといわれています」(宮腰さん)

つまり、パソコンの操作中や仕事に追われているときなど、つい奥歯を食いしばっていないか、こまめに確認する習慣を身につけることが大事なのだそう。時折、口を開けたまま仕事してみてもいいかもしれません。

■2:無意識のうちに食事中に同じ側でばかり噛んでいる

食べ物は両方の奥歯で噛むように
食べ物は両方の奥歯で噛むように

仕事中だけでなく、食事中にも気をつける必要があるようです。

「食べ物を片方の歯でばかり噛むクセがある人は、肩こりになりやすい人です。なぜなら、そのように片噛みをしていると、噛んでいる側の筋肉(咬筋・側頭筋など)ばかりが酷使され、その筋疲労にともない強く収縮してしまうから。

いつも噛んでいる側の咬筋・側頭筋が収縮すれば、それに連鎖して同じ側の肩や背中の筋肉も収縮します。筋収縮によって血流が悪くなり、肩周囲の老廃物が流されずに蓄積していくのです。

その老廃物そのものや老廃物から排出される物質により、神経が刺激されて痛みの症状が起こり、血流低下によって筋肉内の酸素が不足し、酸欠状態になることから、だるさが発生します」(宮腰さん)

つい片噛みをしてしまう原因には次の3つがあるそうです。

(1)虫歯がある側では噛まなくなる

(2)噛み合わせが悪い側では噛まなくなる

(3)食べ物(ネギやニラ、もやしなど)が挟まりやすい側では噛まなくなる

そこで、肩こりを慢性化させないためには、いつも片方でばかり噛んでいないか、両方の奥歯で均等に噛んでいるかに注意しましょう。

「片噛みを完全になくす方法としては、食べ物を口に入れたら、食べながらでよいので、両方のほっぺに食べた物を入れていき、両方の奥歯で同時に噛みます。この食べ方であれば、確実に左右均等で噛むことができます」(宮腰さん)

リスやハムスターが餌で頬をふくらませているときをイメージしながら食事するのもよさそうです。

■3:無意識のうちに手の甲が内側に向いている

意外にも、立っているときや歩いているときの手の向きにも、肩こりを引き起こす悪習慣があるそうです。

「肩がこっている人のほとんどは、手の甲が内側に向いています。手の甲が内側に向いていると、それだけで肘にも内向きの回転がかかり、さらに肩にも内巻きの力が加わります。

単純な話ですが、物理的に肩が内側に巻けば巻くほど、肩甲骨の位置も前に移動して行きますから、背中側が張ってくるのは当然のことなのです」(宮腰さん)

では、それを避けるにはどうすればいいのでしょうか?

「解決策としては、普段から手の甲を外側に向けて、手のひらを前(正面)にして歩くだけで、内に巻いていた肩が自然に矯正されて行き、内側に凹んでいた胸部が前方に突出し、同時に猫背もストレートネックも改善されます。どんなに短い距離でも、歩くときには“巻き肩解消歩き”を心がけましょう」(宮腰さん)

これだけでも慢性的な肩こりや背中の張りが解消されるそうなので、通勤しながら、会社の廊下で、買い物しながら、家の中でなど、常に意識しておきたいですね。

■4:無意識のうちに呼吸が浅くなっている

実は適度な深呼吸が肩こりを防ぐ
実は適度な深呼吸が肩こりを防ぐ

普段から肩が内側に巻いていて胸部も凹んでいる人は、呼吸にも気をつけたほうがいいそうです。

「デスクワークでパソコンを操作していると、虫のような息になっていたり、気がつくと呼吸を止めていたりすることがあります。

呼吸が浅くなるということは、体内に取り込める酸素量も不足するということ。ちょっとした山の中腹にでもいるような状態になり、目が乾いたり肩がこったり、頭痛が起きやすくなったり、つい眠くなってしまうなどのプチ酸欠状態が起こります。

また酸素が不足することで、筋肉内の血流も悪くなります。そのため、肩や背中に溜まっている老廃物も排出されなくなり、ますます痛みや重だるさが解消できなくなってしまいます」(宮腰さん)

