業種を問わず、仕事でのミスは多かれ少なかれ誰にでもあること。ですが、仕事の内容によっては周囲の人に迷惑がかかったり、個人ではカバーしきれないような損失が出てしまったり……といったケースも少なくありません。

仕事でミスをしたくないのは皆、同じ。それでも職場には、ミスが多い人とそうでない人がいますよね。たとえ一生懸命働いていたとしても、日ごろからミスが多いと、職場ではなかなか評価してもらえません。では、どうすればミスを減らせるのでしょうか?

「仕事ができる人は、取りかかる前に計画を立てます」と語るのは、『「段取りが良い人」と「段取りが悪い人」の習慣』の著者でビジネスインストラクターの鈴木真理子さん。

「『急いてはことを仕損じる』という言葉があるように、急ぐと平常心を失って正しい判断ができなくなり、失敗の確率が高まってしまいます。仕事はスピード第一ではなく、着手する前にどうしたら最短最速で相手を満足させられるか?を考えてから、手段を選ぶようにしましょう」

仕事でミスが多い人には、計画を立てずにすぐ作業に取りかかる傾向があるので、心当たりのある方は要注意です。

以下では、仕事でミスが多い人にありがちな、よくない習慣を紹介します。「自分は大丈夫」と考えず、この機会に今一度、自分自身の普段の仕事ぶりを振り返ってみてはいかがでしょうか?

計画を立てずにすぐ作業に取りかかるとありがち!仕事でミスが多い人のNG習慣5選

■1:自分のミスを「隠す」のはNG

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ミスは隠さず、改善策を考えることが大切。

仕事で自分がミスをしたとわかったとき「どうしてこんなミスをしたんだろう」と落ち込んだ経験は、きっと誰にでもあることでしょう。しかし、ミスが多い人ほど自分の失敗を必死に隠したり、ウソをついてごまかしたりする傾向があります。その結果、改善策を考えられず、どこかでまた同じミスを繰り返してしまうのです。

「仕事ができる人ほど、ミスをするやいなや上司に報告します。どうすればいいのかを相談し、同じミスを繰り返さないために改善策を一緒に考えるのです。ミスをしたときに、それを認める素直さも大切ですね。

同じミスを繰り返してしまう人は、失敗したことリストを作成するのがおすすめ。ノートや日報などに『何月何日にどんな失敗をして、次からはこうする』と記録すれば、次回から慎重になれるでしょう。ポイントは、ミスをしたその日のうちに書き留めることです」(鈴木さん)

自分のミスが発覚したとき、それを隠したくなってしまう気持ちはわかりますが、それでは失敗を生かすことができません。ピンチはチャンスだと前向きに捉えて、二度と同じミスを繰り返さないように改善しましょう。

■2:「感覚」に頼って仕事を進めるのはNG

仕事に慣れてくると、自己流で作業をするようになるもの。ですが、新人だったころに教わった手順や工程を省くことが、ミスを誘発している可能性があります。ミスが多い人は、自分の感覚を頼りに進めるのではなく、基本に立ち返って作業の手順表をつくっておきましょう。

「仕事のミスが少ない人には、セルフチェックの習慣が身についているので、振り返りと改善を怠りません。まず計画を立ててから仕事に取りかかり、終わるたびに反省して、学びを次回に生かします。

初めて経験する仕事は、進めながら手順や留意点を書き留めておくと、次回以降はゼロから考えたり思い出したりすることなく、スムーズに進められるでしょう。この方法だと、確かに初回は時間がかかるかもしれませんが、二度、三度と繰り返すうちに速さも正確さも向上します」(鈴木さん)

自分ではできているつもりでも、思わぬところに抜けや漏れがあるというのは、よくあること。例えば、書類を提出するときの手順として、誰かに一度チェックしてもらう、前日までに仕上げておいて、一晩寝かせてから再チェックする……といった工程をあらかじめ組み込んでおくと、品質がグッと上がりますよ。

