ここ数年、世界中からMade in Japanのコスメ「J-Beauty」に注目が集まっています。そこで、Precious.jp編集部では、ナビゲーターとして、ラ キャルプ代表の新井ミホさんを迎え、日本独自の伝統を守りながら、高機能・高品質な商品を、日本各地から発掘して紹介する連載がスタート。

第1回目は、創業395年を迎える、金沢の老舗酒蔵から生まれた発酵コスメをご紹介します。

新井ミホさん
ラ キャルプ代表
ナチュラル&オーガニック専門のPR会社「LA CARPE(ラ キャルプ)」代表。日本各地のナチュラルコスメにも精通。オーガニックコスメ&フード、マクロビオティック、薬膳、フレグランスブランド、クリニック等のブランディングやPRコンサルティング業務に携わる。

杜氏の手肌は白くて美しい−そんな逸話から生まれた自然派コスメ

お米と水のみで造る「純米蔵」

寛永2年(1625年)創業の「福光屋」は、金沢でもっとも長い歴史と伝統をもつ酒蔵です。霊峰白山の麓に降り注いだ雨雪が一世紀もの時をかけて酒蔵にたどり着いた「百年水」と、良質な酒米に恵まれ、伝統の職人技を受け継ぎながら、395年もの間、酒造りを続けてきました。

酒蔵の表に店舗を構える福光屋の本店。福光屋の全商品が揃う。
酒蔵の表に構える福光屋の直営店。福光屋の全商品が揃う。

まろやかな口当たりと肌なじみがよい、福光屋に湧き出る「百年水」

日本酒の味わいを大きく左右する水。福光屋に湧き出る「百年水」は、まろやかな口あたりと抜群の肌なじみのよさを誇り、発酵に最適な成分をたっぷり含有。
日本酒の味わいを大きく左右する水。福光屋に湧き出る「百年水」は、まろやかな口あたりと抜群の肌なじみのよさを誇り、発酵に最適な成分をたっぷり含有。
日中は、敷地内にある「百年水」の水汲み場を開放。近所の人たちが大きなタンクを手に水を汲みにくる姿がちらほら。
日中は、敷地内にある「百年水」の水汲み場を開放。近所の人たちが大きなタンクを手に水を汲みにくる姿がちらほら。

ハウスブランドであり金沢ではナンバーワンのシェア誇る「福正宗」、料亭などでお目見えすることも多い「黒帯」や「加賀鳶」など、個性豊かで非常に味わい深い日本酒が勢揃いする「福光屋」。

実は2001年に、アルコールを添加しないで米と水だけでお酒をつくる「純米蔵」を実現しました。1960年より栽培契約を結ぶ農家と土づくりからこだわった上質の米と、自然の恵みである百年水。そんな最高の素材に、麹や酵母などの微生物の働きによる自然の力だけで、日本酒造りを行うことを信条としています。

酒米の個性と純米造りの技を徹底的に追求した「加賀鳶」

酒米の個性と純米造りの技を徹底的に追求した「加賀鳶」。季節限定のボトルも並ぶ。
季節限定のボトルも並ぶ。

日本酒造りは、米選び、精米、洗米、浸漬(水を吸わせる)、蒸米からスタート。麹と水を合わせたものに蒸米と酵母を加え、約15〜30日間かけて酒母をつくります。酒母は酛(もと)とも呼ばれ、糖分をアルコールに変える酵母を大量に増殖させたものです。

「福光屋」の醸造蔵・壽蔵を率いる杜氏の板谷和彦さん。シニアソムリエとのコラボブランド「ITAYA」を誕生させるなど、伝統を守りながら、日本酒造りに新しい風を吹き込む。
「福光屋」の醸造蔵・壽蔵を率いる杜氏の板谷和彦さん。シニアソムリエとのコラボブランド「ITAYA」を誕生させるなど、伝統を守りながら、日本酒造りに新しい風を吹き込む。

麹室の中で2日間かけてできあがる麹

日本酒造りでもっとも大切な肯定のひとつ、麹づくり。蒸し米の表面に麹菌の種胞子をふりかけ、温度管理を行いながら約2日間かけて行う。麹に触れたあと、手肌がスベスベになっていたことに驚いた。
日本酒造りでもっとも大切な工程のひとつ、麹づくり。蒸し米の表面に麹菌の種胞子をふりかけ、温度管理を行いながら約2日間かけて行う。麹に触れたあと、手肌がスベスベになっていたことに驚いた。

1日1日表情が変わる微生物の神秘

大きなタンクの中でブクブクと育ち続ける酵母。醗酵の神秘に思わず目を奪われた。
大きなタンクの中でブクブクと育ち続ける酵母。たくましく生きる証に思わず目を奪われる。
できたての酒母を味見。甘酸っぱいヨーグルトのような味わい。
できたての酒母を味見。甘酸っぱいヨーグルトのような味わい。

昔から、日本酒を造る職人の手肌は美しいといわれてきました。その美しさの秘密に迫るため、「福光屋」は長きにわたり、米と発酵による美容効果について研究を進めてきました。そして、米や酵母の種類によって生み出される有効成分が異なることに着目。

米選びにはじまり、米の磨きかたや酵母の選定まで試行錯誤を重ねた結果、醗酵という自然の神秘が生み出す天然の美容液「コメ発酵液FRS」にたどり着いたのです。

ちなみに、多くの酒蔵が日本醸造協会で頒布される「きょうかい酵母」で日本酒造りを行っているのに対し、「福光屋」は300種もの酵母を保有しています。「福光屋」にさまざまな味や香りの日本酒が揃い、「コメ発酵液FRS」が生まれたのは必然のことなのかもしれません。

※ちなみに本文中に「発酵」と「醗酵」の2通りの表記が出てくるのは、薬事法と食品衛生法で定められている表示名称にしたがっているのが理由です。化粧品の原材料「コメ発酵液」と食品の原材料「コメ発酵エキス」は「発酵」と、微生物を活用して有機物を分解し、有効な成分を生成させることを「醗酵」と表記しています。

酵母の種類で味や香りが変化

「福光屋」が保持する酵母の一部。酵母は自然界から採取するのだそう。
「福光屋」が保有する酵母の一部。酵母は自然界から採取するのだそう。
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この記事の執筆者
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PHOTO :
深山徳幸
EDIT&WRITING :
新田晃与