慢性的な頭痛は、日常生活の中で突然襲ってくるもの。頭痛がするたび、「またか……」と憂鬱な気持ちになる人も多いかと思います。
しかし、頭痛にも種類があって、それにより予防や対策の方法が違うそう。そこで、頭痛の原因別の対処法・予防法について、頭痛外来を行っている山王クリニック品川の院長・山王直子先生に教えていただきました。
慢性的に起こる頭痛は「片頭痛」と「緊張型頭痛」の2種類!
頭痛にも、痛くなるタイミングや場所が違うことがあります。それらはすべて同じ頭痛と考えてもよいのでしょうか?
「くり返し起こる頭痛には大きく分けて、『片頭痛』と『緊張型頭痛』があります。
何らかの理由で体にストレスがかかり、脳の血管が急激に拡張して起きるのが片頭痛です。寝不足、空腹、疲労、光や音の強い刺激、気圧の変化なども原因とされています。
つまり、自分にとって不快なこと(=ストレス)は、ほとんど片頭痛の原因になるんです。下着の締めつけやエアコンの温度などでも起こりえます。
また、特に女性は、『エストロゲン』というホルモンが急激に減るということが、体にとってすごくストレスになるので、生理前から生理中、排卵日など、女性ホルモンの変動に関係して、片頭痛が起こり、痛みに悩まされるケースが多いです」(山王先生)
片頭痛の主な原因はストレスなのに対して、緊張型頭痛はどういったときに起こるのでしょうか。
「緊張型頭痛は、頭の横、肩や首の筋肉が緊張することで起きます。 筋肉の緊張で血流が悪くなって老廃物がたまり、そのまわりの神経が刺激されて痛みが生じます。
精神的・身体的ストレスや、スマホやパソコン操作で長時間同じ姿勢をし続けていることが、原因です」(山王先生)
「片頭痛」と「緊張型頭痛」の見分け方
片頭痛と緊張型頭痛は、同じ頭痛でも起こる原因がまったく違うということがわかりました。では、どうやって見分けたらよいのでしょうか?
「片頭痛は、こめかみから目のあたりがズキンズキンと脈を打つように痛みが伴います。頭の片側だけでなく、両側も痛むことがあり、日常生活に支障が出ることも。
また、痛さにとどまらず、吐き気や下痢、光や音、におい、温度の変化に敏感になる場合もあります。一般的に、『普段から嫌だと感じていることが、さらに嫌になる』傾向があるようです。
緊張型頭痛は、無理な姿勢を長時間続けたり、スマホやパソコンの長時間使用などによって、目の疲れや倦怠感などとともに痛みが現れやすいです。頭全体がギューッとしめつけられるような痛みで、だらだらと続くのが特徴です」(山王先生)
■自分の頭痛が「片頭痛」かどうかチェックを!
「片頭痛と緊張型頭痛では対処法が違います。自分の頭痛が、片頭痛かどうか下記でチェックすることができます。ひとつでも当てはまったら片頭痛の可能性大です」(山王先生)
□ 頭が「ズキンズキン」と脈打つように痛む。
□ 体を動かすと頭痛がひどくなる。
□ 頭痛時に吐き気がしたり、実際に吐くこともある。
□ 頭痛が起こる前に視野にチカチカとした光が現れる。
□ 数時間~3日間ぐらい頭痛が続く。
□ 仕事や家事などに支障があり、ひどいときは寝込んでしまう。
□ 月経前・中や排卵時に頭痛が起こりやすい。
□ 雨が降りそうなときに頭痛が起こりやすい。
当てはまるものが多かったら、これから紹介する片頭痛の対処法を試してみてくださいね。
頭痛が起こった場合の対処法は間違い厳禁!
