例年であれば、旅行に出かけたりイベントに参加したり、外食グルメを堪能したりなど、レジャー三昧のはずのゴールデンウィークも、今年に限っては自粛モード一色……。

新型コロナウイルス感染拡大防止というやむを得ない事情があるとはいえ、相当ストレスをためこんでいる人も多いのではないでしょうか?

そこで、今回は、日本心理教育コンサルティング代表で、カウンセラーの櫻井勝彦さんから、自宅でできるストレス解消法を教わりました。

自宅でできる!ストレス解消法8選

■1:普段はやらないことに意識的に挑戦する

ちょっとした変化が充実感をもたらす
ちょっとした変化が充実感をもたらす

「人間のストレスは大きく分けると2種類あります。1つは結婚・離婚や転職、職場の異動、引っ越しなど自分のキャパを超えた環境の変化に晒されたときに感じるもの(結婚や出産などハッピーな出来事でも、急激な変化自体がストレス源になります)。もうひとつは、変化がなさすぎるがために、心が疲れてしまうというものです。

体は健康だけれど、自宅で自粛生活を送らざるをえないことによって生じるストレスは、後者だと考えられます。

自粛生活で視界に入るものといえば、四六時中、見慣れた部屋の光景ばかり。たまに外に出ることはあっても、今は生活に必要なものの買い出しを、近場で済ませることくらいしかできない……。こうした極端に変化のない状況が長引けば、ストレスがたまらないわけがありません。

こうした現状を打破するためには、変わり映えのない日常において、意識的に変化を生み出すことを心がける必要があります。

もちろん、家にいるしかない状況では、選択肢に限りはありますが、たとえば、自宅にいる時間が長いからこそ、新しい資格試験や語学などにチャレンジしてみる。普段はあまり家事をしない人が、凝った料理に挑戦してみるなど、いろいろできることはあるのではないでしょうか。

あるいは、読書映画鑑賞が趣味という人は、今まで自分がまったく興味のなかったジャンルの作品を、敢えて選んでみるのもよいでしょう。変化に富んだ毎日は充実感を生みます」(櫻井さん)

どんな些細なことでもいいので、1日1個ずつでも“自分が今までやったことがないこと”に挑戦してみてはいかがでしょうか?

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■2:ヨガをする

体と心を緩める
体と心を緩める

「さきほど、あまりにも変化がないことがストレスの要因になるとお伝えしましたが、実は、姿勢や体勢にも同じことがいえます。ずっと同じ姿勢や体勢でいることによって、ひどく疲れを感じた経験があると思いますが、身体的な変化のなさは、メンタルにも悪影響を及ぼしてしまうのです。

この観点から、ヨガはおすすめのストレス解消法だといえます。ヨガにはさまざまなポーズがあるので、今までやったことがない身体的変化を味わうことができますし、また凝り固まった体をヨガで緩めることは、心の凝りをほぐすことにもつながります」(櫻井さん)

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わざわざヨガ教室に通わなくても、YouTubeなどでいくらでもヨガの解説動画が無料で視聴できますし、運動不足解消もかねて、ヨガに取り組んでみましょう。

■3:気功(呼吸法)をやってみる

呼吸を整えると心も整う
呼吸を整えると心も整う

「もう1つ、自宅で体を動かす系のストレス解消法としておすすめなのは気功です。

気が滅入る、気が沈む、気がふさぐ……など、“気”に関する表現はたくさんありますが、ここでいう“気”とは実は呼吸に関係しています。

自粛生活では、人と話す機会も減り、おのずと呼吸が浅くなりがちなのも、ストレスの一因です。そこで、浅くなった呼吸を整えたり、体内の淀んだ気を放出して新鮮な気を取り込んだりするためにも、気功は有効な手段だと考えられます」(櫻井さん)

気功もヨガ同様、ネット上に解説動画がたくさんあります。体を動かすのが好きな人は、もちろんヨガも気功も両方やってみるといいのですが、もし「体が硬いからヨガは難しいかも……」など苦手意識がある場合は、まず気功に挑戦してみるといいかもしれません。

