「御采配」の「采配」は、もともと意外なモノを指した言葉!

「御采配ありがとうございました」。上役やお世話になっている方へのお礼文によく使われる「御采配」という言葉。この言葉、実は使い方を間違いやすいということ、ご存知でしたか? 文化庁の『国語に関する世論調査(平成20年度)』によれば、この言葉の正しい使い方を問われる出題で、正解できた日本人はなんと、3割以下

目上の方にお礼状を差し上げる際、うっかり使い方を間違えてしまったら大変ですね。Respect(尊敬される)女性から、Shame(残念な)女性にならないために、間違いやすい日本語について、いま一度おさらいして参りましょう。

まずは「采配」という言葉の意味を確認するために、クイズを1問出題します。あなたが選ぶのは、どちら?

【問題1】

「チームや部署に指示を与え、指揮すること」を表す言い回しとして正しいのは、次のどちら?

1:采配を振る

2:采配を振るう

あなたはRespect? Shame? …正解は?

采配は…振るの?振るうの?
采配は…振るの?振るうの?
どう違うのか、わかりますか?
どう違うのか、わかりますか?

1:采配を振る が正解!

采配」とはもともと、武将が部隊などの陣頭指揮をとる際に使用していた、房に柄をつけた道具のこと。采配は時を経て装飾を施した団扇の形になり、「軍配」に変化します。現代でも大相撲の行事が使用している「軍配」のルーツが「采配」という道具です。

「采配を振る」は、振る動作=部隊などの指揮をすることそのもの、を意味するようになった慣用句です。選択肢2のように、「振るう(「行動がさかん」もしくは「十分に発揮する」の意味)」と組み合わせると、意味が通らず、基本的に「采配を振る」とひとつなぎで使用します。「社長自ら采配を振る」というような使い方をします。「振るう」という言葉は「経済力が振るう」「成績が振るわない」といった表現に使われるため、一緒くたに勘違いしていた、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

拳を振るう、権力を振るう、など「振るう」を使う言葉があるため采配も「振るう」と思われがちですが、間違いです
拳を振るう、権力を振るう、など「振るう」を使う言葉があるため采配も「振るう」と思われがちですが、間違いです

この「采配を振る」というひとつなぎの言葉の意味をそのまま込めて、目上の方に「御采配」という表現を使用することがあります。

…というところで、もう一問、クイズです。

【問題2】

上司へのお礼文で【御采配】を正しく使用しているのは、次のどちらのシチュエーション?

1:(上司が大切なプレゼンに際し的確な指示をくれた結果、勝利した件に関し)
「素晴らしい御采配をいただき、チーム一同、勉強させていただきました」

2:(上司が職場にドリンクサーバーを導入してくれた結果、チームの士気があがった事に関し)
「素晴らしい御采配をいただき、心から感謝しております」

…正解は?

御采配…使用できるシチュエーションが意外と狭い言葉です。
御采配…使用できるシチュエーションが意外と狭い言葉です。
言葉のルーツと照らし合わせると、正解が導き出されますね。
言葉のルーツと照らし合わせると、正解が導き出されますね。

もうおわかりですよね?1が正解です!

「御采配」は、勝負に際した集合体への指示に対してのみ使用できる言葉です。2のようなシチュエーションでは「御采配」ではなく「御差配(取り扱う、世話をする、指示する)」が使用できます。

「御采配(ごさいはい)」「御差配(ごさはい)」のふたつは、音も字も似ており、両方とも目上の方に対して使用する言葉なので、混同してしまうというのも無理からぬお話ですよね。

しかし「御采配」はかなり用途が限定されるので、ふさわしくないシーンでうっかり使用しないよう、注意いたしましょう。

周囲の方々から一目置かれる素敵なビジネスパーソンでいるために、普段から言葉の表現に磨きをかけて参りましょうね!

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Precious.jp編集部 
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参考資料:『国語に関する世論調査』(平成20年度)文化庁
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ILLUSTRATION :
小出 真朱