「手薬煉」の読みは? 意味は? 「薬」の入った意外な日本語たち

字だけ見ると、何の事かナゾですね…。
字だけ見ると、何の事かナゾですね…。

寒さと、年末のあわただしさで体調を崩す方が増えているようです。皆様は無事にお過ごしでしょうか?

今回は、体調の悪い時に私たちを助けてくれる「薬」に注目します。「薬」という漢字の入った、意外な日本語を探ってまいりましょう。

…というわけで、クイズです。

【問題1】

「手薬煉」という日本語の読み方をお答えください。

「○○○〇」と、読み仮名4文字です。
「○○○〇」と、読み仮名4文字です。

ヒント:使用例:「年末年始は海外に行きたいと思っていたけれど、実家の母が手薬煉ひいて待っている様子だから、今年は帰省することにしたの」

…さて、正解は? 正解は、画像の下に。

薬
手薬煉には薬の文字が入っていますが・・・

正解は… 手薬煉(てぐすね) です。

「手薬煉ひいて待つ」の「てぐすね」です。「てぐすね」ってナニ!?
「手薬煉ひいて待つ」の「てぐすね」です。「てぐすね」ってナニ!?

「手薬煉(てぐすね)ひいて待っている」という言い回しは、皆さまも耳にしたり、お使いになったことがあるでしょう。「さあ来い!」と待ち構えているようなイメージですよね?

では「手薬煉ひく」とはもともと、どんな状態を指すのでしょうか?

「薬煉(くすね)」とは、「弓の弦を補強するための、松脂(まつやに)を油で似た接着剤」の事です。

昔、合戦の前に、十分な臨戦態勢で待つため、この「薬煉」を手に取って弓の弦に塗ったことを指し「手薬煉ひく=十分な準備をして待つ」という意味になったのです。

元の意味のように、敵に手薬煉ひいて待たれるのは遠慮したいところですが、例文のように、家族などの親しい人が手薬煉ひいて自分を待ち構えている…という状況は、やや重く感じても、なかなか断れるものではありませんね。

こちらも大人になってこそ、「この時くらいは、顔を見せてあげなくては」と、思いやりと敬愛の気持ちが湧いてきます。

さて、2問目も「薬」にまつわる日本語です。

【問題2】

「薬缶」という日本語の読み仮名をお答えください。

ヒント:病気の時に使う物、というより、日常的に日本の家庭で使用されてきたアイテムです。

さて、正解は?

薬の入った缶?さて…?
薬の入った缶?さて…?

正解は… 薬缶(やかん) です。

お湯を沸かす「ケトル」の事です。
お湯を沸かす「ケトル」の事です。

お湯を沸かす、あの「ヤカン」です。こんな字を書くのですね。

なぜ、この字なのでしょうか?

「薬缶(やかん)」は、もともと「薬鑵」と書かれ、読みは昔は「やくくわん」でした。「鑵(くわん)」とは「水を汲む器」を表し、「薬鑵」は薬を煮出すのに用いられた鑵でした。煮出すための道具、ということで、水を汲む鑵の中でも、耐火性のあるものだった、という事でしょう。

これが、湯を沸かす道具の名称に転じたようです。

今回は、「薬」の入った意外な日本語

・手薬煉(てぐすね)

・薬缶(やかん)

の読みと、トリビアをお送りしました。

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ILLUSTRATION :
小出 真朱