品位ある大人の女性なら、自分の時間を大切にするのと同じように、他人の時間にも配慮したいものですよね。当然ながら、人の仕事の邪魔をしたり、迷惑をかけるようなことは、多くの方ができるだけ避けたいと思っているはずです。

けれでも、自分が無意識にしている行動や言動が、じつは他人の時間を少しずつ奪っているとしたら……? それはどんな行動や言動なのでしょうか?

3万人の経営者と関わる中で、成功者に共通する時間の使い方を研究されてきた、経営コンサルタントの上野光夫さんにお聞きしました。

■1:質問や依頼を何回も小分けにする

 
 

まず、「メールなどでちょこちょこ小出しに依頼ごとや質問をするという行為は、人の時間を奪うことになります」と上野さん。

「例えば、見積書を出したら、次はこれくらいの金額でやってくださいとか、事業計画書を提出したら、今後は決算書を出してくださいetc.。

こういったことは、意外と普通にやってしまいがちなのですが、受ける側にとっては、一度にまとめて伝えてくれればいいのに、と思いますよね。ある程度、自分の依頼や質問に対する相手の反応を想定して、二度手間、三度手間にならないような形で伝えることが大事なのです」

■2:メールの文章が長い

それから、「何が言いたいのか伝わりにくい長文のメール」も、意図せずして相手の時間を奪っているとか。

「メールを受け取った人が、何をしたらいいのかわからない。ゆえに、時間を奪ってしまうのです。何をしてほしいのか、メールの主旨や依頼内容を明確に、文章ではなく箇条書きで要点を整理し、簡潔に伝えることが大切です」

また、相手が、回答すべきなのかどうかをすぐに判断できるよう、何か聞きたいことがある場合には、文章の最後に「?」マークをつけることを奨めます。

「文の終わりが句点(。)で終わってしまうと、答える必要があるのかわかりづらいんですね。でも『?』をつけると、受け取った側は、何か聞かれているのだとわかりますし、必ず回答が返ってきます」

メールを送る相手に配慮するあまり、あえて曖昧な表現や、遠回しな書き方をしてしまうこともあるかもしれません。けれども、言いたいことがはっきり伝わらないばかりか、不必要な「迷い」の時間を与えてしまっては元も子もありません。簡潔にして明快、それでいてさりげなく大人の配慮も感じられる、そんなスマートな伝達技術を磨きたいですね。

■3:相手にネガティブな結論を与える

 
 

ところで、職場の部下や同僚、友人などが、あなたに何か相談をしてきたとします。そのとき、つい否定的な意見を言ってしまっていませんか? 上野さんは次のように指摘します。

「相談される立場の人は、結論を早く出そうとして、どちらかというとネガティブな結論を出しがちです。しかし相手にとっては、いろいろ考えた上で相談したのに、いきなりモチベーションを下げられる形になり、結果的に、相手の時間を奪ってしまうのです」

あえなく否定されたことで、さらに悶々と悩み続けることになったら…? あまり気づかなかった視点かもしれません。

できれば、仮に「それはちょっと」と思ったとしても、ある程度相手のことを肯定してあげて、ポジティブな回答をする。その上で、「リスクとしてはこういうことがある」、「こうした方がもっとよいのでは」というように、全体として少しプラスの印象になるようなフィードバックを心がけるとよいそうです。

■4:部下や後輩の仕事を親切心でやって“あげる”

さて、経験豊富な方ほど気になる、部下や後輩の仕事ぶり。気を利かせてささっと手を貸せば、仕事が早く片付き、感謝されたりもするでしょう。それは一見、時間を奪う行いには見えないのですが、後々のことを考えると、よいこととは言えないようです。

「組織としては、きちんと分業して、それぞれの役割を果たしてもらう必要があります。上の人間がその時間を取ってしまうと、部下や後輩が成長しませんし、依存心が出てきたりもします。結果として、長期的にみると組織の成長にかえって時間がかかることになり、お互いの時間が無駄になるのです」

■5:秘密主義で、重要な情報を伝達しない

 
 

また、日本の会社に多く見られる「重要な情報を隠してしまう」という悪慣習が、組織の時間を奪う一因になっているそう。

「昔でいうセクト主義のような感じで、経営陣が社員に本当のことを伝えなかったり、他の部署に手柄をとられたくないとか、自分の業績のためにおいしい情報を与えたくないとか……。そういった理由で、大事な情報を隠してしまう。そうすると、なんとなくお互い疑心暗鬼になりますし、特に日本の会社ではこれが非常に多いです。

本当に重要な情報は、やすやすと外部に出すべきではないと思いますが、会社や組織の利益になるような情報を隠してしまうと、組織としての時間を奪い、スピード感もなくなります。

先日、Google社を訪れたのですが、情報のやりとりが極めてオープンで、社内の掲示板上にどんどんアイディアを出していくというのをやっていました。非常に効率がよく、スピード感もあっていいと思いましたね」

なかなか難しい部分もあるのかもしれませんが、共に仕事をする人それぞれの時間を無駄にしないためにも、何を優先すべきかという見極めが肝心といえそうです。

以上、5つの悪習慣をご紹介いただきましたが、他人の時間に配慮する習慣が身につくと、仕事の流れがよりスムーズになり、のちのち、自分に降りかかってくる余計な手間や時間も少なくなるような気がしますよね!?

自分の時間も他人の時間も大切に、お互いのためになるような時間を増やしていきたいものです。

PROFILE
上野 光夫(うえの みつお)さん
株式会社MMコンサルティング代表取締役/ 中小企業診断士・資金調達コーディネーター®。1962年鹿児島市生まれ。九州大学を卒業後、日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)に26年間勤務。主に中小企業への融資審査の業務に携わる。3万社の中小企業への融資と5千名の起業家への創業融資を担当、融資総額は2000億円にのぼる。平成23年4月にコンサルタントとして独立。起業支援コンサルティング、資金調達サポートを行うほか、研修、講演、執筆など幅広く活動。リクルート社『アントレ』などメディア登場実績多数。日本最大の起業家支援プラットフォーム「DREAME GATE」において、アドバイザーランキング「資金調達部門」で3年連続第1位に輝く。近著『成功者の自分の時間研究 1日6時間を取り戻し「なりたい自分」になる方法』(ワニブックス)など多くの著書がある。
この記事の執筆者
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WRITING :
小野寺るりこ