訪日外国人に日本を案内する「通訳ガイド」(正式名称:通訳案内士)として、欧米圏のVIPのアテンドをするキャメロン今井さん。

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東京で開催される数あるイベントのなかから、今回は「東京マラソンに参加する外国人」をサポートした一部始終をご紹介します。訪日外国人は、いったい異国の地でフルマラソンという「非日常」を、どう楽しんでいるのでしょうか?

東京マラソンの1シーン

今年で第13回目を迎えた東京マラソンが、3月3日に開催されました! 世界6大マラソンのひとつでもある東京マラソンは「走りながら東京の観光地が楽しめる」という理由で、外国人観光客にも人気が高いイベントです。

今回、私は、東京マラソン出場のために来日した、海外セレブご家族に同行する機会に恵まれました。外国人目線から見た東京マラソンの魅力を体感してまいりましたので、その様子をレポートさせていただきます。

来日して東京マラソンを走るのは、地球の裏側・アルゼンチンからいらした富豪の奥様

マラソン歴5年という奥様(アンナさん)が東京マラソンに出場するために、ご家族(ご主人・マルセロさん、既に成人しているお子さん3人と、そのパートナーの総勢8人)とともに来日。奥様は、世界6大マラソンである、シカゴ、ロンドン、ニューヨークシティ、ベルリン、ボストンマラソンには既に出場済みという、ベテランの市民ランナーです。

応援する外国人ゲストも多い、みな寒そうでした

今回の東京マラソンを完走したら、6大マラソンを全制覇できることになるため、スタート地点である都庁近くのホテルにひとり前泊し、集中力を高められたとのこと。

毎回、奥様が出場するマラソン大会には、必ずご家族も同行して応援するという、愛にあふれた素敵なファミリー♡のアテンドに同行させていただくことができました。ちなみに今回は寄付金を納め、チャリティー枠でのエントリーをされたとのこと。

「いつもは、マラソン大会の2日前くらいに現地入りしているけど、日本はちょっと遠いから、今回は20日前にプライベートジェットで日本に来て、京都、大阪、直島と観光してから、昨日、東京に移動してきたんだよ」と、ご主人。

ちょっと、遠い? ちょっと、などというものではないと思うのですが…。アルゼンチンから日本までの飛行時間は、約24時間。

世界中をプライベートジェットで飛び回っている富豪の時間感覚は、一般人とはやっぱり大きく異なっていました。

また、このマルセロさん、なかなかキャラがいいんです。頑固で、辛口コメント多くて、気が短くて。でも、愛情深くて、超愛妻家の憎めない方。この面白キャラのご主人と一緒に、東京の魅力を凝縮した贅沢なコースを巡り、珍道中を繰り広げてきました!

こんな経験は通訳ガイドとしても初めてのこと。冷たい雨の降りしきる、あいにくのお天気でしたが、いつもの東京とは一味違うダイナミックで熱気にあふれた東京を発見できた、最高にエキサイティングな一日となりました。

■1:まずはコース攻略作戦会議!…から躓きます

ご主人は専用のハイヤーを予約しており、車で都内を回り、各ポイントに奥様より先回りして、沿道で応援するというプランを立ててらっしゃいました。

「今日、都内の道路は交通規制されているため、車で回るのはムリ」と話しても、なかなか聞き入れてくれず、アテンド前にまずひと苦労。

「The best way to go around Tokyo is subway.  We have the most extensive subway system in the world.」
(東京を効率的に回るのは地下鉄が一番。東京の地下鉄システムは世界一発達しているのだから!)

私の説明にようやく納得してくれ、当日予約していた車はキャンセルし、地下鉄で回ることを承諾してくれました。

そして、地下鉄マップと、事前に入手しておいた「東京マラソンコースマップ」を片手に少しでも多くのポイントに先回りして、沿道から応援するべく作戦会議を開始!