■4:1日に1回思い切り感情を発散させる

自分が夢中になれることで感情を発散
自分が夢中になれることで感情を発散

「自粛生活といえば、とにかく我慢の連続です。旅行などのレジャーはもちろんのこと、買い物に行くのも我慢、外食も我慢……と行動を抑制していると、心のエネルギーが行き場を失って、それがストレスとなります。

パンパンにふくらんだ風船のようなものなので、爆発してしまわないように、ためこんだエネルギーを1日1回うまく放出してあげましょう。

具体的な方法は、人それぞれだと思いますが、たとえば、思い切りゲームに没頭する、お笑い動画を見て爆笑する、あるいは、感動する作品を見て涙を流すなど、自分の感情が揺すぶられるものであれば、何でもOKです。

もし、自宅でできる範囲でそのような趣味がどうしても思い当たらないのであれば、お風呂を活用しましょう。バスソルトなど温熱効果のある入浴剤を入れたお風呂に入って、いつもよりたっぷり汗をかくことでも、ストレス解消効果があります」(櫻井さん)

スポーツクラブやサウナに出かけることはできなくても、工夫しだいで自宅で汗をかきストレス発散することは可能なのですね。

■5:断捨離する

捨てられない人はストレスもためこみやすい
捨てられない人はストレスもためこみやすい

「自宅で過ごす時間が長い今だからこそ、家の中を徹底的に掃除したり、断捨離したりするのもストレス解消にもってこいです。

人間は視覚情報によって、よくも悪くも心に影響を受けるもの。ごちゃごちゃと物が片付いていない部屋にいると、どうしてもストレスがたまりやすいですし、逆に、断捨離してすっきり片付いた家の状態を目の当たりにすることには、ストレス解消効果が期待できるでしょう。

そもそも、捨てるのが苦手な人というのは、ものを大切にする人という肯定的な見方もできますが、一方で、過去に執着して、ネガティブな出来事をいつまでも記憶に保存してしまう傾向があります。

家のなかの不要なものとともに、過去の嫌な記憶やストレスも処分するつもりで、断捨離に取り組んでみましょう」(櫻井さん)

■6:暗い情報に接したあとは意識的に明るい情報で中和する

ポジティブになれる情報に意識的に触れる
ポジティブになれる情報に意識的に触れる

「今はテレビでもネットでも、否が応でも暗いニュースを見聞きせざるをえず、これがストレスに拍車をかけます。

もちろん、自分の健康のためにも社会全体のためにも、最新のニュースをチェックして、正しい情報を仕入れることは大切です。しかし、新型コロナウイルスに対する不安が高じて、公式のニュースだけでなく、SNSの情報などをずっと深堀していくのは、メンタルヘルス上はおすすめできません。

体を健康に保つには、体にいい食べ物をとることが推奨されるように、心の健康を保つには、気持ちが明るくなったり癒されたりする情報に意識的に接することが不可欠です。

どのような情報に接したときに、気持ちがポジティブになるのかは個人差があるので、こうすればいいと一概にアドバイスはできないのですが、まずは、自分がどんな物を見たり、聞いたりした時に心の状態が上向くのか?振り返ってみてはいかがでしょうか」(櫻井さん)

たとえば、前向きな内容の本を読む、音楽を聴く、かわいい動物の動画を見る、好きな人の画像や映像を見るなど、いろいろ方法はあると思いますが、ニュースをチェックした後、すぐにそうした心の癒しにアクセスできるように、ブックマークなど準備をしておくといいかもしれませんね。

■7:ポジティブな妄想をする

妄想の世界は自由
妄想の世界は自由

「社会全体が暗いムードに包まれ、気分がふさぎこみがちな今、できれば1日に数分でいいので、ポジティブな妄想タイムを設けましょう。

この先どうしよう、どうなってしまうのだろうと、不安のあまりお腹が痛くなった経験のある人は多いと思いますが、人の心と体は密接につながっているもの。心のもちようで病気になることもあれば、逆に、病気から回復することもあります。

