マリー・アントワネット、ウィンザー公爵夫人、ジャクリーン・ケネディ・オナシスのジュエリーが出品された「サザビーズ」の魅力とは?
2018年11月にジュネーブで開催された「サザビーズジュエリーオークション」では、ブルボン=パルマ王家によるロイヤルジュエリーコレクションが出品されるという、歴史的な出来事がありました。
それに携わった女性オークショニア(競売人)が、数々の名ジュエリーを扱ってきたダニエラ・マシェッティ氏です。来日したダニエラ氏に、そのオークションの詳細、これまでに愛でてきたジュエリーの印象的なエピソード、さらに「サザビーズのオークションでジュエリーを手に入れることの価値」を伺いました。
女性オークショニア、ダニエラ・マシェッティ氏に聞く、ブルボン=パルマ王家のジュエリーが出品された経緯とは?
ダニエラ氏は「歴史が長いヨーロッパのジュエリーは、貴族やセレブリティーなどの来歴があるものが多く、そこにパーソナリティーや生き方がにじむもの。それを知ってつけることで、またジュエリーの魅力が増す」と語ります。
300年にも渡るブルボン=パルマ家のコレクションから、「王冠を賭けた恋」のウィンザー公爵夫人が所有したジュエリー、さらにはマリア・カラスやエルトン・ジョンのジュエリーまで、数々の名ジュエリーのオークションに携わったからこそわかる、サザビーズジュエリーオークションの魅力を教えてもらいました。
Q1:マリー・アントワネットのジュエリーなどブルボン=パルマ家の資産は、どのような経緯でオークションに出品されることになったのでしょうか。
ブルボン=パルマ家とのやりとりが始まったのは2000年ぐらいのことです。当初は、「保険をかけるために、どれぐらいの市場価値があるのか知りたい」という相談でした。末裔のご家族は世界各国に散らばっており、サザビーズのスペシャリストたちが、各地に出向いて査定を行いました。
何年もかけておつきあいをするうちに、この素晴らしいジュエリーを点在させておくより、美しいホールコレクションとして市場に出したほうがいいのでは、という考えを示されるようになったのです。そこで1年をかけて、膨大なブルボン=パルマ家のコレクションカタログを制作し、2018年のオークション出品へと至りました。
Q2:長年ジュエリーを見てきたダニエラさんですが、それらを見てどう感じましたか?
美しく壮大なコレクションに、鳥肌が立ったというのが率直な感想です。特にハイライトとなった、マリー・アントワネットの天然パールとダイヤモンドのペンダントトップ(上写真)は、印象的でした。査定をした部屋に、それを身につけている末裔の肖像画が飾ってあったのです。
絵を背景にしながらジュエリーを眺めていると、マリー・アントワネットが実際につけていたことがよりリアルに感じられました。彼女の運命的な生き方も脳裏をよぎり、すごく不思議な心持ちになったのを覚えています。
Q3:オークション会場の様子はどんなものだったのでしょうか。
会場は満席で、立ち見が出たほどでした。活気がすごく、場がざわついていて、みんなが興奮していました。100点ほどが出品され、それぞれに多くの入札が入るので、すべてが終わるまでに3時間ほどがかかったのです。でもそれはあっという間の3時間でした。
Q4:そのような歴史あるジュエリーはどんな方々が落札なさるのでしょうか。
ブルボン=パルマ家の末裔は、スペイン、イタリア、フランス、オーストリアなど各国に散らばっており、彼らの存在が広く知られているため、ある特定の一国ではなく、各国の顧客から入札が入りました。王族のジュエリーをコレクションしている方々はもちろん、こんな機会は2度とないからと、貴族の来歴のあるジュエリーを初めて手に入れた、デビューの方々も多かったように思います。
歴史あるジュエリーを所有する、ヨーロッパならではの価値観
Q5:今までに、どんな歴史やストーリーがあるジュエリーを扱ったのか教えてください。
これまで本当にたくさんのジュエリーを扱ってきました。例えばエルトン・ジョンがステージ上でつけていたダイヤモンドのリングやブローチ。マリア・カラスが夫から贈られたらルビーとダイヤモンドのネックレス。N.Y.ではジャクリーン・ケネディ・オナシスのジュエリーも扱いました。
またイタリアで一世を風靡し、写真家としても活躍した女優、ジーナ・ロロブリジーダの’50〜60年代のブルガリも印象に残っています。
ダイヤモンドとエメラルドのリングや、ダイヤモンドネックレスをティアラにしたものなど、彼女らしい美しいコレクションでした。
Q6:個人的に忘れられないジュエリーと、そのオークションはどんなものですか?
まずひとつが、ウィンザー公爵夫人のジュエリーです。すべてカルティエやヴァン クリーフ&アーペルのもので、1940〜1970年の間に公爵と公爵夫人のメッセージを入れてつくらせていた、特注品でした。パーソナリティーが表れる強烈なコレクションでした。
もうひとつが先ほども触れている、ブルボン=パルマ家のジュエリーです。ウィンザー公爵夫人のものが約30年であるのに比べ、1700〜2000年という約300年もの長い歴史を包括した壮大なコレクション。ジュエリーのデザインの移り変わりまでも、眺めることができます。
20世紀は、貴族のジュエリーの在庫を管理する職業がありました。どういう宝石なのか、代々だれが所有したのかまで、詳細をつけたリストが存在したのです。出品の際にはそれがあったおかげで、それぞれに誇り高い来歴を記載することができました。
Q7:オークションでジュエリーを手に入れることの価値について、ダニエラさんならではのお考えを教えてください。
あるジュエラーだけで探すのではなく、さまざまなブランドのジュエリーを一堂に見渡すことができるのは、大きな特徴のひとつではないでしょうか。また、ブティックに並んでいない貴重なビンテージアイテムを探せるのも大きな魅力ですよね。そして現実的に落札の予算を決められるのも、大切なこと。
さらに、フェアなアドバイスを差し上げることも、私たちが心がけていることです。ヨーロッパのジュエリーは長い歴史と、確かな来歴があるものが多くそろいます。だれが、どんなシーンで、どのようにつけていたのか。それを理解して身につけると、また格別な思いがあふれるもの。オークションで手に入れる真髄は、そこにあるのかもしれません。
*
最後に、「時代はどんどん変化して、今では世界中のどこからでも、オンラインで入札できる時代になりました。オークションの形は変わっても、ジュエリーの価値は決して変わることなく、今後はさらに希少なものになると考えられます」とダニエラ氏。
だれがどのように身につけたのか、その来歴を知って手に入れるというヨーロッパの価値観を、私たちも取り入れる時代が来ているのかもしれません。
問い合わせ先
- サザビーズ 帝国ホテル店
- TEL:03-6457-9160
- 住所/東京都千代田区内幸町1-1-1 帝国ホテル 本館中2階
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- PHOTO :
- Courtesy of Sotheby’s
- WRITING :
- 本庄真穂
- EDIT :
- 石原あや乃