あなたは「モンブラン」に、どんなイメージをもっていますか?
万年筆をつくっているブランド。スイスはアルプス山脈の山の名前。重厚感のある、黒く艶光りをするペン。六角形の白いロゴマーク。高級筆記具。
このようなイメージを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。髭を生やした世界的に著名な文豪が、モンブランを手に淡々と、書斎で文章を書きつづっている。小説好きの方のなかには、そんなシーンを想像する人もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際、企業の重役や、自身で会社を経営している淑女や紳士のなかには、モンブランのステーショナリーを所有されている方が多く見受けられます。モンブランは、身の回りに携えておくだけでステータスを得られ、感じさせられる筆記具の代表格と言えるのです。
それでは一体どうして、モンブランの筆記具は世界中の素敵な人々に愛される存在になり得たのでしょうか。本稿ではその理由を、モンブランの歴史と共に辿っていきます。
モンブランの歴史
モンブランは、1906年にふたりのドイツ人、アウグスト・エーブルシュタインとアルフレッド・ネヘシアスによって設立された、万年筆のメーカーです。100年以上続いている超優良企業で、筆記具をブランドのアイコンとしながらも、近年ではレザーアイテムや時計、香水を主力商品とし、扱うアイテムの幅と世界観を広げています。
万年筆のキャップの先端に付いた白い六角形のロゴマークは、「ホワイトスター」と呼ばれています。これはヨーロッパ最高峰の山・モンブランの山頂を覆う万年雪をモチーフに、デザインされたもの。
ペン先には、モンブラン山の標高「4810」という数字が刻まれています。このようなディテールひとつへのこだわりも、壮大なストーリーを感じさせてくれる要因のひとつ。
代表的な作品は1924年に誕生した「マイスターシュテュック」。このアイコニックなペンは、黒い樹脂に金、もしくはプラチナのトリムをデザインしたデザインで、現在でもブランドの顔と言える存在感を放っています。
万年筆はもちろんのこと、ボールペンやシャープペンシルといったバリエーションも、店頭では豊富に用意されています。最近では、若者向けの「スターウォーカーエクストリーム」も人気です。こちらはロゴマークが浮いているように見える美しいデザインで、見る者の心をつかんでやみません。
「星間、星空を歩く」イメージを想起させる、スターウォーカーというネーミングもロマンチックですよね。
自動車にたとえると「メルセデスベンツ」だと言われることが多い、モンブラン。メルセデス同様にオーナーとしての思い入れをもって所持する方が多いため、仲間意識が醸成されやすいアイテムでもあります。確かな信頼と品質がなくては、こういうトップブランドは成立しません。その使う人の思いを裏切らずに今まできたからこそ、世界中の文房具店でトップクラスの筆記具として扱われ、現在の地位を不動のものにしているのです。
それでは実際に、モンブランのペンの魅力に迫っていきましょう!
モンブランのペンの魅力
(1)書き味の素晴らしさが別格
モンブランのファンが口をそろえて主張するのが、書き味です。
さまざまなペン先のバリエーションを持っているのはブランドとして当然のことですが、引っかかりのないスムーズな書き心地を、長年のノウハウの蓄積によって実現させています。
秘密は、熟練の職人が100以上の工程を経て完成させる精密さと、ひとつひとつ試し書きをし、ペン先のわずかな音で出来具合を判断する、匠の検査技術です。世界中の万年筆好きがこぞって求める理由の最たるものが、このクオリティにあります。
(2)有名人の「愛用逸話」がストーリー性を高めている
モンブランのペンはボディ軸が太めに設計されているため、机に向かってじっくり長い文章を書くのに向いています。
作家の山崎豊子さん、松本清張さん、三島由紀夫さん、開高 健さん、林 真理子さんが愛用者だというのは、それぞれのファンの間では有名なエピソード。モンブラン・ペンを使用している作家たちの写真もかなり残っており、文豪の仕事現場での張り詰めた雰囲気をよく伝えています。これら、文筆を生業とするプロが愛用していた、プロに認められた道具という歴史も、モンブランのブランド力を高めている一因。彼女ら、彼らと同じ道具で仕事してみたい、そんな思いを実現させてくれる、最も身近な存在といえます。
(3)長い目で見るとコストパフォーマンスが抜群
決して古くならないデザインと確固たる人気により、いいものを長く持ち続けたいという人に購入されているモンブランのペン。
正規ブティックで購入すると、品質保障やメンテナンスが充実しているのも安心な要因のひとつ。特に万年筆はメンテナンスをしつつ、長く使い続けると、書き癖がペンに染み込んできて、愛着のある筆記具に仕上がります。
毎日少しでもいいから書くこと、そしてインクのフローをよくする「洗浄」を定期的に実施することが、長持ちの秘訣。
その一手間があれば、「万年筆」のその名のとおり、ほとんど永遠に使い続けることができます。安いものをたくさん消耗し続ける苦痛からも解放されます。また、愛着のある1本を育ててゆくと、次世代へはもちろん、その次の世代にも渡せるほど長く使うことができ、コストパフォーマンスという意味でも非常に優れています。
モンブランのペンは、家族の思い出という「重さ」と、コストパフォーマンスという「軽さ」を両立させられる、珍しい「モノ」の筆頭と言えます。
電子マネーなどのデジタルデバイスはますます進化し、「現金を介さない決済手段」がますます浸透していきます。それに伴い、「サイン文化」による決済も、今後さらに日本で広がりを見せてゆきます。
そんな近い将来、決済書やクレジットカードにペンでサインをするとき、自分らしさを体現した筆記具で、堂々とサインすることができたなら。本稿が自分らしい筆記具探しの参考になれば、幸いです。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- クレジット :
- 文/猪口フミヒロ