実際に、サイモントン療法といって、ガン患者のかたにポジティブな想像をしてもらうことによって、ガンの進行を遅らせるという心理療法があるくらいです。

もちろん、これからどうするのか現実を直視することも大切ですが、心身の健康を保つためには、現実と脳を切り離す時間も必要だといえます。

どんな荒唐無稽な内容でもいいので、1日に数分、ポジティブな妄想に浸りましょう」(櫻井さん)

新型コロナウイルスがいつ収束するのかは、専門家でさえも今は正確に予測することができません。そうした状況では、誰しも先行きが不安になるのは当然ですが、「一体こんな状態がいつまで続くのか」と不安にさいなまれるだけでなく、敢えて「状況が落ち着いたらあそこへ旅行に行こう」など、楽しい計画に思いを馳せるのもいいかもしれませんね。

■8:誰かのためにできることを考えたり、行動を起こしたりする

人を思いやることがストレス解消の近道
人を思いやることがストレス解消の近道

「過酷な状況から回復する能力のことを、心理学ではレジリエンスといいますが、このレジリエンスの高さには、他人のことをいかに思いやれるかが関わっているのではないかと考えられています。

実際、東日本大震災などにおいて、被災者のなかで自ら現地でボランティア活動に携わった人たちは、比較的、立ち直りが早かったそうです。

なぜ、人のためを思うことが、レジリエンスを高めるのか原因は3つ考えられます。

1つは、他人のことを考えていると、自分のことがひとまず後回しになり一時的に悩みから解放されるという点。2つ目は、人を思いやることで脳内ホルモンのオキシトシンが分泌され、ストレス緩和になるという点。そして、3つ目は、実際に人の役に立つ行動を起こすことで、自己肯定感が高められるという点です。

自粛生活が続く中、仕事が減ったり、四六時中顔を突き合わせている家族とコミュニケーションがうまくいかなかったりして、『なぜ自分だけがこんなに辛いのか』と悩んでいる人は多いかもしれません。

しかし、意識が自分にばかり向いてしまうと、ますますその悩みは深まるばかりです。

もちろん、人によって事情はさまざまで、自分のことで精一杯という状況もあるかと思います。ただ、今回の新型コロナウイルスの影響で直接大きなダメージを受けたのではなく、静かに自粛生活を送っているみなさんは、大変な状況だからこそ、自分のことだけでなく、人のために何かできることはないか考えてみてはいかがでしょうか?

といっても、今は自宅での自粛が第一ですので、ボランティア活動など大々的なことを考える必要はありません。身近な家族や友人など、辛い思いをしている人の話に耳を傾ける。しばらく会っていない旧友や昔お世話になった人に安否確認の連絡をとり、もし相手が何か困っていれば、可能な範囲でサポートするなど、小さな“人のため”を実践してみましょう」(櫻井さん)

まさに、情けは人のためならず。自分の悩みや辛さにばかりフォーカスするのではなく、自分が周りのために何かできることがないか?考えることが、回り回って自分にとってもプラスになるのですね。

以上、自宅でできるストレス解消法をご紹介しました。いずれも誰でもすぐに実践できるものばかりですので、自分の肌に合いそうなものをいろいろ試してみて、困難な状況を乗り越えましょう。

櫻井勝彦さん
日本心理教育コンサルティング代表、講師、カウンセラー、一般社団法人日本ヒューマンスキル教育推進協会代表理事、文学修士、公益社団法人日本心理学会認定士、JAAHSE認定傾聴セラピスト養成講座上級指導者
(さくらい かつひこ)社会心理学系の大学院(博士課程前期)を修了後、各種学校にて心理学の講師・スクールカウンセラー、研修会社で研修企画・講師などを経て、平成18年に日本心理教育コンサルティングを設立。全国の企業・自治体・学校などで心理学を活用した楽しく実践的な講義・研修・講演を行っている。書籍・雑誌・テレビ・ラジオなど、メディア掲載・取材・監修も多数。著書に『仕事が思い通りにできる心理術』(明日香出版社)がある。
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