「褒めること」に特化したラジオ番組は何故生まれた? その真相に迫ります!

他人を褒めないより、褒めたほうがいいということがわかっていても、褒めすぎるとかえって相手に不信に思われたり、的外れに褒めてしまって感情を逆なでしてしまったり。適切に褒めることの難しさを感じている人も多いのではないでしょうか?

最近では、良かれと思って言ったことがハラスメントだと受け取られてしまうリスクもあり、その意味では褒めることの難しさが、以前よりも高まってきている感もあります。

そんな中、今年4月に「褒めること」に特化したラジオ番組『ホメラニアン』がスタート。毎週月曜日から木曜日20:00に週4回放送され、SNSでも非常に話題となっています。その企画者に、なぜ今「褒め」に特化した番組を実施するに至ったのか、その背景を取材しました。

■『ホメラニアン』は、頑張るリスナーを全肯定して褒める番組!

番組ロゴもかわいらしいのですが…
番組ロゴもかわいらしいのですが…

まず、『ホメラニアン』のホームページを見ていただきたいです。どう感じられましたか? かわらしいですよね? 実際に番組を聴いてみても、「頑張るあなたを全肯定~♪ ホメラニアン!!」と、極めて明るいトーンの番組です。ただ、しっかり聴いていくと…

リスナーの皆さんからメッセージが送られてきて、それをパーソナリティーの方が紹介していく構成になっている番組なのですが、

「39.7℃の熱が出て会社を休んでしまった。上司に迷惑をかけてしまい、申し訳ない」、「精神的な理由で会社を辞めてしまった。自分の情けなさを痛烈に感じていて、働いている人たちに申し訳なく思うのだけれど、だからこそ、働いている人たちに感謝を伝えたい」、「40歳で畑違いの部署に異動した。もう半年なるが、周りと打ち解けられないし、自分だけ仕事ができないように感じていて辛い」など、シビアな状況の中で投稿してきている。そんな風景が浮かびます。

■企画立案のきっかけは、ネガティブなネット文化と独身率50%時代

本日はこの番組を立ち上げた、TOKYO FM 執行役員 編成制作局長の森田太さんと番組プロデューサーの新野一孝さんにお話しを伺いました。

左が森田さん。右が新野さん。
左が森田さん。右が新野さん。

ーー「褒めること」に特化した番組は、これまでにないと思います。大変な衝撃を受けました。どのような時代の流れを感じられて、企画されたのでしょうか?

森田:東京近郊に住む人たちの動態、夜の時間帯をどのように生活しているのかを改めて調査してみたら、働き方改革の影響もあり、仕事が早くに終わって飲み歩く時代でもなく、帰宅して家で過ごしているクラスターも増えている、ということがわかりました。さらに、2035年の日本は独身率が48%になるという予測データも見つかりました。

昭和的な家族団らんは、すでに映画やドラマの中の世界になりつつあり、独りの時間を過ごす30-40代の女性に寄り添う番組コンテンツを発信していきたいと考えるようになりました。

さらにインターネットが社会のインフラになり、一般の人でも簡単に世の中に発信ができ、共感してもらえるようになった一方で、表現や発言の解放が進んだことで、わざと炎上を起こしたりする人たちも出てきています。インターネットを基準に世の中が動いていて、生活や人の心の在り方に歪みが生じています。

そんな混沌とした時代ですが、みんなが前を向いて生きていることが唯一の救いで、悩みや苦しみを抱えている人に、「日々を頑張っているアナタは素晴らしい」と伝えるラジオが必要だと思いました。時代の転換期を迎え、ラジオの聞かれ方も変化しており、新しい価値観とともに発信していかなくてはならない、と感じていました。

■コラムニスト・犬山紙子さんのTwitterのつぶやきで番組のコンセプトが決まった

左:月~火曜日のパーソナリティーの犬山紙子さん、右:水~木曜日のパーソナリティー関口 舞さん
左:月~火曜日のパーソナリティーの犬山紙子さん、右:水~木曜日のパーソナリティー関口 舞さん