今回の東京マラソンのルートは、おおまかに以下の通り。

都庁→飯田橋→神田→日本橋→浅草雷門→両国→門前仲町→銀座→高輪→日比谷→東京駅前

5km〜10km前、靖国通りの神保町近辺を通り過ぎるランナーたち

ご主人は、ランナーの位置情報を予測追跡できるアプリを入手しており、これにより、奥様が、いつ、どのポイントを通過するか予測が可能です。

専用車をキャンセルしたりしている間に、既に10時を回ってしまい、日本橋までの観戦ポイントは諦め、「浅草を11:11に通過予定」という情報を元に、浅草に焦点を絞りました。

しかし、「地下鉄で回ろう」っていうことで話はついていたはずなのに、「どうしてもタクシーに乗りたい!」と駄々をこねられ、かろうじてタクシーを拾うことができました。やれやれ。。。

■2:15km地点の浅草ではランナーに会えず…残念(;_:)

外国人ランナーが非常に多い印象。仮装して走るランナーも、今回は雨で重そうです

無事に浅草に到着するも、雷門前付近は、沿道がびっしり応援の人たちで埋め尽くされており、応援場所を見つけるのにまたまたひと苦労。

通訳ガイドの長年のカンを働かせ、「そうだ!東武浅草駅近辺ならいけるかも」と、東武浅草近辺まで移動し、何とか場所を確保します。

しかしながらランナーの数が多すぎて、奥様の姿を発見することはできませんでした。気を取り直して、次のポイントである両国~門前仲町へ移動。

■3:中間地点(20km地点)の門前仲町で、ついに会えた!

アプリが示す到着予想時間よりも早く、門前仲町に到着。浅草よりもずっと観戦客が少なく、いい場所をゲットし、しばらく待っていたら。

ご主人が大勢のランナーの中で奥様の姿を発見!

「Anna~‼」

と、大声で奥様の名前を呼び、奥様もすぐに気付かれ、ご主人のもとに。

足が痛いと訴える奥様と、ご主人

かなりお疲れの様子の奥様。最初は曇った表情で、「足が痛い」と、身体のコンディションの悪さをご主人に訴えてらっしゃいましたが、ご主人が優しく奥様に薬とコーヒーを飲ませ、励ましていると、奥様はみるみる元気に! カメラを向けると、この笑顔で応えてくれました!

会心の笑顔

このシーンがなんとも言えず、感動的でした。ご主人も、気持ちの上では、奥様と一緒にコースを走っているんだなぁ、と思いました。奥様を全力でサポートする夫婦愛があるからこそ、奥様も安心して異国の地でマラソン大会に挑めるのですね。

その後、奥様は元気に再出発。門前仲町の折り返しポイントをUターンし、再び、私たちの前を手を振って通過。私たちも次のポイントに向かいました。

■4:東京タワー近辺での応援はあきらめ、昼食へ

門前仲町の後は、ランナーたちは30km地点の銀座地区を走り抜けることになっていましたが、銀座の沿道は、浅草よりも混みあっているだろうと、こちらでの応援は断念。その次となる35km~40kmの東京タワー界隈のポイントも、ちょっと遠い。

人気の観光スポットをふたつも断念しなくてはならないのは残念でしたが、思い切ってゴール地点に近い日比谷まで移動することに。

ここで、マルセロさんが「お腹が空いた。バーに行って何か食べたい」とおっしゃるので、「バーでランチ…ということはつまり、アルコールが飲みたいということ?」。

そのリクエストを叶えるべく、近場のバーを検索。帝国ホテルの「オールド・インペリアル・バー」にお連れしました。

ビールでも飲むのかと思いきや、注文したのは、緑茶とサンドイッチとポテトフライ。

帝国ホテル「オールド・インペリアル・バー」のサンドイッチとポテトフライ

なんと、アルゼンチンでは、普通のランチが食べられる場所のことを、「バー」と言うのだそうです。口には出しませんでしたが、内心、この微妙な表現の違い、文化の違いも面白いなと感じました。

■5:ゴール地点の東京駅前・行幸通りへ

ランチ後、奥様の最後の雄姿を全員で応援しようと、別行動していたお子さんたちとも連絡を取り合い、日比谷通りで待つこと数分。アプリの予想到着時間通りに、奥様がたくさんのランナーに交じって走ってきたのを発見!

