東京都港区在住のルリコさん(48歳・専業主婦)は、夫のサトルさん(51歳・会社員)、長男のショウさん(20歳・大学3年生)、次男のケントさん(16歳・高校2年生)の4人家族。食べ盛りの息子ふたりの胃袋を満足させるため、3年前から返礼品でもらえる高級食材に注目して、夫名義で「ふるさと納税」を始めました。

 情報通信の企業に勤めているサトルさんの年収は1500万円で、所得税と住民税から全額を控除できるふるさと納税額の目安は36万1000円です(限度額の目安は、総務省「ふるさと納税ポータルサイト」より。妻が専業主婦、大学生と高校性の子ども1人ずつ、社会保険料は15%の場合)。

そこで、ルリコさんは、税金の全額控除を受けられる範囲で、複数の自治体に数万円ずつふるさと納税をして、返礼品としてお米や高級和牛などの食品を受け取っていました。

ふるさと納税の仲介サイトで人気が高いのは和牛、蟹、フルーツなど

「育ち盛りの息子2人に加えて、夫もよく食べるので、毎月、食費が10万円以上かかります。だから、寄付先は、ふるさと納税サイトを見て、牛肉や豚肉、カニや刺身などの海産物、フルーツ、お米などを返礼品としてくれる自治体を探して決めています。寄付した分のお金は税金から控除してもらえるから、実質的にはお金をかけずに高級食材が手に入るので、一石二鳥。今年も、ふるさと納税で食費を節約しようと思っていたのですが……」(ルリコさん)

先日、家事をしながら聞いていたラジオから、「ふるさと納税が法改正された」といったニュースが流れてきてビックリ。どうやら、寄付金をたくさん集めたい自治体による返礼品競争が過熱したため、今年6月から制度が見直されることになったようなのです。

「豪華な食材や商品券をもらえるのが、ふるさと納税の魅力だったのに……。法改正されたら、返礼品はどうなるのでしょうか?」(ルリコさん)

本来の趣旨を大きく外れて、寄付者獲得のための返礼品競争が過熱

ふるさと納税は、2008年の税制改革によって導入された制度で、高齢化や人口の流出によって、厳しい財政事情を抱えている地方自治体を応援する目的でつくられたものです。

地方自治体は、そこで生まれて暮らしている子どもに対して、成長するまで医療や教育、福祉など、さまざまな面からサポートを行うために予算を使っています。そうして育った子どもたちも、働いて収入を得るようになると納税義務が発生しますが、住民税の納税先は、その時に暮らしている都道府県や市区町村で、必ずしも子ども時代にお世話になった故郷の町とは限りません。

都市への一極集中が進むなか、人口が流出する地方自治体の財政は先細る一方です。ふるさと納税は、こうした厳しい地方財政を改善するために、税制を通じて故郷に貢献するためにつくられた仕組みで、都会に住んでいても、自分の故郷や応援したい地方自治体に寄付すると、税制優遇を受けられます。

「納税」という言葉が使われていますが、実際には都道府県や市区町村に対する寄付です。通常、自治体に寄付をした場合、確定申告をしても寄付したお金の一部しか控除を受けられませんが、ふるさと納税は、自己負担額の2000円をのぞいた全額が控除対象になる、お得な制度です(ただし、税金から全額控除できる金額は一定額まで)。

2017年には受入件数1730件、寄付金額は3653億円にまで拡大

米国製のタブレットや通販サイトの商品券など、その地域でつくられていない、縁もゆかりもない返礼品が増加

 発足当初の2008年度は、ふるさと納税の受入件数は全国で約5万件、受入額は81億円でしたが、2015年に制度改革が行われ、寄付枠が増額されたり、確定申告しなくても住民税の減免が受けられる、ワンストップ特例が創設されたりしたことで、利用者が増加。2017年度は、受入件数1730件、寄付金額は3653億円となっています。

ふるさと納税の普及に貢献したのが、各自治体が寄付した人に送る「返礼品」です。当初は、地場産の食材、地元企業で生産されている加工品や工業製品などが送られていましたが、寄付者を獲得するために、一部の自治体が、地場産ではない高級食材や工業製品、ギフト券や旅行券などを返礼品として扱ったり、寄付に対する返礼品の還元率を謳ったりするようになりました。

これを見ていた他の自治体も、負けじと追随。ネットで簡単に申し込みができる民間の仲介サイトがつくられたことも、過度な返礼品競争を巻き起こす一因となりました。

暮らしのお金の情報に詳しい、ファイナンシャル・プランナーの黒田尚子さんは、ふるさと納税の返礼品騒動についてこう話します。

「ふるさと納税の本来の趣旨は、お世話になった故郷や応援したい自治体に寄付することで、地方行政の活性化を図るものです。でも、返礼品の割合が、寄付の3割を超える自治体が相次ぐようになり、問題視されるようになりました。そこで、監督官庁である総務省は、本来の趣旨に戻すために地方税法を改正し、今年6月から制度が見直されることになったのです」(黒田さん)

2019年6月から、指定自治体以外は寄付しても、税制優遇が受けられなくなる!

