「目が疲れた」「最近なんだか体が重い」「寝た気がしない」「頭がボーッとして物忘れが多い」などの体の不調を感じたことはありませんか?
実はそれ、SNSやネットサーフィンなど、スマホやパソコンを長時間見ていて起こる「脳疲労」が原因かもしれません。しかも、その不調が続くと、病気に関わってくることもあるのだとか。
そこで疲労研究の第一人者と言われている、東京疲労・睡眠クリニックの梶本修身院長に、疲労の原因や、改善方法などを伺いました。
脳の中にある自律神経からサインが出ると、体の不調を感じる
「そもそも日常に感じる疲れは、体ではなく、脳で起きていること。血圧や体温などを調節して体を正常に保つ自律神経が疲れているから、『これ以上、体を酷使しないでくれ』という、脳の自律神経からのメッセージが疲労感なんです」(梶本先生)
疲れは体ではなく脳で起こっているなんて、意外ですよね! では、「脳疲労」が起こる原因はいったい何なのでしょうか?
「仕事や日常生活ではもはや欠かすことができなくなっている、スマートフォンやパソコン。これが脳疲労を引き起こす、大きな要因になっています。
スマホやパソコンから得られる情報は、無限で莫大な情報量。SNSや流行の動画アプリは自分の興味や関心に合わせて情報を次々に表示してくれますが、これにより、脳の覚醒・興奮状態が長時間続いてしまうことになります。そのせいで、緊張・集中を維持する自律神経が疲れてしまうんです。
さらに、脳の覚醒・興奮状態が長時間続くと、疲労が増してくるため、同じ姿勢でいることでの体のコリで疲れを知らせたり、ブルーライトや画面のまぶしさによる刺激で眼精疲労が起き、『この状態を早く止めて!』と脳からサインを送るのです。これが『脳疲労』です。
長時間のスマホ操作のほかに、仕事やスポーツなどの生活の中で疲れを感じたときも、『飽きてきた』と感じたり眠くなったりします。飽きたり眠くなったりするのは、疲労のファーストサインとも言えます」(梶本先生)
脳はあらゆる方法で「体を休めて」とメッセージを送っているのですね。では、この脳からのメッセージを無視し続けると、どうなるのでしょうか。
「自律神経の過労状態が続くと、頭痛、肩こり、冷え性など様々な体の不調が起こります。また、集中力がなくなったり、物忘れや何に対しても意欲がわかないということも当然起こります。
さらにひどくなると、糖尿病や高血圧、生活習慣病などのリスクも高まるので注意が必要です」(梶本先生)
脳からのメッセージを受け止め、すぐに休息をとることが重要とのこと。では、脳疲労を予防するには、どういった方法が有効なのでしょうか。
脳疲労を予防する3つのコツは「横向き」「寝る前」「鶏むね肉」にあり
■1:睡眠が疲労を取り除く!理想の寝姿勢は横向き
自律神経の疲れを取り除くには、質のいい睡眠を取ることが第一。そして、そのためには寝方も重要なのだそう。
「睡眠に最も適するのは『横向き』です。気道を確保できるのでいびきを防止でき、質の高い睡眠が得られます。
枕は、横向きになったときに一番ラクなものを選んでください。ある程度の高さと、しっかりした素材(高反発素材)を選ばないと、首が変に曲がって体に負担が増します」(梶本先生)
「抱き枕を抱えて眠ると横向きの姿勢が安定します。抱き枕を片脚で抱える『シムス体位』がベストです(写真参照)。睡眠中の体の負担を軽減するほか、血流がスムーズになる、いびきを抑える、体温調節がしやすいという理想の睡眠姿勢です」(梶本先生)
そして、もうひとつ重要なのが、寝る環境。
「夏は、『健康のために』と就寝時に冷房を切る人もいますが、逆効果です。タイマーを利用しても夜中に暑さで目を覚ましてしまい、安眠が確保できません。私は朝まで『つけっぱなし』をおすすめしています。
また、マンションなどにお住まいの方は窓を閉め切っていて、湿度が高くなりがちです。除湿をするか、エアコンで空調管理をするほうが、質のいい睡眠がとれます。
それから、冷感シートやタオルケットは使わないほうがよいです。基本は『頭寒足熱』がベスト。寝るときは、心臓から下は温かく、頭は冷えているほうがいいので、布団を脇の下まで掛けて寝てください。すると、エアコンの空調に晒されている頭だけが、冷えた状態になります。
脳を冷却すると、疲れが早く取れます。空気を冷やして、鼻呼吸をして、鼻から入った空気で脳を冷やすことが効率のいい方法です」(梶本先生)
■2:寝る前のスマホは絶対NG!
