人材採用のコツは?

――人材の採用に苦しんでいる企業も多いと思うのですが、大西さんが社員を採用するときの基準を教えていただけますか?

弊社が社員を採用するときに基準としていること、それは経済の原理原則をきちんと理解して、かつ、コンサルタントとして先ほどの3つの能力を有しているかどうか。そして、正直な人間であるか。自分の事をオープンかつ正直にお話しできない方は、プライドが邪魔していることが多いように思います。

プライドが邪魔すると、自分のいる場所を正確に把握することができません。現在の自分のいる場所と目指す場所を理解して、そこを埋める努力ができる人、自分の役割がわかって、それに対して成果を出す、という意欲があり、実現してきた具体的な実績があることを重要視しています。

若ければ学生時代に、「部活動を頑張った」「コンテストに挑戦した」というようなことでも、十分な実績です。過去は関係がないという考え方もありますし、未来は作り出せるものですが、「今の自分は過去からの積み重ね」でできています。採用する際に、応募して下さった方の頑張った経験を評価し、将来の活躍を類推することは当然ではないでしょうか。

会社経営について

――会社経営と聞くと、とても大変そうですが、実際はいかがでしょうか?

単純に言うと、会社経営の基本は「売り上げを立てて、経費を引いて、利益を出して、税金を払って社会に還元し、その残りを翌年以降にどのように活用して、新たな価値をどうつくっていくのか」ということです。

その中で一番難しいこと。それは、「お客様からお金をいただくこと」=「売り上げを立てること」です。

お客様は、必要ないことには、お金を払いません。お客様からお金をいただくには、正しいサービスの提供が必要です。

――黒字を出せない経営者がいたとしたら、何かアドバイスはありますか?

道半ばなので、大したことを言える立場ではないのですが、「自身が素晴らしいと思えることを、仕事にしてください」とお伝えしたいです。私は今の人材紹介の仕事は、天使のような仕事だと思っています。

「これをもって社会を良くしたい」とか、「これが社会のためになっている」というような、強い信念がないと長くは続かないと思います。

お客様からお金をいただくためには、お客様が価値があると思っていただけるサービスを提供することが基本。そのためにはサービスを提供する我々自身が、「そこに価値がある」と思って、提供しなければなりません。もしお金をもらえないのだとしたら、お客様がそれに対して、価値があると思っていないということです。

2019年の入社式で社員に囲まれている様子
2019年入社式の集合写真

会社経営における信念は「黒字経営をすること」

――信念を教えてください。

再度言いますが、企業というのは、お客様からお金をいただいて、経費を引いて、利益を出して、納税をする。納税をすることで社会貢献する。「お客様の求めるものを提供すれば、正しくお金をいただくことができ、黒字になるはず」というのが信念です。

一寸先は闇だと常に危機感を持っていますが、「黒字を出し続ける」という強いパッションがないと、黒字を出し続けられないですよね。NPOなどとは違うと思いますし、必ずしも1年単位で利益を出す必要のない業種や局面もありますが、中期的に黒字を出せずに納税できない企業は、企業として健全ではないと、いつも自分を戒めています。

企業は社会に活かされています。社会に還元する第一歩は納税であり、その納税資金を政府に委託して、社会インフラをつくってもらっているのです。

――大西さんは、社員からどのような代表だと思われていますか?

聞いたことがないからわからないですけれど、「クールヘッド、ウォームハート」で在りたいとは思っています。大学ゴルフ部でキャプテンを務めていたとき、部員に対して愛情が足りなかったと反省しています。だから今は、社員に愛情を持っていますし、それはいつも意識しています。

ゴルフから学んだことが、企業経営にも生きている

――ゴルフ部での経験は、会社経営になんらかの影響をしていますか?

とても影響しています。今考えると、当時は一生懸命やっていたけれど、ゴルフ部キャプテンとして、うまく部を回せていませんでした。合理性の追求に力を入れて、愛情を持つことを忘れていたように思います。また、長年、先輩たちが築いてきた部を、合理的に変えようとしていたこと、そのことは間違いだったと思っています。

そのとき、たまたま最高学年でキャプテンになっただけで、OB.OGを含めた体育会を変える権限はないのです。それなのに、組織を変えようとしていました。

当時の自分に、言いたいことがあります。

「この組織はおかしい」とか、「この会社は、こうするべきだ」とか、実際にそのことに対して影響を与えられないような立場の人が、経営者の方向性と違うことを言ったとしても、それはアウトサイダーでしかない、ということ。

そこに本当に良くしたいという信念があるのだとしたら、インサイダーとして会社とともに歩むか、自分で会社をやるか、だと思います。

トラブルにならないことの大切さ

そして、もうひとつゴルフから学んだ大切な事、それは「トラブルにならないことの大切さ」です。

ゴルフのフェアウェイキープ率とスコアは、相関関係にあります。2打目が真っ平な打ちやすいところから打てば良い球が打てて、結果として良いスコアで上がれます。

「プロより強いアマチュア」と称されたゴルファーの中部銀次郎氏は生涯、木にボールを当てたことがないと言われています。林に入ってトラブルにならないようなプレーをしていたことが想像できます。

崖の下からでは、練習と同じ球は打てません。トラブルシュートをうまくやるより、そもそもトラブルを起こさないことのほうが、全体に重要なんです。これは会社経営も一緒です。

ゴルフ場でスイングをしている大西さん
慶応大学体育会ゴルフ部時代の大西さん

働く女性へメッセージ

――大西さんご自身が3人のお子さんの育児中とのことですが、女性経営者の立場として女性と共有したいことはありますか?

私はジェンダー主義ではありませんが、仕事上、女性として見られるのは好きではありません。仕事は「やるか、やらないか」だけで、性別は関係ないと思っています。ただ、最近は、世の中の女性の働き方に意識がいくようになりました。

女性たちがみな、自分たちに上限を設けているように感じることがあります。「子育ては大変だから、仕事はこの程度で良いのでではないか」というような。優秀な女性たちが自分で上限をかけてしまうのは、もったいないと思っています。

「家事も育児も自分、もしくは夫がやらなければいけない」という強いこだわりをもっていらっしゃる方がいたとしたら、そのこだわりを少しだけ外してみることで、仕事、家事、育児の大変さは、だいぶ変わると思いますよ。

以上、株式会社コトラの代表取締役・大西利佳子さんに経営の信念、経営者へのアドバイス、働く女性へのメッセージを伺いました。

凛としたたたずまいで淡々とインタビューの受け答えをしていただきましたが、時折見せるやわらかい笑顔の中に、3人のお子さんを持つ母としての優しさや、社員に対する愛情を垣間見ることができました。

強い信念のもと、多くの社員を抱え辣腕を振るう女性経営者の姿に、同じ女性として尊敬の念を抱きました。大西利佳子さん、この度はインタビューに快く応じていただきありがとうございました。

この記事の執筆者
新卒で外資系エアラインに入社、CAとして約10年間乗務。メルボルン、香港、N.Yなどで海外生活を送り、帰国後に某雑誌編集部で編集者として勤務。2016年からフリーのエディター兼ライターとして活動を始め、現在は、新聞、雑誌で執筆。Precious.jpでは、主にインタビュー記事を担当。
EDIT&WRITING :
岡山由紀子