森田:新しい時代の中で何を発信していくか、約半年くらい考えて続けていました。そんな中、企画会議でスタッフから「犬山紙子さんがTwitterで『自己肯定するラジオ番組をしたい』という旨をつぶやかれています」という意見があがり、その時、何かすべてのピースがかみ合ったような感覚を覚えました。

その翌日、犬山さんと直接会って、「普段は強がっているけれど、支えて欲しい、癒やして欲しいと思っている人を温かくつつみこむような番組を作りたいんです」とお伝えしたところ…

犬山さんも、「自分はダメだとか、自分は独りで寂しい」とか自己否定してしまったり、「あいつはダメだ、悪いやつだ」と他人を誹謗中傷するような否定の世界でなく、みんなを肯定していく世界観の番組をやってみたいとお考えだったようでして、ふたつ返事で、企画 を進めることになりました。

■街の一人一人の声と向かい、会話していく「寄り添うメディア」がラジオ

熱く語っていただきました。
熱く語っていただきました。

ーー犬山さんがいくつもあるメディアの中で「ラジオ番組」とおっしゃっていたのは、リスナーとの距離の近さのようなものが関係していますか?

新野:はい。あったと思います。

森田:ラジオでは以前から、街の人々の声をひとつひとつ、ていねいに取り上げてきました。市井の人たちに開放されたメディアです。リスナーとつくっていくメディアであり、リスナーがいないと成立しない、珍しいメディアだと思っています。

特に、『ホメラニアン』は生放送ですから、メッセージを送っていただいて、会話しながら進めていくようなつくりになっていますので、よりリスナーの方との距離が近いです。

新野:その他、あるリスナーさんのコメントに対して別のリスナーが反応していく連鎖が起こって、議論が盛り上がるのもラジオならではかと思います。

■番組開始の初週から、リスナーからかつてない量のメッセージが!

ーー番組の反響はいかがでしょうか?

新野:元々、20時台というのは、帰宅中だったりご飯の支度をしていたり、リスナーの皆さんがメッセージを送りにくい時間帯なので、メッセージがたくさん届く時間ではないのですが、『ホメラニアン』については、番組開始当初からたくさんのメッセージをいただきました。

森田:原稿用紙で20枚くらいは届いた記憶があります。まだ始まったばかりだったのに、「これは、神番組だ」、「TOKYO FMの財産だ」と言ってくださる方もいらっしゃいました。この時間帯でこれだけ反響がよかったのは、かつてなかったです。

新野:当初は女性をターゲットにした番組としてつくっていたのですが、男性からのメッセージも多いです。

■聞けば、褒め方・褒められ方のヒントがきっと見つかります

実際の『ホメラニアン』のスタジオで。
実際の『ホメラニアン』のスタジオで。

ーーPrecious.jpの読者の多くは、働く40代の女性です。番組をつくってこられたなかで、何か読者のコミュニケーションのヒントになるようなことはありますか?

新野:放送を聞いていただくのが一番いいです。例えば、先日は「自己肯定感の高め方」がテーマでした。ちょっとしたことなのですが、自分で独り反省会を控えるようにするとか、寝る前に今日1日の自分を褒めるなど、リスナーの皆さんのメッセージをきっかけに、ヒントをシェアできました。

堅いテーマばかりでなく、自分が自分を守る唯一の人ということで「月曜から甘やかし隊」など、バラエティに富んだ企画も実施しています。

例えば、月曜日の気分を上げるために、ネットショッピングで買った自分の好きな物を月曜日に届くようにしている、などといった投稿がありました。皆さん、いろいろな工夫をされているようです。


以上、話題沸騰中のラジオ番組『ホメラニアン』の魅力を、TOKYO FM 執行役員 編成制作局長の森田太さんと番組プロデューサーの新野一孝さんに伺いました。

まるで時代を写す鏡のような「褒める」こと、「褒められる」ことへの欲求の高まり。日常のコミュニケーションのヒントになる言い回しも多く学べるこの番組をぜひ一度、聴いてみてはいかがでしょうか? あなたのことを、あなたに近しいあるある出来事を何より全力で肯定してくれるので、励まされること請け合いです!

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