大声で奥様の名前を呼び、応援しましたが、奥様はこちらの存在には気づかれず、またまた残念。

最終ゴール地点の東京駅前には、すごい人混みのため、近寄ることは難しい様相。ゴールを見届けたかったのですが、仕方なく、そのまま日比谷通りで待っていたら、奥様からの「ゴールした!」という情報を受け取り、皆で安堵。その場で喜びを分かち合い、まずは奥様抜きの家族記念写真を撮りました。

奥様抜きの家族写真。安堵の雰囲気が漂います

また、その直後に入ってきたアプリ情報によると、奥様は、汐留エリアに移動中とのこと。ゴールした後のランナーたちは、荷物置き場のある有楽町まで歩くことになっているはずなので、汐留に行くなんて、絶対におかしいと思い、ご主人に提言しましたが、頑固なご主人は、「アンナは、足が痛いって言ってるんだ。すぐに汐留に迎えに行ってやらなきゃ!」と、私の言うことをまったく聞き入れないので、仕方なく汐留まで移動。

汐留到着後、ようやく、奥様の正しい位置情報が送られてきて、やっぱり、有楽町付近にいらっしゃることが判明。原因不明の不具合?に、振り回されてしまったわけです。

その際、ご主人が「Japanese technology has a long way to go.」 (日本のテクノロジーはまだまだだな)

と笑いながらおっしゃるので、こちらも大爆笑!

もちろん、これは、ご主人流のジョークです。世界に名だたる日本の優れた技術力のことは、マルセロさんだって、もちろん認めてらっしゃるわけだから。でも、こういう場を和ませてくれるジョークを言う男性、嫌いじゃありません。思わず、「この人、かわいい♡」と思ってしまいました。

憎めない、頑固キャラのご主人、「来年の東京オリンピックも必ず見に来るよ」という言葉を残し、翌日、次の旅行先のフランクフルトに旅立っていかれました。

マラソンの魅力・マラソンを通じて気づいた女性の美しさの新定義

雨でずぶ濡れのランナーたち

テレビでしか観戦したことなかった東京マラソンに、今回こんな形で参加でき、非日常の時間を経験させてもらえたのは、通訳ガイドの仕事をしているからこそ。

特に、今回は、知り尽くしていたつもりの東京の違う魅力に触れられた特別な一日でした。普段は、人も車も絶えない大都市東京が、一年に一度、交通をシャットダウンし、ランナーのために開放される。

人と街が一体化する特別な空気感、圧倒的なエネルギーを感じ、改めて、「どこまでも進化を続けていく東京」のすごさを体感できました。この街の住人であることを誇りにも感じました。

マラソンとは無縁の人生送っていたのに、「私もいつかは、東京の街を走り抜けてみたい!」って気分になってしまった一日。「長距離を走るのって辛いだろうな、でも、走り抜けることができたら他では味わえないくらいの爽快感を味わえるんだろうな」。なんとなく、マラソンの魅力がわかり始めたような気がいたします。

マラソン生活を実践している、通訳ガイド仲間にその辺のことを聞いてみたところ、

「走ることは、自分を律し、強くし、自分を見つめること。辛いことをやり遂げたら、自分にもできるじゃん!って、自信になる。人間褒められたら成長するのと一緒で、自分に課した目標をクリアーすると、自分で自分を褒めることができるのよ」

という答えが。なるほど。深い! マラソンで成長できる=マラソンでもっと魅力的な自分になれるということかもしれません。

また、今回の奥様の鍛え上げたられた身体を見て、ファッションやメイクを超越した、女性の本当の美しさにも気づくことができました。

基本は、鍛え上げた精神と美しい身体。そこに、ヘアメイク、ファッションを付け加えたら、どれだけ魅力的になるか、想像に難くありません。心身共にベストコンディションを維持した上で人生を送ることは、さぞかし爽快な気分だろうと想像します。

走れる身体をキープすることで、多分、五感も研ぎ澄まされ、より深く人生の楽しみを味わえるのかも。

辛いから、足が痛いから、寒いからなどとと言い訳して、怠けていた自分の意識をちょっと変えてみよう。大切な気づきを得られた、今回のプレシャスな外国人ゲストとの出会いに、心から感謝いたします。

キャメロン今井さん
通訳案内士、東京マダム国際交流アカデミー代表
(きゃめろん いまい)欧米圏のVIPへの通訳、アテンドを専門とする。主催する東京マダム国際交流アカデミーは、今井さんが長年にわたり温めてきた「国境を越えたマダムたちの国際交流の場を創りたい」という夢を実現するため、国際的に通用するマダムを育成することを目的としたアカデミー。~語学力、伝統文化力、最先端文化対応力、通訳ガイド育成、女性の魅力アップ術~すべて網羅し提供し、海外目線から見た日本女性がさらに輝くノウハウを提供。「日本女性の魅力を世界に発信」するべく、活動を続けている。
東京マダム国際交流アカデミー