今年もまた花粉症の季節がやってきました。花粉が飛散する時期は、鼻水、鼻づまりもさることながら、目の違和感やかゆみも気になりますよね。

辛い症状を予防・緩和するために、いろいろ対策を講じたいところですが、実は、花粉症対策としてやっていることが、かえって目を傷めたり、花粉症以外の別の症状を引き起こしたりするおそれもあるようです。

そこで今回は、小矢部たがわ眼科院長の田川考作さんから、花粉症シーズンにやってはいけないNGアイケアについて、お話をうかがいました。

■1:目を頻繁に水道水で洗い流すのはNG

目がゴロゴロするときの対処法は?
目がゴロゴロするときの対処法は?

この時期、外出すると花粉の影響で目がゴロゴロすることが多いですよね。そんなとき、異物感をなくしたいからといって、水道水で目を洗い流すのは、あまり望ましくないとのことです。

「水道水には塩素が含まれており、目の涙の成分とはまったく異なります。このため、目を頻繁に水道水で洗い流すことはあまりおすすめできません。かつて、学校のプールの授業後には目を洗うのが常識でしたが、慶応大学の研究で、水道水による洗眼が目の表面に悪影響を及ぼすことが発表されたこともあり、今では推奨されていません。

もちろん、入浴中に目にシャンプーが入ったときなど、緊急措置として目を水道水で洗うくらいは問題ないのですが、花粉症の時期に、毎日、外出するごとに目を水道水で洗うのは、目にとってよくないといえるでしょう。

目の異物感を何とかしたいときは、水道水ではなく、防腐剤の入っていない人工涙液で洗い流すのが、安全で効果的です」(田川さん)

■2:顔を洗わずに洗浄液で目を洗うのはNG

目を洗う手段として、水道水以外に、目専用の洗浄液を使うという方法もあります。ただ、これもやり方によっては目に悪影響を及ぼすおそれがあるとのこと。

「洗浄液には、石鹸に含まれる界面活性剤などが使われているものがあるので、頻繁に使うと目に負担をかけるおそれがあります。また、目にカップを当てて洗うタイプの場合、外から帰ってきてすぐ顔を洗わずに使うと、目の周りについた花粉が流れ出した洗浄液で目を洗うことになってしまうという点でも、おすすめできません」(田川さん)

結局のところ、目のゴロゴロに対処するには、防腐剤の入っていない人工涙液が最善ということなのですね。

■3:防腐剤フリーの人工涙液を「開封後に長く保管」するのはNG

開封後の期限に要注意
開封後の期限に要注意

先ほどからおすすめしている人工涙液ですが、開封後の取り扱いには注意が必要とのこと。

「目に負担をかけないためには、防腐剤フリーのものが望ましいです。ただ、防腐剤が入っていないということは、そのぶん、傷みやすいので、開封後は速やかに使いきりましょう」(田川さん)

一般的には1週間~10日を目安としている商品が多いようです。使用上の注意を確認のうえ、開封後は期間内に使い切るか、余ったものは処分するようにしましょう。

■4:「血管を収縮させるタイプ」の市販の目薬に頼りすぎるのはNG

目が充血したときの対処法は?
目が充血したときの対処法は?

目に異物感がある場合は人工涙液である程度の対処ができますが、目のかゆみ、充血といった症状まで出てしまったときは、どうすればいいのでしょうか? わざわざ眼科に行くのが面倒だからといって、市販の目薬に安易に頼るのは、長期的には自分のためにならないようです。

「市販の目薬には、塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリンなど、血管を収縮する成分が含まれているものがあります。これは、血管を収縮することで、一時的に症状を抑え込むというものであって、花粉症の根本的な治療にはなりません。使い続けることで、目に負担をかけますし、無理やり血管を収縮させることで、かえって回復を遅らせるおそれもあります」(田川さん)

市販の目薬で症状を抑えるよりも、眼科で処方してもらう目薬などで、根本的に治療するほうが得策ということですね。

■5:耳鼻科や内科で処方された目薬に頼りすぎるのはNG

病院で処方されたものでも過信はNG
病院で処方されたものでも過信はNG

市販の目薬だけでなく、実は、病院で処方された目薬であっても、必ずしも目にとって安全とは限らないとのことです。

「花粉症にかかったとき、多くの方はまず、耳鼻科や内科にかかると思います。そうした眼科以外の病院でも目薬が処方されることがありますが、使用するには注意が必要です。

というのも、眼科以外の耳鼻科や内科で、ステロイド配合の目薬が処方されている場合があります。ステロイドはたしかに目のかゆみを抑える効果はあるのですが、他方で、眼圧が高くなる副作用があり、長期的には緑内障のリスクがあるのです。

眼科ではアレルギー症状を改善する、抗ヒスタミン成分などを配合した目薬を処方したり、ステロイド配合点眼を処方したら眼圧を測るなど、目のことを総合的に考えた治療を行っています。目の症状は眼科に相談するほうがよいでしょう」(田川さん)

鼻と目の両方に症状が出ている場合、できれば一箇所の病院で済ませたいと考える人が多いはず。ただ、自分の健康のことを本当に考えるのであれば、患部に合わせた科を選ぶべきだということですね。

■6:「手を洗わずに」目薬やコンタクトレンズを扱うのはNG

アイケア用品を扱う前にも必ず手洗いを
アイケア用品を扱う前にも必ず手洗いを

最後に、目薬やコンタクトレンズなど、目に近づけて使うものを扱うときの注意点について。しっかり除菌していない手でこれらを扱うと、ウイルスに感染するリスクが高まるおそれがあるとのことです。

「目薬などを使う前に手をしっかり洗わないと、手についたウイルスが目薬などの容器やコンタクトレンズに付着します。それを目の粘膜に近づけたり接触させたりするわけですから、感染リスクが高まってしまうのです。

今は連日、新型コロナウイルスを警戒するニュースが流れているので、外出後に手洗いを実践されている方は多いかと思います。ただ、注意したいのは、職場で目が疲れたり、乾いたりしたときに目薬を使うときですね。

ウイルスはドアノブなどツルツルした部分に付着しやすいといわれており、それらを介して、ずっと室内にいても手にはウイルスがついているおそれがあります。皮膚についただけでは感染しにくいですが、ウイルスは目・鼻・口など粘膜からからだに侵入しますので、目に近づけて使うアイテムを扱う際には、必ずしっかり手を除菌しましょう」(田川さん)

新型コロナウイルスについては、まだ不明な点が多くありますが、少なくともウイルスを目に近づけるような行為は避けたいところですね。

目に異物感やかゆみがあるとき、ついついやってしまうことがあったのでは? これからまだまだ花粉のシーズンは続きますが、適切な対処法で辛い時期を乗り切りましょう。

田川考作さん
小矢部たがわ眼科 (厚労省認定 先進医療施設)院長
(たがわ こうさく)日本眼科学会認定の眼科専門医。医学博士。専門である近視および老視矯正手術(レーシック、フェイキックIOL、PRK)や白内障手術をはじめ、ドライアイ、結膜炎、緑内障など幅広い治療、手術を行う。
小矢部たがわ眼科
この記事の執筆者
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WRITING :
中田綾美
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