「サザビーズジュエリーオークション」と聞いて、どんなイメージを持つでしょうか。世界中のセレブリティーが、歴史あるハイジュエリーを競り落とす。それは億単位の逸品ばかりで、とても自分には手の届かない世界…。そう考えているのであれば、真実は半分のみです。
日本ではまだ馴染みが薄いものの、厳正なる審査を通れば、出品も落札も参加が可能。今回は、実際に香港ジュエリーオークションを利用されている、40代(自営業)の顧客の方に、出品までの流れ、当日の様子、そしてオークションという文化から得たものについて、語っていただきました。
出品者が語る、サザビーズジュエリーオークションの魅力
カラー、カラット、クラリティ……すべてにおいて、彼らには過去の膨大なデータがあり、それを元に査定を行います。そしてはじき出されるのが、いわゆる落札予想価格でいくらからいくらまでと、ある程度のレンジが提示されることになります。そこで納得すれば、商品はいざ香港へ。檜舞台へと上がるためのカタログ撮影が行われるというわけです。
当日は気合を入れて、ドレスアップして会場へ。テレビや映画でご覧になる、あの売買が目の前で行われるわけで、売る方も買う方もスリリング。現場で札を上げる方もいれば、代理人に電話で指示をする方、今ではネットで入札する方もいらっしゃいます。そして自分の商品が登場すると、テンションはマックスに。手に汗握りながら、まずサザビーズと合意した最低落札希望価格をクリアした時点で、胸を撫で下ろします。さらに「あとひと声!」と心の中で願いながら、予想以上の価格まで上がったときは飛び上がるような思いです。最終的には、落札された方の元で可愛がってもらえますように、と我が子を嫁に出したような気持ちになるわけです。
オークションならではのエピソードとなると、昨年の春、世界最高と言われるピンクダイヤモンドが出品されたときに会場に居合わせたのですが、ビッド(入札)されるごとにものすごいスピードで上がっていき、最後には約80億円もの価値をつけたときには本当に興奮しました。非日常の現場に身を置くことの貴重さと喜びを感じたのを覚えています。
現在は年2回香港を訪ねていますが、この先はN.Y.やスイスでのオークションにも参加してみたい。将来的には、最高クラスのダイヤモンドのイヤリングを落札し、愛用した後はひとつずつリングにし、ふたりの娘それぞれに譲るのが夢。人間には寿命があるけれど、ダイヤモンドにはありません。歴史を刻んできたダイヤモンドを一時期でも慈しみ、それを代々引き継いでまた歴史をつくっていく。サザビーズジュエリーオークションに携わるとはそういうことだと考えています。
「いいものから本物へ」。人生を重ねてきた女性の心に響くメッセージです。単に物をやりとりするのではなく、価値観を磨き、歴史を共有するのがオークションという文化。もし興味があれば、ぜひ問い合わせてみてはいかがでしょうか。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 本庄真穂
- EDIT :
- 石原あや乃