日本人が考案したお菓子が、なぜチャイニーズ・レストランの定番に?

萩原氏は庭師の仕事と茶店の経営などがあったので、実際のお菓子づくりは日系の和菓子店「勉強堂」に委託していました。フォーチュン・クッキーは大変好評だったため、萩原氏の茶店以外の日系の飲食店にも卸すことになり、次第に広まっていきました。萩原氏がこのお菓子を提供した動機は「おもてなし」だったので、特許をとったりはしなかったようです。

日系のレストランで広まると、中国系のレストランも真似て、フォーチュン・クッキーを提供するになりました。当時、日系でも中国系でも提供されていたのに、なぜ現在「チャイニーズ・レストランで出るお菓子」というイメージが定着したのでしょうか?

その理由は、戦争です。第2次世界大戦で、アメリカに住む日系人が強制収容されたため、日系のレストランは根こそぎ閉店に追い込まれたのです。その間に、「フォーチュン・クッキーと言えばチャイニーズ・レストランで出るお菓子」というイメージが定着したようです。

しかし、中国本土にはフォーチュン・クッキーのようなお菓子はないそうで、あくまで「アメリカのチャイニーズ・レストランの定番」という形のようです。

日本の北陸地方では、今も「辻占菓子」が季節の定番として残っている

愛らしい「辻占」菓子と千代紙のセットなら、外国の方に喜ばれそうです!
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フォーチュン・クッキーの元になった「辻占煎餅」は、北陸地方では、新年のお祝い菓子として楽しむ文化があったようです。古都・金沢はじめ、今でも北陸地方には、おみくじメッセージを包み込んだ「辻占」の名の付くお菓子をつくり続けている和菓子店が多数、点在しています。

色合いの地味な昔ながらの「辻占煎餅」ももちろん残っていますが、他にも、カラフルな素材で作った華やかな「辻占菓子」もあるようです。

「辻占 和菓子」でネット検索すると、通信販売で手に入る商品も複数ヒットしますよ。外国の方へのお土産に、千代紙と一緒にお渡ししたりすると、とても喜ばれるのではないでしょうか?

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Precious.jp編集部 
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国際見本市の参考資料:『歴史上の人物と和菓子』とらや/Discover Nikkei, 31 Oct 2007/「フォーチュン・クッキーはどう作られているか」WIRED NEWS(2012年5月16日)/『Makoto Hagiwara』Wikipedia英語版/ 『家庭新話』樋口二葉(読売新聞社)
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