2008年にスタートした「ふるさと納税」は、都会に住んでいても、生まれ育った故郷や応援したい自治体に対する寄付を、税制を通じて後押しする制度です。

2015年に制度が見直され、利用しやすくなったのに加えて、寄付した人に自治体から送られる返礼品が年々豪華になっていったこともあり、利用者が急増。寄付金額の合計は、発足当初(2008年度)の81億円から、2017年度は3653億円まで増えました。

返礼品に和牛や海産物、フルーツなどをもらえる自治体を選んで「ふるさと納税」していたが…

返礼品で人気なのは蟹や和牛など(写真はズワイガニ)

【ケーススタディ】東京都港区在住のルリコさん(48歳・専業主婦)も、ブームにのって3年前から夫名義で「ふるさと納税」を始めたひとりです。

「大学生と高校生の息子ふたりは食べ盛りで、毎月の食費は10万円以上になります。少しでも食費を節約するために、返礼品に和牛や海産物、フルーツなどをもらえる自治体を選んでふるさと納税をしていました」(ルリコさん)

ところが、寄付金をたくさん集めたい自治体同士の返礼品競争が過熱。監督官庁である総務省は、再三、自治体に対して「良識のある対応」を通知していましたが、過度な返礼品によって寄付者を募る自治体は亡くならず、とうとう国が規制に乗り出すことになってしまったのです。

その結果、今年6月から制度が見直されて、総務大臣が指定した自治体以外への寄付は、税制優遇の対象にならなくなります。これは、すべての自治体がふるさと納税に対応しているわけではなくなる、ということ。

2019年6月以降にふるさと納税する場合、どのようなことに気をつければいいのでしょうか? 前編に引き続き、暮らしのお金に詳しいファイナンシャル・プランナーの黒田尚子さんにアドバイスしていいただきます。

前編「ふるさと納税が改正されたと聞きました。楽しみだった返礼品はどうなりますか?」

新基準に適合している自治体かどうか、確認してから寄付先を選ぼう

ふるさと納税は、「納税」という言葉が使われていますが、実際には都道府県や市区町村に対する寄付を指します。

これまでも、自治体に寄付をすると「寄付金控除」の対象となり、確定申告することで税制優遇を受けることができました。ふるさと納税は、これを使いやすくしたもので、所得に応じた控除額の上限はあるものの、その範囲内であれば、寄付したお金のうち、自己負担額の2000円をのぞいた全額が控除対象になります。

また、寄付先が年間5自治体以内であれば、「ワンストップ特例」といって、寄付した自治体に申請書を送るだけで、確定申告しなくても、所得税と住民税から控除を受けられるのも特徴です。

今年6月の制度改正でも、こうした基本の仕組みは変わりません。全額控除できる寄付金の額も同じで、ワンストップ特例も維持されます。

「変更されるのは、寄付金の控除対象となる自治体です。これまでは、どこの自治体に寄付をしても対象になりましたが、6月以降の寄付からは総務大臣の指定を受けた自治体しか、ふるさと納税の対象にならなくなります。ですから、6月からは、①対象自治体かどうか、②自分の控除限度額はいくらか、③ワンストップ特例が受けられるかどうか、の3つを確認したうえで、ふるさと納税をする必要がでてきます」(黒田さん)

ふるさと納税できる上限額とは? あなたの条件をチェックしてみよう、ワンストップ特例にも注意!

■チェックポイント1:ふるさと納税の対象自治体かどうか?

2019年6月以降、ふるさと納税の対象になるのは、以下の基準を満たしている自治体です。

●ふるさと納税の新たな指定基準

 ①寄付金の募集を適正に実施する地方団体
 ②(①の団体で)返礼品を送付する場合には、以下のいずれも満たす地方団体
 ・返礼品の返礼割合を3割以下とすること
 ・返礼品を地場産品とすること

4月11日現在、東京都を除く、すべての道府県と市区町村が、ふるさと納税の参加申請をしていますが、実際に対象になるのは、上の要件を満たしている自治体で、5月中旬をめどに発表されます。

総務省が実態調査を行った昨年11月以降も、ふるさと納税の趣旨に反して、地場産品以外のものや、寄付金に対して返礼割合が3割を超える返礼品を扱ったりして、過度な寄付金を集めていた自治体は、指定されない可能性が高くなります。

対象外の自治体に寄付をした場合は、ふるさと納税の控除対象にならないので、ワンストップ特例で簡単にお金を取り戻すことはできません(ただし、通常の寄付金控除の対象になるので、確定申告でお金を取り戻すことは可能)。

ですから、6月以降は、ふるさと納税する前に、まずは総務省のホームページなどで、控除対象となる自治体かどうかを調べる必要が出てきます。

チェックポイントはこの3つ

■チェックポイント2:自分の控除限度額はいくらか?

