最近、万年筆の魅力が見直されています。アナログな書き心地、手になじむなど理由はさまざまながら、若年層や女性の愛用者が増加の一途をたどっているそう。そして万年筆といえば、モンブラン。世界中の作家さんや芸能人たちからも愛され、長く使われていることはあまりにも有名な話です。

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キャップの先端に付いている六角形の白いロゴマーク「ホワイトスター」はヨーロッパ最高峰の山・モンブラン山頂を覆う万年雪を表し、ペン先はモンブラン山の標高である「4810」が刻まれています。

見ているだけで誇らしくなるデザインのモンブランは、世界中の文房具ファンにとって憧れの存在。しかし、一体どうして長く愛されるのか、その理由は意外と知られていません。

そこで、リシュモンジャパン株式会社 モンブラン コミュニケーションマネージャーの久井信吾課長に、この「なぜ」という部分をおうかがいしました。

 

――モンブランというブランドの商品を日々、大勢のお客様におすすめしているなかで、具体的にどんな部分に自信をもっているのか、教えていただけないでしょうか?

久井課長(以下、久井) この会社で働いているとモンブランというブランドが、意外なことに老舗という雰囲気がないことがよくわかります。むしろ、その逆です。業界の革命児的な存在なのです。みなさんの思っているイメージとまったく逆ですよね?(笑)。

でも、よくよく弊社を注意して見ていただければわかるのですが、モンブランは決して同じところに居続けません。常に周囲を見渡して、一歩先を行くことを自らに課し、世界の文化をリードし続けるアグレッシュブな会社なのです。

また、それだけではありません。安易にモンブランというブランド力に溺れるのではなく、ものづくりに情熱を持った優秀な人材たちが、自社の工場で最高のものを世に送り続けています。そここそが、モンブランとして、自信を持ってお客様に商品を提供し続けられる理由です。

――モンブランは今後、どんな年齢層を狙っていく予定なのでしょうか?

久井 そこですか! いい質問ですね(笑)。皆さんのイメージ通り、40歳以上の方に評価していただいていることは、自分たちでもわかっています。支持していただいている年齢層は高めです。でも、我々は20代の方にもモンブランを自然に持ってもらいたいと考えています。

若い世代の方達は、ツールに対して抵抗というものがありません。いいものなら感覚で受け入れてくれます。「今は買えなくても、いずれかっこいいモンブランをこんなシーンで使いこなしたい」という考え方が若年層に醸成されてゆくのが理想で、そこを狙っていきたいですね。

――これまでに耳にして感動した、モンブラン愛用エピソードはありますか? もしあれば教えていただけないでしょうか?

久井 モンブランの万年筆を使っている若い世代の方にお話をお聞きすると、お父様に譲り受けたという方が多いです。こうやって世代を超えて譲り受けられていく道具を販売していることは、本当にうれしく思います。

しっかりと使い込んで、自分の癖や傷痕などをその万年筆に残して、それを自分の息子に伝えていくことができるのは、万年筆くらいじゃないでしょうか? そしてそれは、我が社の品質とメンテナンスがあってこそ、できることだと思うのです。

ある女性から聞いた話なのですが、お父様から譲り受けたモンブランを持っていらっしゃって、とても使いにくいらしいのです。変な書き癖がついているそうです。でも、そのペンを持ったときだけこの世にいないお父様を感じることができるとおっしゃっていました。

肌が接するペン軸からも、何か前の持ち主の気持ちが伝わってくるのかも知れませんね。こういった話をたくさんお聞きできるのも、モンブランのおかげだと思っています。

――なるほど。ここで、久井課長がオススメしたいモンブランの万年筆を教えていただけないでしょうか?

久井 そう言ってこられると思って、ここ数日苦しんでいましたよ(笑)。今日は2本に絞ってきました。どちらも持つ人を納得させる凄い万年筆ですから、ぜひとも手に取っていただきたいと思います。

最初に、定番過ぎるかも知れませんが、モンブランで最も著名な筆記具「マイスターシュテュック 149」を最初に挙げておきます。存在感抜群の太いペン軸は持った瞬間に周囲を圧倒するかのような雰囲気を放ち、さらには書く人に心地よい安心感を与えます。まさにネーミングの通り、傑作です。

もうひとつはヘリテイジコレクションの限定「ヘリテイジコレクション ルージュ&ノワール スペシャルエディション コーラル」です。この万年筆は面白いですよ。クリップ部分が蛇になっているのです。さらにはボディが細身で、目の覚めるような色合いのペン軸です。110周年を記念して造られたこのペンは、モンブランの心意気をよく表現していると思います。

――ありがとうございました。最後にモンブランを使う人にアドバイスお願いします。

久井 モンブランの製品は、万年筆やボールペン、時計、革小物が有名です。これらはすべて使っている人の目に入ってくるものです。これらは所有者の視覚に入ることで、使っている人を励ましてくれます。モチベーションを上げてくれるのです。私はまずは、自分を励ますための道具として使ってもらいたいです。

さらには、相手に対する思いやりを表現するものとして使ってもらいたいですね。人と自分との距離がうまく測れる大人になると、そのシーンに応じた持ち物で臨むようになります。相手に対する気持ちをモンブランで表現するなんて、素敵ですよね。

「大きな契約をしてくださったお客様に、そんなペンでサインさせるんですか?」

そんなことを考えたり、気を遣えたりできる方にはきっと、モンブランの万年筆を選んでいただけるものと思っています。

モンブランというブランドがさらに好きになりそうなお話でしたね。「モンブランは決して同じところに居続けません」という部分に驚きを感じたのは、筆者だけではないはず!

ブランド力に溺れず、新しい挑戦をし続ける姿勢が、大勢の人に長く愛される秘密だったのですね。

お子さんや甥や姪が大人になったら、自分が愛用してきた万年筆をプレゼントしよう―。そんなふうに考えてペンを使ってゆくと、文字を書き連ねることがますます楽しくなってきます。

PROFILE
久井信吾(ひさい しんご)さん
学習院大学文学部卒。ハナエ・モリの広報、双葉通信社の営業を経て、2011年からモンブランの広報宣伝課長に就任。
この記事の執筆者
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クレジット :
文/猪口フミヒロ