ビジネスパーソンにとって、ストレスはつきもの。重要な地位に就けば、よりいっそうプレッシャーは大きくなりますので、キャリア向上とストレスマネジメントは、切っても切れない関係にあるといえます。

では、ストレスに強い人は実際に日頃、どのような行動を取っているのでしょうか? 日本心理教育コンサルティング代表で、カウンセラーの櫻井勝彦さんから、ストレスに強くなれる方法について、お話をうかがいました。

ストレスに強い人が何気なくやっている習慣8選

■1:適度にからだを動かす

適度な運動はストレス解消に有効
適度な運動はストレス解消に有効

仕事のできる人は健康への意識が高く、忙しい合間を縫ってスポーツジムに通ったり、ジョギングを習慣化したりしている人が少なくありません。実は、このように適度にからだを動かすことは、ストレスマネジメントにも役立っているとのこと。

「ストレスというのは、例えると風船に圧力がかかっているような状態です。破裂を防ぐには、中の空気を逃がしてやる必要があります。

その方法の1つが、適度にからだを動かしてストレスのエネルギーを外に出すこと。じっとしたままだと、ストレスの圧がかかり続けて、いずれ心身のバランスを崩すことになりかねませんが、からだを動かすことで、一種のガス抜きができるのです」(櫻井さん)

デスクワークの人は、長時間座り続けることで、知らず知らずのうちにストレスを溜めこむおそれもあります。ときどき外に休憩に出たり、職場内を歩き回ったり、それも難しければ、せめて自分の席で伸びをするなど、からだを動かすことを意識的に行いましょう。

■2:嫌なことがあったら人にしゃべる

人に話すことが「心のガス抜き」になる
人に話すことが「心のガス抜き」になる

「ガス抜きの方法として、からだを動かす以外には、人に話すというのもおすすめです。

風船の空気孔をきつく縛っていて、空気の逃げ場がないと、ちょっと圧をかけただけですぐに破裂してしまいますよね。ストレスがかかったときは、なるべくためこまず、人に話してしまいましょう」(櫻井さん)

■3:お笑い番組を見る

お笑い番組でストレスに強くなる理由とは?
お笑い番組でストレスに強くなる理由とは?

何かストレスのかかる出来事があれば、できるだけ自分にとって楽しいことに触れて、気分を紛らわしたいもの。そうした娯楽のなかでも、お笑い番組は、単なる気晴らしになるだけではく、ストレスマネジメントと意外に深い関係があるとのことです。

「笑うという行為は、ストレス発散になるだけでなく、免疫力向上にもつながるといわれています。

笑うための手段は、いろいろありますが、中でもお笑い番組は特におすすめです。というのも、お笑い芸人のかたは、ご自身の失敗や不幸話を自虐ネタとして笑いに昇華させています。そういう姿勢は、ストレスマネジメントにおいて非常に重要なんですね。

自分にとってネガティブな出来事について、くよくよ悩むのではなく、笑いに変えてしまう。そういう思考パターンを見習えるという点でも、お笑い番組はストレス対策として有効でしょう」(櫻井さん)

■4:物事がうまくいかないときは、行為に焦点を当てて原因を考える

行為に焦点を当てれば改善策が見つかる
行為に焦点を当てれば改善策が見つかる

どんなに有能な人でも、失敗をゼロにすることはできません。物事がうまくいかないとき、どのように対処するかにも、ストレスマネジメントの秘訣があるようです。

「失敗したり不幸に見舞われたりしたとき、ストレスを溜めやすい人というのは、自分を全否定しがちです。たとえば、恋人に振られたときに、『自分に魅力がないからだ』などと捉えてしまい、ストレスの逃げ場がなくなります。

他方、ストレスに強い人の場合、『今回は、自分の行為の何がいけなかったのだろう?』と考えます。このように、自分全体にダメ出しするのではなく、行為に焦点を当てると、『自分のあの発言が相手を傷つけたのではないか』→『自分の感情を伝えたいときは、こういう言い方をしよう』と改善点が見えてくるので、過度の落ち込みを防ぐことができます」(櫻井さん)

■5:日々、新しいことにチャレンジする

ストレスに強い人は変化を恐れない
ストレスに強い人は変化を恐れない

「ストレスの原因の1つとして、変化が挙げられます。たとえば、引っ越しや異動・転職、あるいは、結婚・出産といったおめでたいことであっても、何か新しい事態に直面すると、ストレスを感じてしまうものなのです。

このように、人は変化に反応しやすい生き物ですが、変わり映えのない日常をずっと送り続けていると、ますます変化に対するストレス耐性が弱まります。

ですから、ストレスに強くなるには、1日1個、1週間に1個でもいいので、何か新しいことにチャレンジしましょう。今までやったことのないことに積極的に触れることで、変化に柔軟に対応する力が身につき、ストレス耐性も高まります。