自然な入眠を促すには、生活習慣の改善も必要です。リラックスしているときに働く副交感神経を優位にできるように過ごしましょう。
「寝る1〜2時間前を入浴タイムとすると、質のいい睡眠につながります。シャワーだけでなく湯ぶねにつかることも、血流をよくして疲労をとるのにいい方法です。
血流をコントロールしているのも自律神経なので、流れがスムーズになれば、自律神経の乱れも改善します。心臓から下の血流が悪くなりがちなので、心臓から下だけを温める半身浴がおすすめ。
汗をかくと、自律神経が働いてしまうので、38度や39度くらいのぬるめのお湯がベストです」(梶本先生)
スマホやパソコンを見るのもお風呂までで終了させると、疲労回復には大きな効果があるそう。
「特に、寝る前のスマホは絶対NGです。興味関心で脳を興奮させてしまい、眠気をジャマしてしまうので控えてください。ブルーライトの眩しさの影響よりも、脳を楽しませてしまうことのほうが、圧倒的に睡眠に悪影響を及ぼし、その結果、脳疲労を蓄積することになります。
寝る前の部屋の明かりは間接照明にし、暗めのオレンジ色の光にするとよいでしょう。睡眠を促すメラトニンが分泌されやすくなります。
強い光は、交感神経が優位になるので、夜に明るい部屋にいたり、コンビニエンスストアに行くのはおすすめしません」(梶本先生)
■3:疲労対策には、鶏むね肉がおすすめ
疲れたら焼肉などのスタミナ料理を食べて英気を養うという人もいますよね。実は、それも要注意なのだとか。
「焼肉やスタミナ料理は、消化や吸収に余計なエネルギーがかかります。疲れを感じたときは、消化に良いものを口にして、体に負担をかけないよう意識してみてください。
食材で積極的に摂ってもらいたいのは、鶏のむね肉。『イミダペプチド』という成分が、豊富に含まれているからです。
もともと脳の中にあるイミダペプチド成分が、自律神経の神経細胞がさびるのを防いで、さまざまな疲労を抑えてくれているんです。
人間は、頭をよく使うことにより、脳の消耗が激しい上に、加齢とともにこのイミダペプチド成分が減少していくので、食べ物やサプリで補うとよいでしょう。
市販されている鶏むね肉であれば、100gで約200mgのイミダペプチドを摂ることができ、毎日食べ続けて、2週間以上摂取すると、疲労対策になります。毎日の摂取が難しい場合は、イミダペプチドを200mg含有したサプリメントドリンクを補完的に利用するのもよいでしょう。
消化にも自律神経を働かせなければならないので、疲労につながります。なので、日常的に早食いの人はゆっくり食べるクセをつけて。
また、安眠できるように、飲食は寝る3時間前までにすませてくださいね」(梶本先生)
日頃の疲れがとれにくい方は、「脳疲労」状態に陥っていることを疑って、ぜひ本記事で紹介した回復方法を試してみてください。睡眠、食事などの生活習慣を見直してみるだけでも、疲労をコントロールできるかもしれません。
東京疲労睡眠クリニック
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 宮平なつき