紀元前6000年にワインが生まれたとされるジョージア(旧グルジア共和国)では、その当時素焼きの壺「アンフォラ=クヴェヴリ」を使ってワインの発酵、熟成、貯蔵を行なっていたという。
第4のカテゴリーとして認知されたオレンジワインの秘密
白ぶどうを果皮や種ごと素焼きの壺に入れ、ブドウが本来持つ自然酵母の力で時間をかけてゆっくり発酵させるとともに、果皮から色素やタンニンを抽出。これがいわゆるオレンジ色がかった白ワイン、俗にオレンジワインと呼ばれる古代の製法だ。
また、アンフォラを熟成にも使用することで木樽の余分なニュアンスを加えず、ステンレスタンクではなしえない少量の酸素を透過させる「Micro ossigenazione(ミクロ・オッシジェナツィオーネ)」をすることで複雑味も生まれるのだ。
現在ではイタリアでも自然派と呼ばれる生産者の間で、このアンフォラ=クヴェヴリを使ったオレンジワインの生産が徐々に広まって生きてる。
そのパイオニアはスロヴェニア国境近くにあるワイナリー「Gravner(グラヴネル)」と「Radikon(ラディコン)」で、スロヴェニア国境に向かって車を走らせると、やがてブドウ畑とともに屋外に置かれた巨大なオブジェのようなアンフォラが見えて来るから、それとすぐわかるだろう。
グラヴネルはジョージアからこのアンフォラ=クヴェヴリを直接買い付け自社で使用したとされるが、近年ではイタリア国内にもこのワイン用アンフォラを作るメーカーが現れてきた。トスカーナの「Drunkturtle(ドランクタートル)」は中でも注目に値する野心的なメーカーだ。
職人の手でひとつひとつ仕上げられるワイナリー用コッチョペスト
本来アンフォラとは素焼きの壺=テラコッタのことだが「ドランクタートル」では、よりワインの生産に適したコッチョペスト(破砕テラコッタにモルタルをまぜたもの)を採用。
職人が一点一点手作りしてワイン用アンフォラを生産、販売している。ワイン用に特化しているのでハッチ=Portella(ポルテッラ)と上蓋=Chiusino(キウズィーノ)を備え、脚付きなので地中に埋めるのでなく(もちろん埋めることも可能だ)カンティーナに立てて並べ、オブジェ的美意識を志向するワイナリーも満足させることができる。
また、職人による手作りなのでワイナリーのロゴやオーナー家の家紋などをパーソナライズすることも可能だ。
アートやインテリアとしても!
現在「ドランクタートル」のコッチョペストを使用しているワイナリーは以下の通りだ。
イタリア国内ではLa Biagiola, Oliviero Toscani, Tenuta di Ghizzano, Castello di Rampolla, Rocca di Castagnoli, Caiarossa (以上Toscana), Nicodemi (Sicilia), Livio Felluga (Friuli Venezia Giulia) 一方イタリア国外ではYangarra (Australia), Estampa (Cile), Rocim (Portugal), E&J Gallo(USA), Torres (Spain)などで使用されている。
上記ワイナリーのオレンジワインを飲む機会があれば「これはコッチョペストで作られたワインでは?」と思い出していただければ食卓での会話も弾むことかと。
- TEXT :
- 池田匡克 フォトジャーナリスト