「ビストロ1926」はインテリア・ショップのような複合的空間になっていて、まず入り口はオーソドックスな、いわゆるイタリア的な立ち飲みコーヒー・スペースのバール空間。奥に進むとビンテージ風カフェテーブルのあるカフェ・スペース、右手にはパリで見かけるようなクラシックなビストロ風ダイニングスペース。そして一番奥にあるのが夜のみ限定オープンの「ルメリア Rumeria」と呼ばれるラム・バーだ。

夜な夜なラム好きのイタリア人が集まるラム・バー

「ビストロ1926」
「ビストロ1926」

ルメリアはオットマン付きのアームチェアが置いてありゆったりとくつろげる空間。なによりも鍵付きのガラスケースの中にはレア物も含めたラムが約380種類。1日1種類飲んでも1年じゃ飲みきれない、というのが「ビストロ1926」の自慢でもある。

憧れのバカンスといえばカリブ海、というイタリア人にとってラムは憧憬にも近い憧れの飲み物でもある。とはいえ「ビストロ1926」が提案するのはパナマ帽姿でシガーくわえながらラムをすする、というイメージではなく、トスカーナ料理にあわせたラムの楽しみ方の提案。トスカーナの代表的な前菜といえばサラミやプロシュットとチーズ、ひと口サイズのクロスティーニなどだがアルコール度数も旨味も強いラムには黒豚チンタセネーゼのサラミやプロシュット、より熟成が進んだ羊のチーズ、ペコリーノなどをあわせるのがオススメの食べ方だ。さて、ここでスタッフに「ビストロ1926」おすすめで厳選ラム5選を聞いてみた。

「ビストロ1926」のスタッフがおすすめするラム5選

第1位ドン・パパ Don Papa(フィリピン)
第1位ドン・パパ Don Papa(フィリピン)

スタッフが第1位に推したのがフィリピン初のプレミアム・ラム「ドン・パパ」。フィリピン中部ビサヤ諸島にあるネグロス島産の高品質サトウキビを使い、3回蒸留したのちアメリカン・オークの樽で7年以上熟成。2012年に初めてリリースされた知るひとぞ知る高品質のダークラム。その名はフィリピンの英雄「パパ・イシオ」にちなみバラを思わせる上品で甘い香りと、オレンジなど柑橘類の皮のようなアロマがたまらない。あわせるならばヴィンサントやオレンジピールを使ったトスカーナ産のサラミ、ズブリッチョローナやハードビスコッティ、カントゥッチーニによくあう。

スタッフがおすすめする店自慢のラム
スタッフがおすすめする店自慢のラム

左から第2位ロン・サカパ XO Ron Zacapa XO

グアテマラの標高2300m以上という高地で熟成される極上のダークラム。サトウキビの一番絞り汁バージン・ケイン・シュガーのみを蒸留して作った原酒を、バーボンやシェリー、コニャックの樽を使って山間部の冷涼な気候でゆっくりと熟成。甘み、スパイス、フルーツなど複雑なニュアンスを持つ最高傑作。白トリュフを使ったパスタや、オッソブーコなど脂の強い料理と完璧なマッチング。

第3位サマローリ2014 Samaroli

2014イタリア系ラムメーカーのサマローリは1968年創業。2014年ヴィンテージのハイチ・ラムはハイチにて蒸留後8年熟成、限定生産の超レアもの。フローラルかつスパイシー、ラヴェンダーやシナモン、ハチミチのニュアンスを持つ逸品は仔牛肉のラグーのパスタや長期熟成のペコリーノとあわせたい。

第4位ディプロマティコ Diplomatico

ベネズエラのウニダス蒸留所で作られるプレミアム・ラム。サトウキビからとった糖蜜の他にサトウキビ・ジュースを煮詰めたシュガーケイン・ハニーも使用。3種類の蒸留器で作った原酒を別々に熟成させた後にブレンド。ジャングルの花を思わせる甘い香りと複雑なロマが最大の特徴。熟成肉を使ったTボーンステーキ、ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナやマルサラを使った肉料理スカッロッピーナとともに。

第5位クレマン Clement

フランス領マルティニク諸島で作られるクレマンの歴史は古く、19世紀末に砂糖のプランテーションを購入してラムの生産を始めたフランス人医師オメール・クレマンが始めた。フランスを中心にヨーロッパで愛飲され、オーナーが変わった現在もマルティニーク産ラムのナンバーワンの座を維持し続けている。牛肉の赤ワイン煮込みペポーゾやチョコレートを使ったドルチェとの相性がいい。

「黒トリュフとポーチドエッグ、スペルト小麦のクリーム」
「黒トリュフとポーチドエッグ、スペルト小麦のクリーム」

最後にシェフが持って来てくれたのが「黒トリュフとポーチドエッグ、スペルト小麦のクリーム」。卵黄を崩しながら黒トリュフとまぜ、ちびちびとダークラムをやるとたまらない、といかにも食べたそうな表情で語ってくれた。スタッフおすすめのラムを一杯あるいは二杯飲みつつ、シンプルかつ伝統ベースの料理をゆっくり味わう。そんな新らしいスタイルでラム&イタリア料理を楽しめる「ルメリア」が今ひそかにうけており、夜な夜なラム好きイタリア人たちが集まってくるのだ。

cafe 1926 firenze

Via Giovan Battista Niccolini, 30r Firenze
Tel+39-055-2346296
cafe1926firenze.com

この記事の執筆者
1998年よりフィレンツェ在住、イタリア国立ジャーナリスト協会会員。旅、料理、ワインの取材、撮影を多く手がけ「シチリア美食の王国へ」「ローマ美食散歩」「フィレンツェ美食散歩」など著書多数。イタリアで行われた「ジロトンノ」「クスクスフェスタ」などの国際イタリア料理コンテストで日本人として初めて審査員を務める。2017年5月、日本におけるイタリア食文化発展に貢献した「レポーター・デル・グスト賞」受賞。イタリアを味わうWEBマガジン「サポリタ」主宰。2017年11月には「世界一のレストラン、オステリア・フランチェスカーナ」を刊行。