■3:すべての仕事で「100点を狙う」のはNG

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力の入れどころを見極め、メリハリをつけましょう。

報告書や企画書などの書類は、ミスなく完璧に仕上げて一発OKをもらいたいところ。とはいえ、作業に時間をかけ過ぎてしまったり、納期に間に合わなかったり……というのは困りものです。

「仕事には100点にするものと、80点でいいものがあります。この力の入れどころを見極めて、メリハリをつけることが大切。相手が期待していないことまで完璧にやろうとすると、いくら時間があっても足りません。

例えば、パワーポイントで社内用の資料をつくるとき、デザインに凝ってフォントや色をあれこれ修正することに時間をかけるのはもったいない。また、早めの提出が求められている報告書を、何日もかけてじっくりつくり込むのも考えものです。仕事それぞれに適量の労力をかけるようにしましょう」(鈴木さん)

100点を狙いすぎるあまり作業が遅くなると、かえって評価が下がってしまいかねません。その仕事で自分に求められているものは何なのか、依頼主が何を求めているのかを把握して、力の入れどころをきちんと見極めましょう。

■4:時間「無制限」で作業に取り組むのはNG

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時間を設定することで、短い時間でよりよい成果が生まれる。

時間があればあるほど仕事の品質が上がると感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。むしろ時間がたっぷりあると、だらけてしまう、集中力が続かない、といった弊害が生じて、品質や作業スピードが落ちる可能性あり。

「短い時間でよりよい成果を上げるためには、制限時間を設定して、緊張感をもって作業に取り組むのが効果的。

まずTODOリスト(やることリスト)に『書類作成45分』『メール処理1時間』など、これからやる作業に投入する時間をメモします。ポイントは1時間以内に設定すること。1時間以上かかる仕事は、その工程を細分化して時間設定するとうまくいきます。

このようにTODOリストを見える化して作業すると、残り時間を意識しながら仕事を進める習慣が身につくでしょう。タイマーを使うのがおすすめですが、難しい場合はパソコンに表示される時刻を見るだけでもOKです」(鈴木さん)

ちなみに、制限時間を設定する仕事術は、日常生活でついやってしまう長電話やネットサーフィンなどの対策にも応用できます。日頃から時間を意識して動くことで、ひとつひとつの作業にもっと集中して取り組めるようになるはずです。

■5:「My締め切り」を設けないのはNG

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My締め切りを設定し、スケジュールミスをなくしましょう。

仕事の納期をうっかり忘れていて、催促されてから慌てて作業をした……という苦い経験がある方はいませんか? また、納期を覚えていても忙しすぎて間に合わなかった、というケースもあるでしょう。こういったスケジュールミスをなくすためには、本当の締め切りの前に、自分だけのMy締め切りを設定するのがおすすめです。

「仕事ができる人は、Your締め切り(本来の締め切り)とMy締め切りのふたつでスケジュールを管理します。前倒しで作業に取りかかれば、余裕をもって対処ができるからです。

スケジュールに記入するものは、Your締め切り、My締め切り、着手日の3つ。My締め切りは、Your締め切りの1日以上前に設定してください。納期から逆算して計画を立てれば、おのずと着手日がわかるはず。着手日は余裕をもって設定しておくと、予想外のことが起きても落ち着いて対処できます」(鈴木さん)

スケジュールはなるべくひとつのツールで管理するようにしましょう。手帳、スマホ、パソコンなど、複数のツールを併用すると、記入・確認漏れが起こる可能性があるので要注意。


絶対にミスをしない完璧な人なんて、いるものではありません。だからこそ、できる限りミスをなくすために、日ごろから努力を積み重ねることが大事ですよね。本記事を参考に仕事のミスを減らして、職場で信頼される人になりましょう。

鈴木 真理子さん
ビジネスインストラクター・業務改善コンサルタント
(すずき まりこ)講師派遣型の社員研修を行う、株式会社ヴィタミンM代表取締役。これまでに企業研修や公開セミナーで、3万人以上に生産性の高い仕事術を指導してきた。著書に『仕事のミスが激減する「手帳」「メモ」「ノート」術』『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』(共に明日香出版社)などがある。http://www.vitaminm.jp/
この記事の執筆者
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WRITING :
上原 純