体内の酸素量が不足すると、さらに怖いことに。精神的な不安や恐怖を感じやすくなり、急に怒りだしたり泣きたくなったり、感情の起伏も激しくなりがちなのだとか。

「酸欠によってメンタルが不安定になると、自律神経やホルモンのバランスも乱れてしまうので、さらなる不調の悪循環や、軽いうつ状態にも陥ってしまいます。普段から呼吸が浅い人は、デスクワークでは30分に1回でも構いませんので、深呼吸を3回する習慣を身につけることが大切です」(宮腰さん)

口から吸った息を鼻から出すだけで、気持ちも落ち着きます。ぜひ習慣にしてみましょう。

■5:無意識のうちにしょっちゅう肩をすくめている

なるべく肩は落として
なるべく肩は落として

「デスクワークで無意識に肩をすくめている人は、どんなにマッサージや整体などに通っても、肩こりが治りません」と宮腰さんは警告します。

「肩をすくめているときには、僧帽筋(表層にある背筋の一部。後頭部・頸部・背部正中線から鎖骨や肩甲骨へ広がる菱形の筋肉)を収縮させていますので、それを普段から常にやっていると、僧帽筋の上部がこり固まります。

そのようなクセがある人は、デスクワークやパソコン操作以外でも、普段から肩をすくめていることがないか、こまめにチェックすることと、肩がすくんでいたら肩の力を抜くことが大切。

さらなる解決策としては、肩がすくんでいることに気がついた場合、あえて一度肩をすくめてから、ストンと肩を落とすことも有効です」(宮腰さん)

デスクワークをするときは、30分に1回、深呼吸と肩を落とすことを習慣化しましょう。

■6:低反発の低い枕で横向きに寝ている

枕は低すぎないものを
枕は低すぎないものを

起きているときのみならず、寝るときの姿勢も大事。あなたはどんな枕を使っていますか?

「横向きで寝るのが好きな人には、低反発の低い枕は向きません。低い枕は横向きになったときに、枕の高さに対して自分の肩幅のほうが高くなってしまいます。そのため、下になっている肩を内巻きに折り曲げて、枕との高さを合わせようとするのです。

肩が巻き肩(内巻き)になってしまうと、肩こりが慢性化したり、首を痛める原因にもなってしまいます。肩が内巻きになっていて、背骨と肩甲骨の距離が離れすぎると、背中側の筋肉もさらに引き伸ばされた状態になり、筋肉内の血流が必然的に悪化。そして、肩から背中全体までが張ってきます」

普段から横向きでしか寝られない人は、少し高さのある枕を使用したほうがいいとのことです。自分の寝相を確認してみましょう。

パソコンやスマホを使っている時間が長いから猫背になって、肩こりがひどくなると思うかもしれませんが、必ずしもパソコンやスマホだけではなかったのです。歩いているときや寝るときも意識して、普段から肩こりにならないようにしたいものですね。

宮腰 圭さん
整体家、「骨と筋」代表、「アカデミー骨と筋」主宰
(みやこし けい)1969年秋田県生まれ。'50年代のアメリカに憧れ、テネシー州メンフィスでバンド活動に励んだのち、30才のときに音楽で生計を立てる道を断念。一転カイロプラクティックの道を志し、日本カイロプラクティックカレッジに入学。2001年より米国政府公認ドクター中島旻保D.Cのセンターに勤務。2006年に中目黒にて開業し、2010年にはスクール「アカデミー骨と筋」を開校。現在は東京・四谷にて整体院「骨と筋」を運営。これまで4万人以上の悩みを解決してきた人気整体師だが、地方や海外からわざわざ訪れる人も多いため、通院できないクライアントのためにセルフメソッドを多数開発。300種類近くもの体操を考案しており、その圧倒的数の多さから「セルフメソッドの発明王」とも呼ばれている。新刊『肩こり、首痛、ねこ背が2週間で解消!「巻き肩」を治す』『腰痛が4週間で解消!「大腰筋」を強くする』(ともにサンマーク出版)が2月下旬発売予定。
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この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
あわいこゆき