■1:片頭痛の対処法は「冷やす」こと
では、片頭痛が起こったら、どう対処すればよいのでしょうか。
「まず、片頭痛が起こった場合は、痛みがある部位を冷やしてください。血管が収縮して、痛みが軽減されます。ぬれタオルやタオルで巻いた保冷剤、冷えたペットボトルを当てるとよいです。
そして、静かな暗い場所で休むことも大切です。頭痛が起こっているときに体を動かすと痛みが増し、光や騒音でもさらに痛みは増してしまいます。できるだけ、静かな暗い場所で横になってください」(山王先生)
■2:緊張型頭痛の対処法は「温める」こと
デスクワークなどの途中で起こる緊張型頭痛の場合は、片頭痛の対処とは逆に「温める」のが肝心だそう。対処を間違えたら悪化しかねないので、注意が必要です。
「緊張型の頭がギューッとする痛みのみの場合は、痛む部位をマッサージしたり、蒸しタオルや半身浴などで温めて、首や肩の筋肉のコリを取り、血行をよくしましょう。首、肩周辺のストレッチも効果的です。
気分転換をするのもおすすめです。頭痛が起こったら、心身にストレスを加えていることをいったんストップして、建物内を散歩するなどその場所から離れて、リフレッシュしましょう」(山王先生)
片頭痛と緊張型頭痛の両方を持っている人は、どちらの対処法をすればよいか迷いますよね。
「その場合は、片頭痛に合わせて対処してください。首や肩のコリがあっても片頭痛の可能性があり、温めたり、マッサージをすると、血管が拡張して、却って症状が悪化する場合もあります。特に、生理前や生理中の頭痛は片頭痛なので、注意してくださいね」(山王先生)
「片頭痛」に有効な予防法3選
■1:頭痛ダイアリーをつける
片頭痛に悩んでいる人には、「頭痛ダイアリー」をつけるとよいそう。
「片頭痛が起きた日時とともに、食べた物やしていたことなどを記録しておくんです。また、どんな天気でどんな状態のときに痛みが出たか、そしてどんなふうに痛みが引いたか、などを細かく記録しておくと、自分の頭痛のクセがわかってきます。
頭痛の原因とそのサイクル、クセを知ることができれば、頭痛が起こる前に対策ができ、うまくつきあっていくことができますよ」(山王先生)
■2:1日3食、必ず食べる
「頭痛はお腹が空きすぎても起こるので、三度の食事を欠かさないようにしましょう。食べるものにも気配りを。
チョコレート、コーヒー、赤ワイン、チーズなどは、ポリフェーノールやチラミンなど血管を拡張する物質が含まれているので、なるべく控えてください。
コーヒーなどに入っているカフェインは血管を収縮する作用があるので、一時的に楽になることもあるのですが、その効果がなくなると反動で血管が拡張し、頭痛が起こることもあるので、大量に摂取することは避けてください」(山王先生)
ほかにも大量摂取を避けたほうがいい食材は、ベーコンやソーセージ、紅茶や緑茶、うま味調味料などがあげられます。脳内の血管が膨らむことで、三叉神経を刺激し、片頭痛が起こると考えられているそうです。
「起こるかどうかは人それぞれですが、頭痛が起こりやすかったり、悪化するような食べ物があったら、メモをとるなどして、覚えておくといいかもしれません」(山王先生)
■3:スマホやパソコンを長時間見ずに、意識的に頭と目を休める
「スマホやパソコンを長時間見るのは避けてほしいです。光の刺激が脳に過剰な興奮をもたらします。
仕事上、どうしても長時間見続けないといけない人は、ブルーライトカットのシートを張るか、カット効果のあるメガネをかけると刺激が緩和されると思います。
寝る前に、スマホやパソコンを見るのも、寝不足の原因や質の悪い睡眠につながってしまうので、寝る1時間前は見ないほうがベターです。
また、自分に合った睡眠時間をとってください。寝始める時間は、できれば『日付の変わる前』が好ましいです。睡眠時間は人それぞれですが、6〜7時間が目安です」(山王先生)
さらに、なりやすい環境(光・音・気圧)を避ける(日傘やサングラス、防寒着、防音などを身につける)ことも重要だそうです。
「緊張型頭痛」に有効な予防法3選
■1:長時間同じ姿勢をとらない
「同じ姿勢で長時間の作業をしないこと。猫背などの悪い姿勢も頭痛の原因になるので、背すじをピンと張り、正しい姿勢でいることも大切です」(山王先生)
■2:枕の高さを見直す
「高すぎたり、低すぎる枕は、肩や首のこりの悪化に繋がるので、自分の頭に合った枕を探しましょう。たたむことで高さを調整したバスタオルを枕代わりにするのもおすすめです」(山王先生)
■3:首と肩まわりの血行をアップさせる
こまめに首や肩のまわりのストレッチやマッサージをして、筋肉の緊張をほぐすのも効果的。以下のストレッチやマッサージがおすすめなのだそう。
・両肩をグッと上げて、ストンと落とす。力を入れすぎず、10回程度行う。
・首を前後左右に倒す。それぞれ10回程度ずつ行う。そのあと、首を左右に10回ずつ回す。
・手のひらで、前頭部、側頭部、後頭部をマッサージする。
・首の後ろを手の小指側の側面でトントンと10回程度たたく。
ぜひ、試してみてくださいね。
市販薬にはできるだけ頼らず、専門の医師に相談を
最後に、山王先生によれば、市販薬を頼ることはおすすめしないとのこと。間違った飲み方をしてしまう場合があるので、専門の先生に診てもらうほうが改善は早いそうです。
「病院は、脳神経外科よりも、『頭痛外来』のほうがよいかと思います。市販薬は、ただ痛みをごまかしているだけなので、治療にはなりません。
また、用法・用量を守らないと、かえって痛みが悪化します。目安としては、飲んでいいのは月に10日間までです。それ以上飲んでしまうと、依存症や薬物性の頭痛を引き起こすことも考えられますので、注意が必要です」(山王先生)
忙しい日々を過ごしていると、頭痛があっても病院に行くのがおっくうだったりで、市販薬でやり過ごしてしまうことも多いですよね。しっかり治療を行うためにも、早めに専門医を受診しましょう。
今まで頭痛に困っていた方、もしかしたら対処法が間違っていたのかもしれません。自分の頭痛の種類を知って、今日から正しい対策をしてみてはいかがでしょうか。頭痛知らずの生活も夢ではないはずです。
山王クリニック品川
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 宮平なつき