現在の在宅生活は、これまで「忙しいから」と取りかかれずにいたことに挑戦できる機会でもあります。「何かにチャレンジしたいけど、思いつかない」「せっかく時間があるのなら、有意義に過ごしたい」と思っていたら、絵本や児童書を手に取ってみてはいかがですか。

絵本や児童書の中には、社会問題や社会の仕組みをテーマにしたものもあります。イラストを用いて、子どもにもわかるような文章で書かれているため、入門書としてもぴったりです。

本記事では、フェミニズム、プラスチック問題、法律をテーマにした3冊をピックアップしました。

絵本・児童書
左から、『ちいさなフェミニスト宣言:女の子らしさ、男の子らしさのその先へ』、『こども六法』、『プラスチック・プラネット:今、プラスチックが地球をおおっている』

こんな時だからこそ、社会の仕組みについて考えを深めてみるのはいかがでしょうか?

■1:”自分らしく生きること”の大切さを教えてくれる『ちいさなフェミニスト宣言:女の子らしさ、男の子らしさのその先へ』(現代書館)

『ちいさなフェミニスト宣言:女の子らしさ、男の子らしさのその先へ』
『ちいさなフェミニスト宣言:女の子らしさ、男の子らしさのその先へ』

フランスの活動家と絵本作家兼イラストレーターによる絵本です。元々は『わたしたちはお人形じゃない』『ぼくたちはスーパーヒーローじゃない』の2冊に分かれていたものを1冊にまとめたそうです。

絵本を開くと、紙や写真を切り貼りした色鮮やかなコラージュ作品が目を引きます。そして、ユーモアを交えながらも「女性は家庭的であるべき」「男性は強くあるべき」などのジェンダーにまつわる先入観を取っ払ってくれる力強いメッセージ。

「嫌なことは嫌だと言っていいし、泣きたければ泣いていい」と自分自身を大切にすることを伝えてくれます。読んでいて心が奮い立つと同時に、自分の中に無意識にある固定観念にも気づかされるかも……?

フェミニズムは女性の権利を主張するものではなく、男女ともに「自分らしく」生きるためにあるものだとよくわかる1冊です。

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■2:生活を見直すきっかけになる『プラスチック・プラネット: 今、プラスチックが地球をおおっている』(評論社)

『プラスチック・プラネット』
『プラスチック・プラネット:今、プラスチックが地球をおおっている』

プラスチック問題は世界的にも大きな課題となっており、2020年7月から小売店を対象にスタートするレジ袋の有料化など、国内でも少しずつ対策が始まっています。その一方で、プラスチックが環境に及ぼす影響については意外と知られていません。本書では、これらについて文章とイラストでわかりやすく解説しています。

1年間でつくられるプラスチック製品は約3億トンあるものの、リサイクルされるのはその10%程度。プラスチックは分解されにくいため、リサイクルされないものはゴミ埋立地に投棄されたり、焼却されたりします。ちなみに、1本のプラスチックボトルが分解されるまでには450年かかるそう。使った人が亡くなってからもプラスチックボトルが残ることを知ると、プラスチック製品の購入をためらってしまいます。

目に見えない「マイクロプラスチック」も環境に悪影響を与えているもののひとつ。身近なところだと、化粧品やウエットティッシュ、フリースなどプラスチックからつくられた衣類を洗濯する際に流れ出た水などが該当します。マイクロプラスチックは小さいため、プランクトンと間違えて海洋生物が食べてしまうこともあるそう。

本書を読んで、日頃から何気なく使っているものが生態系に影響を及ぼしていることを痛感しました。

私たちにできるのは、エコバッグを持ち歩くことや自然素材の布巾を使ってウエットティッシュを使う回数を減ららすなど、日々の行動を見直してみること。

「せっかくならもっと本格的に取り組みたい」と思う人は、洗って繰り返し使える布製の「蜜蝋(みつろう)ラップ」や竹製の歯ブラシなどを取り入れてみるのもよいでしょう。インターネットで購入できるので、生活に変化を加えるのも楽しいかもしれません。

ただ、「地球のためにどうにかしたい!」と思う気持ちはとても素敵ですが、がんばりすぎると息切れしてしまうことも。無理なく続けることを目標に、できるところから始めてみるとよさそうです。

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■3:著者のいじめ体験から生まれた『こども六法』(弘文堂)

『こども六法』
『こども六法』

いじめや虐待から自分を守るために知っておくといい法律を解説したもので、累計50万部を超えるほどの話題作となりました。本書は、著者である山崎聡一郎さんのいじめ体験をきっかけにつくられたそうです。

「いじめ防止対策推進法」や刑法第218条「保護責任者遺棄等」など、子どもが自分の身を守るために必要な法律について、かわいらしい動物のイラスト付きでわかりやすい言葉で書かれています。友達とのメールのやり取りの保存や日記をつけること、相談窓口など、いじめられている子どもへ向けた具体的なアドバイスも紹介されています。

子どもが身を守るために、自身が法を犯さないことも大切です。例えば、通貨偽造について。本書では、「お金のコピーは犯罪!」とキャッチコピーをつけて、刑法第148条「通貨偽造及び行使等」、第150条「偽造通貨等収得」を解説しています。

法律についてなんとなくわかっていた気になっていたものの、本書を読むと具体的な内容や刑罰についてはほとんど知らなかったことに驚きました。ニュースでも度々取り上げられる日本国憲法についても解説されているため、「憲法改正」についても自分ごととして考えられるきっかけになりそうです。

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今回ご紹介した3冊が扱うのは、実はどれも身近なテーマばかり。読み終わると、少し見える景色が変わってくるかもしれません。好きな飲み物を用意して、気負わずにページをめくってみてください。

この記事の執筆者
フリーランスのライター。企業の採用サイトやパンフレット、女性向けの転職サイト、親向けの性教育サイトなどで取材記事を執筆。好きなもの:中村一義、津村記久子、小川洋子、マンガ、古いもの、靴下など
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WRITING :
畑菜穂子
EDIT :
小林麻美