 次に確認したいのが、自分が控除できる寄付金の額です。前述したように、ふるさと納税は、寄付したお金のうちの2000円の自己負担額をのぞいた全額が、所得税や住民税から払い戻される制度ですが、税金の払い戻しを受けられる金額は、年収や家族構成などに応じて上限があります。

「ふるさと納税で還付を受けられるのは、自分が納めた所得税と住民税の範囲内なので、それ以上に寄付すると、返礼品はもらえても、税金の払い戻しは受けられず、家計からの持ち出しになってしまいます。つまり、高いお金を払って、返礼品を買うことになってしまうので、上限額を確認してから寄付するようにしましょう」(黒田さん)

 ルリコさんの夫、サトルさん(51歳)は、情報通信の企業に勤めるサラリーマンで、年収は1500万円。専業主婦の妻のルリコさんの配偶者控除、大学生と高校生の息子2人の扶養控除、社会保険料控除などを差し引いて計算すると、サトルさんは36万1000円までは、ふるさと納税で2000円の自己負担分を除いた全額が控除対象になります(総務省「ふるさと納税ポータルサイト」の「全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」より)。

 サトルさんは、その他の所得控除は受けていませんが、同じ年収や家族構成でも、医療費控除や住宅ローン控除、生命保険料控除、雑損控除など、その他の控除を受けていると、ふるさと納税の上限額が変わってきます。上限額の目安は、ふるさと納税の紹介サイトなどで試算できるので、寄付をする前に、一度確認しておくといいでしょう。

■チェックポイント3:自分はワンストップ特例を受けられるかどうか?

税金の控除を受けるためには、原則として確定申告する必要があります。ただし、ふるさと納税に関しては、一定の要件をクリアしたサラリーマンなら、確定申告が免除される「ワンストップ特例」の適用を受けられます。

●ワンストップ特例を受けられる要件

・寄付した地方自治体が5か所以下
・寄付した地方自治体すべてにワンストップ特例の申請書を提出した
・ふるさと納税以外に確定申告するものがない

寄付先の自治体が5か所以内で、そのすべてに「寄付金税額控除に係る申告特例申請書(特例申請書)」に必要事項を記入して提出すると、ワンストップ特例が適用され、確定申告をしなくても、寄付したお金を取り戻すことができます。ワンストップ特例を利用した場合、2000円を除いた寄付金の全額が、寄付した年の翌年の住民税から差し引かれます(所得税の還付はありません)。

でも、ルリコさんは、毎年、15~16カ所の自治体に寄付をして、さまざまな返礼品をもらっています。こうしたケースでは、ワンストップ特例は利用できないので、確定申告をする必要があります。

確定申告してお金を取り戻す場合は、戻る還付金の総額は同じですが、所得税と住民税の両方から還付を受けることになります。たとえば、ルリコさんが、今年も上限額の36万1000円を寄付した場合で計算してみましょう。

●所得税から還付されるお金の目安 【(寄付金-2000円)×所得税率】
 ↓
【(36万1000円-2000円)×23%=8万2570円】

●住民税から還付されるお金の目安 【寄付金-2000円-所得税の還付金】
【36万1000円-2000円-8万2570円=27万6430円】

確定申告すると、まず所得税から8万2570円が、申告から1~2か月後に還付されます(復興特別所得税は考慮していません)。残りの27万6430円は住民税から控除されますが、実際に差し引かれるのは翌年6月~再来年5月。この間、毎月の住民税が2万3000円程度、減額されます。

ルリコさんのように、6か所以上の自治体に寄付した場合だけではなく、医療費控除や住宅ローン控除など各種控除を受けている人、自治体にワンストップ特例の申請書を出し忘れた人も、確定申告の必要があります。

手続きしないと、税金の還付は受けられないので、毎年2月~3月に行われる確定申告時期に、忘れずに申告しましょう。

「寄付先が5か所以内で、ワンストップ特例の申請をしたのに、行政での手続きが漏れていて、きちんと控除されないケースも報告されています。これでは税金を二重払いすることになってしまうので、4~5月頃に届く『住民税決定通知』で、ふるさと納税が適用されているかどうか確認しておきましょう。もしも、控除されていない場合は、寄付先の自治体に問い合わせて、控除の手続きをしてもらってください」(黒田さん)

ふるさと納税したお金が「より良い社会づくり」に使われば、自分にも利益として返ってくる

ふるさと納税の対象でない自治体に寄付をしても、節税にはならない

 ふるさと納税は法改正されて、今年6月以降の寄付については、寄付金に対する返礼品割合3割以下、地場産の返礼品を用意しているなど、一定の要件を満たした自治体への寄付しか控除対象にならなくなります。返礼率の高い商品やギフト券などはなくなる可能性もあり、これまでよりも、旨味は減っていくかもしれません。

 それでも、前編でもお伝えした通り、寄付したお金がよりよい社会づくりに使われれば、それが循環して自分たち暮らしやすい社会になるかもしれません。

ゴールデンウィーク明けの5月中旬には、対象になる自治体が発表されるので、今年もふるさと納税する予定の人は、本来の趣旨に立ち返って、寄付先の自治体を選んでみてほしいと思います。

黒田尚子さん
ファイナンシャル・プランナー(CFPⓇ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)、消費生活専門相談員資格、CNJ認定乳がん体験者コーディネーター
(くろだ なおこ)1969年、富山県生まれ。立命館大学法学部卒、1992年に(株)日本総合研究所に入社。在職中にFP資格を取得し、1998年に独立系FPとして転身。社会保障から金融資産の運用まで、マネーに関する幅広い分野に精通し、各種セミナーや講演・講座の講師、新聞・書籍・雑誌・ウェブサイト上での執筆、個人相談などを行っている。また、消費生活専門相談員の資格も持ち、消費者問題にも取り組んでいる。おもな著書に、『親の介護は9割逃げよ』(プレジデント社)、『がんとお金の本』(ビーケーシー)などがある。
この記事の執筆者
1968年、千葉県生まれ。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。医療や年金などの社会保障制度、家計の節約など身の回りのお金の情報について、新聞や雑誌、ネットサイトに寄稿。おもな著書に「読むだけで200万円節約できる!医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30」(ダイヤモンド社)がある。