故郷に還元

 制度改正の結果、今年6月から、以下の基準を満たさない指定外の自治体に寄付しても、税制優遇を受けられなくなります。

■ふるさと納税の新たな指定基準

 ①寄付金の募集を適正に実施する地方団体

 ②(①の団体で)返礼品を送付する場合には、以下のいずれも満たす地方団体
 ・返礼品の返礼割合を3割以下とすること
 ・返礼品を地場産品とすること

 今後、ふるさと納税の対象になる自治体は、5月中旬をめどに発表されますが、2018年11月以降の返礼品の送付状況など、自治体の対応によって判断されます。

たとえば、ふるさと納税を募集する歳に、返礼品などの情報が大部分を占めるようなパンフレットを作成していたり、ホームページや民間業者と契約したポータルサイトなどで「お得」「コスパ(コストパフォーマンス)」「ドカ盛り」「圧倒的なボリューム」「おまけ付き」「セール」「買う」「購入」「還元」などの表現を使っていたりした自治体は、対象からはずれる可能性があります。

 また、これまで曖昧だった地場産品の基準も定義づけられ、原材料の生産か製造・加工のどちらかが、その自治体で行われたものに限定されることになりました(ただし、近隣の自治体と協力して作った共通の返礼品も認められます)。

今後は、原則的に返礼品の内容は地場産品に限られ、その地域でつくられていない原材料でつくられた食品や加工品、電気製品、ギフト券などは扱えなくなるため、返礼品から消えていく可能性もあります。

安心できる社会づくりをしている自治体に「ふるさと納税」するのも、有意義なお金の使い方

自分が望む社会づくりにお金を使ってくれる自治体は?

これまで返礼品を大盤振る舞いしていた自治体は、今後、ふるさと納税の対象自治体から外され、豪華な返礼品は減っていく可能性が大。新制度が適用されるのは、今年6月以降なので、大阪府の泉佐野市のように、ギリギリまでギフト券を返礼品として還元するキャンペーンを行っている自治体もあります。

少しでも経済的に得をしたいなら、こうした自治体に今のうちにふるさと納税をしておくでもひとつの手段です。

 とはいえ、ふるさと納税の制度自体がなくなるわけではありません。適切に運用している自治体に寄付すれば、今後も税制優遇を受けることは可能です。

そもそも、ふるさと納税は、自分が応援したい自治体への寄付を促し、地域活性化のために創設されたものです。御礼としてもらえる返礼品は、金額の換算がしやすく、その分が家計に還元されるので、わかりやすいメリットではあります。そのため、ついつい豪華な返礼品をもらえる自治体に寄付が集中しがちですが、自分が望む社会づくりにお金を使ってくれる自治体に寄付することで得られるメリットもあります。

自治体が介護サービスなどを充実させれば、親元から離れて暮らす子の交通費を抑えられる

たとえば、離れて暮らしている親に介護が必要になった場合、子どもは高い交通費をかけて、幾度となく親の面倒を見るために帰省することになるかもしれません。でも、親が暮らしている自治体が、寄付金を使って高齢者の見守りなどの介護サービスをしてくれれば、子どもが頻繁に帰らなくても親は安心して暮らせて、結果的に帰省費用を抑えられる可能性もあるからです。

寄付したお金が回りまわって自分の暮らしを助けてくれるので、目先の損得だけではなく、子育てや教育、介護などの独自事業、環境整備など、自分が望む社会づくりに使ってくれる自治体を選ぶようにしたいもの。

「通常の税金は、納税者が使い方を決めることはできません。でも、ふるさと納税は、自分が支払った税金の使い道を自分で選択できるという点で画期的な制度です。返礼品のように金額換算できなくても、自分や家族が暮らしやすい事業に寄付金を使ってくれる自治体にふるさと納税することも、実は有意義なお金の使い道です」(黒田さん)

 今回の制度改正を機に、返礼品だけではなく、ふるさと納税したお金の使われ方にも着目して、長い目で見て自分たちがお得に暮らせる事業を行っている自治体への寄付を考えてみてはいかがでしょうか?

 では、今後、ふるさと納税をする場合は、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。後編では、具体的な制度内容と手続き方法について確認しておきましょう。

黒田尚子さん
ファイナンシャル・プランナー(CFPⓇ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)、消費生活専門相談員資格、CNJ認定乳がん体験者コーディネーター
(くろだ なおこ)1969年、富山県生まれ。立命館大学法学部卒、1992年に(株)日本総合研究所に入社。在職中にFP資格を取得し、1998年に独立系FPとして転身。社会保障から金融資産の運用まで、マネーに関する幅広い分野に精通し、各種セミナーや講演・講座の講師、新聞・書籍・雑誌・ウェブサイト上での執筆、個人相談などを行っている。また、消費生活専門相談員の資格も持ち、消費者問題にも取り組んでいる。おもな著書に、『親の介護は9割逃げよ』(プレジデント社)、『がんとお金の本』(ビーケーシー)などがある。
この記事の執筆者
1968年、千葉県生まれ。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。医療や年金などの社会保障制度、家計の節約など身の回りのお金の情報について、新聞や雑誌、ネットサイトに寄稿。おもな著書に「読むだけで200万円節約できる!医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30」(ダイヤモンド社)がある。