「いまどきの新人は……」と文句を言う前に!残念な上司がやってしまう、ダメな指示の出し方5選
年功序列や終身雇用制が崩壊し、働き方が多様になった昨今。上司の理不尽なしごきやサービス残業といった一昔前までの企業の常識は、通用しない時代になりました。
それでも、部下を無理に従わせようとする風習がある職場は、案外多いのではないでしょうか? そういった職場では、部下が思うように動いてくれない、新人がすぐに辞めてしまう、といった問題が生じることもしばしば……。
「上司の伝え方が悪ければ、部下は動きません」と警鐘を鳴らすのは、『部下を動かす! 超一流の伝え方・三流の伝え方』の著者で、キャリアコンサルタントの大岩俊之さん。
部下に指示が伝わらなかったり、すぐに辞めてしまったりするのは、その人が会社の方針に合わないからではなく、会社や上司の側に問題があると考え、改善していく必要があるのです。
以下では、残念な上司が知らず知らずのうちにやってしまっている、よくない指示の出し方を紹介します。「いまどきの新卒社員は……」と文句を言う前に、上司の側に問題がなかったかどうか、冷静に振り返ってみてください。伝え方に工夫をすれば、きっと部下の動きが変わるはずですよ。
■1:専門用語を当たり前のように使うのはNG
自分とは異なる職業の友人や知人と仕事の話をするとき、普段は当たり前のように使っている単語が、ほかの業種の人にはうまく伝わらず、説明に困った経験はありませんか? どんな業種でも、仕事にはその業界ならではの専門用語があるもの。このような専門用語を、自分の部署に配属されたばかりの新人相手に使ってしまうのはNGです。
大岩さんによると「多くの上司が、専門・業界用語、社内でしか通用しない言葉と、一般の人がわかる言葉とを区別できていない」と言います。
「新人に対しては、専門・業界用語や社内用語で話すべきではありません。小学生でもわかるような言葉にかみ砕いて教える必要があります。専門用語を当たり前のように使って指示を出すことは、離職率が高まる要因になり兼ねないので、要注意です。
わかりやすい言葉で教えられるようになるためには、何が専門用語なのかを知ることから始めてください」(大岩さん)
「これくらいの言葉は、知っていて当然」と思っても、新人に指示を出すときは専門用語を避けましょう。上司は指示を出したつもりでも、部下にきちんと伝わっていなければ、指示を出したことにはなりません。
■2:「わからなかったら聞きに来る」ように伝えるのはNG
自分の仕事に加えて部下の教育もしなくてはならない上司は、どうしても忙しくなりがち。実際、部下が質問に来ても構っていられないという場面も、少なからずあるのではないでしょうか。
だからといって、ほんの少しだけ簡単に教えて、あとは「わからなかったら聞いて」と放置するのはやめましょう。
「三流の上司であればあるほど、わからないところを聞きに来ない部下をあとから責めて怒ります。若い部下から質問しに来ないというケースはよくありますが、部下は『わからないところがわからない』ため、上司に聞きに行くことができないのです。
現代の若者は、人とコミュニケーションを取るのが苦手な人が多いとはいえ、文句を言っていても、言葉が伝わる上司にはなれません。物事を知らない相手には、きちんと教えることが一番。この際、部下の表情を見てきちんと理解できているかどうか、確認してあげることがポイントです」(大岩さん)
仕事が忙しいのはわかりますが、部下の教育にしっかり時間を割いてあげることも、上司の大事な仕事と肝に銘じておきましょう。
■3:相手にどんなメリットがあるかを伝えないのはNG
部下に動いてもらいたいときは、5W1H(What=何を、When=いつまでに、Who=誰が、Where=どこで、Why=なぜ、How=どのように)で具体的に指示を出すことが重要です。このとき「Why=なぜ」の部分をきちんと伝えてあげるのが吉。
「例えば『明日までに会議の資料をまとめておいて』と指示を出すとしましょう。経験豊富な部下や信頼関係ができている部下なら、この指示でも伝わるかもしれませんが、新人には伝わりません。
そこで『明日までに会議の資料の○○を、データを使ってまとめておいて。データを使うと、上司を説得しやすい資料になるから』というように、Whyの部分を付け加えると、新人でも理解できるだけでなく、やる気にもなってくれるはずです」(大岩さん)
部下に指示を出すときは、その作業にどういう意味があるのか、やることによってどんなメリットがあるのか、というWhyを必ず伝えてあげましょう。これだけで、同じ作業でも成果が変わるかもしれませんよ。
■4:「一度に大勢へ伝える」のはNG
個人宛てに連絡すると返事をくれるのに、複数人のグループ宛てに連絡すると返事がない……という人、身近にいませんか? これはプライベートに限らず、仕事の連絡でも同じことが言えます。相手に動いてもらいたいときは、面倒でもひとりひとり、名指しで指示を出すのがポイントです。
「SNSに慣れている若手社員は特に、情報をスルーするのが得意です。なぜなら、現代はネットニュースや新聞記事、SNSのやり取りなどの情報にあふれているから。そのため、社内の連絡であっても、全体メールや全員に向けた言葉は、自分ごとと捉えません。
一流の上司は、全体に指示を出したあとに、個別に指示を出しに行きます。メールならCCの場合は大抵スルーされるので、TOに相手の宛名を入れること。たとえ時間がかかっても、個別に伝えたほうがきちんと伝わりますし、行動してくれるようになります」(大岩さん)
デキる上司になるためには、会議やミーティングで話したことでも、特に大事なことは個別に直接伝える癖を身につけたいですね。
■5:「考えたらわかるだろう」と言葉を省略するのはNG
雰囲気や身振り、経験などから相手の意図を察する、「空気を読む」という文化は、日本人の感覚からすると、たしかに美徳かもしれません。ですが、仕事で指示を出すときは特に、相手が空気を読んでくれること期待して、言葉を省略するのはやめましょう。
「一流の上司は、相手が空気を読むことを期待せず、伝え方にこだわります。ポイントは次の4点です。
1.あいまいな言葉を使わないこと。
『あれ』『それ』『この』などの言葉は控えましょう。
2.数字で表すこと。
例えば『多め』は『2倍』、『なるべく早め』は『3日後』のように、具体的な数字を使うと間違いがありません。
3.主語をつけること。
『私』『あなた』『○○さん』など、誰に対して言っているのか、誰を指しているのかをはっきりさせましょう。
4.行動を促すこと。
『できれば……』ではなく『やってください』という言葉を使って、やるのか・やらないのかを明確に」(大岩さん)
日本語の会話は、主語を省略しても概ね成立するため、主語を略す癖がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、指示を出すときは、あいまいな表現を避け、できる限り具体的な数字を示すように心がけてみてください。
「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」という言葉があるように、他人を変えようとするよりも、まず自分が変わることが大切です。部下への指示の出し方を見直して、一流の上司の仲間入りを目指しましょう。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 上原 純