新しいことにチャンレンジ……といっても、難しく考える必要はありません。たとえば、ランチのお店を新規開拓する、普段食べないメニューを注文する、あるいは、会社帰りにいつもとは違う経路を使ってみるなど、ちょっとした変化を楽しみながら、経験することをおすすめします」(櫻井さん)

■6:複数のフィールドをもつ

心の支えはたくさんあるほうがよい
心の支えはたくさんあるほうがよい

「家は柱が多いほど倒れにくいですが、人間も同じです。自分を支えるものが多いほど、ぐらぐらせずに精神が安定します。逆に、自分にとって心の拠り所が1つしかない人は、そこに問題が生じた瞬間、一気にストレスで崩れてしまうおそれがあって危険です。

たとえば、会社一筋の人は、仕事がうまくいかないと、それだけで自分の存在意義が脅かされるように感じて、多大なストレスを受けます。また、恋愛するとのめりこんでしまう人は、相手との関係がちょっとぎくしゃくするだけで、この世の終わりのように感じがちです。

自分にはこれしかないと決め打ちするのではなく、仕事でもプライベートでも自分の居場所を複数つくっておきましょう。そうすれば、ある1つの分野でエラーが生じても、他の分野でリカバリーがきくので、ストレスに押しつぶされずに済みます」(櫻井さん)

あなたには、「これが私の生きがい!」といえるものがいくつありますか? 自分の心のよりどころを増やすためにも、前項でご紹介した“日々新しいことにチャレンジする”という習慣は、重要かもしれませんね。

■7:瞑想の習慣をもつ

敢えて「何も考えない」練習をする
敢えて「何も考えない」練習をする

「学校でも社会においても、思考力を高めることはよいことだとされ、『もっとよく考えなさい』などという指導が行われていますが、実は、現代人は余計なことを考えすぎる傾向があります。

たとえば、『ああなったらどうしよう』と先のことを悩んだり、『あのときこうしておけば』と過去の失敗を悔んだり、頭のなかであれこれ考えてしまうこともストレスを悪化させる原因です。

こうした考えすぎによるストレスを防ぐには、意識的に脳を休める習慣が大事だと思います。1日に1回、数分間でいいので、呼吸に意識を向けて、敢えて頭を空っぽにする時間をとりましょう。いわば、“考えないトレーニング”をするのです。

考えることが習慣化している現代人にとって、これはなかなか難しく、何も考えまいとしても、ついいろいろ雑念は浮かんでしまうと思います。ただ、そこで自己嫌悪せず、何事も始めはうまくできなくて当たり前だととらえて、まずは毎日“何も考えない時間”を設けてみてください」(櫻井さん)

■8:何事にも感謝する

日々何事にも感謝することでストレスに強くなる
日々何事にも感謝することでストレスに強くなる

「人は生きている限り、何かとアンラッキーなことは避けられませんが、その出来事をどう捉えるかがストレスに強い人と弱い人の分かれ目です。

たとえば、新しくできたレストランに期待していたのに、いざ訪れてみたら料理がおいしくなかった。こんなとき、『残念』『ついていない』と落ち込むのが通常の反応ですが、ストレスに強い人は、ただネガティブな感情だけで終わらせるのではなく、『でも、健康で外食できることはありがたいことだな』などと、物事のよい面にも目を向けようとします。

これに関連して、私の知っているある料理人さんのエピソードを1つ、ご紹介します。

彼は、厨房で怒号が飛び交うような大変厳しい環境で働いているのですが、一度、『なんで平気なの?』と尋ねたところ、彼は『怒られるのは当たり前だから』と答えたんです。

怒られるのを過度に恐れていたら、ビクビクと上司の顔色をうかがって、精神的にまいってしまいます。そこを、彼のように『怒られるのは当たり前』とフラットにとらえたり、あるいは『怒ってもらえることで成長できる』と前向きにとらえたりすれば、ストレスを最小限に抑えることができるのではないでしょうか」(櫻井さん)

ストレスに強い人の習慣をご紹介しましたが、あなたはいくつ当てはまりましたか? ストレスマネジメントを身につけて、何かと世知辛い日常をしなやかに乗り切りましょう。

櫻井勝彦さん
日本心理教育コンサルティング代表、講師、カウンセラー、一般社団法人日本ヒューマンスキル教育推進協会代表理事、文学修士、公益社団法人日本心理学会認定士、JAAHSE認定傾聴セラピスト養成講座上級指導者
社会心理学系の大学院(博士課程前期)を修了後、各種学校にて心理学の講師・スクールカウンセラー、研修会社で研修企画・講師などを経て、平成18年に日本心理教育コンサルティングを設立。全国の企業・自治体・学校などで心理学を活用した楽しく実践的な講義・研修・講演を行っている。書籍・雑誌・テレビ・ラジオなど、メディア掲載・取材・監修も多数。著書に『仕事が思い通りにできる心理術』(明日香出版社)がある。
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この記事の執筆者
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WRITING :
中田綾美
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